第51話「堅牢の殲滅士が愛銃でアイアンゴーレムに大穴を開けた話」
アイアンゴーレムは両腕を振り上げ、地面に打ち下ろした。
足元にひびが入り、衝撃が周囲に広がる。地面が隆起し、土煙を上げながら私の方に迫ってくる。
「いきなり過ぎない!?」
私は足から紫色の闘気を噴き出し、横に飛ぶ。
私がいた場所に土の柱が広がり、地面がえぐれた。
右拳を握りしめ、意識を集中する。紫色の光がバチバチと音を立てる。光は不安定にバチッ……バチッと明滅していた。
——アイアンゴーレムはAクラスモンスター……倒せるかもしれない。でも、試す必要ないよね?
私は奥にいる二体のミニゴーレムに目を向ける。
大きく息を吸って、腰を落とし、三体の親子ゴーレムを見つめた。
白い線がアイアンゴーレムの腕から地面に向かって伸びた。
私は思い切り足を踏みこんだ。紫色の光が周囲に広がると一気に駆け抜け、ゴーレムの手の下をすり抜けた。
二体の間へ滑り込む。
左のゴーレムは首元。右のゴーレムは胸元。
白い線が見えた二か所へ、左右の指先を同時に突き込んだ。
そのまま反対側に飛ぶと、両腕を地面に打ち下ろしたアイアンゴーレムの背中を蹴り、跳躍した。
大きく私は宙を舞った。
ゲラルドとシェリーさんの横に着地すると、一気に踏み込み走り抜けた。
「二十体倒したので入口まで逃げます! シェリーさんたちも逃げて!」
私は走りながら大きな声を上げた。
——よし! やった! 逃げるぞ! 私! 多分止まったら闘気が尽きる!
「おい! 宮國! 俺を置いていくな!」
ゲラルドが私の後ろを大きく両腕を振りながら走ってくる。半袖側の糸くずがチロチロとはためいていた。
私はそれを見て噴き出しそうになる。
——今、必死に逃げてるのに鼻毛がたなびくみたいなのやめてほしい。ホントこいつセンスないな。
「はぁはぁ……試験はこれで終わりですかね」
私は遺跡の入口まで到着する。ゲラルドの方を向きながら肩で息をした。
「ああ……これでBランク昇格だ。明日から次のランクのダンジョンに挑戦しても大丈夫だ」
ゲラルドは額の汗をぬぐっていた。
「あれ? シェリーさんは?」
私は周囲を見渡した。
「部門長なら我々よりも強いから心配いらないだろう。それより宮國はもう帰っていいぞ。我々は昇格に関しての話もあるからな」
ゲラルドは遺跡の奥の方を見ながら小さく身震いをしていた。
「わかりました。シェリーさんにもよろしくお伝えください」
私はその場で大きく頭を下げると、遺跡を後にした。
————
少し前。
宮國社員が全速力で走り去っていくのを、私は見送っていた。
アイアンゴーレムが大きく腕を横に振ると、地面をガリガリと削りながら私に向かって手を振った。
「どうしてこんなところにアイアンゴーレムがいるデスかね」
私は小さく跳躍するとゴーレムの腕に乗った。
反対の腕の隙間に布切れが挟まっているのが見えた。
——なんデス? あれは……要チェックデスね。
桜の髪飾りを手に取ると、握りしめる。手の中に愛銃が現れた。
ゆっくり銃口をアイアンゴーレムの反対側の腕の付け根に向ける。
ダンッ! ダンッ! ダダダンッ! と銃声が響く。
銃口から緑色に輝く銃弾が発射されると、アイアンゴーレムの左肩、左肘、左手首に着弾する。
左腕が大きな音を立てながら地面に落ちた。
アイアンゴーレムが右腕を振った。
私は後ろに跳躍した。くるくると体を翻し地面に着地すると、そのまま足の指先に力を集中させた。
アイアンゴーレムが地面をたたき、無数の瓦礫を私の方に飛ばす。
私は地面を滑る。キュッキュッと靴底を鳴らしながら、アイアンゴーレムの周囲を駆け抜ける。
目の前に迫る瓦礫を体を横に倒し、小さく後ろにのけぞり、アイスリンクをすべるように攻撃をよける。
くるくると滑りながら銃口をアイアンゴーレムへ向ける。
ダッ! ダッ! ダッ! ダッ!
右肩、右手首、左膝、右膝。緑色の弾丸が次々と関節を撃ち抜いていく。
銃声に続きアイアンゴーレムのもう片方の手が地面に落ち、両膝を地面に着いた。
アイアンゴーレムはガガガッという機械音を立てながら、立ち上がろうとしていた。
「私を倒すのであれば一個師団くらい連れてくるんデス」
私は愛銃の銃床を下に引き延ばした。銃床部分が伸長して地面へ突き刺さる。
地面に固定し、銃身に左手を添える。
照準器を覗き、アイアンゴーレムの胸部に狙いを定める。引き金に右手の人差し指を添える。大きな緑色の光が銃全体を包み込んだ。
「発射……」
私は引き金を引いた。緑色の光が一点へ収束する。
次の瞬間、視界が緑一色に染まった。
一拍遅れて、轟音。
銃口から緑の閃光が放出されると、アイアンゴーレムの胸を貫いた。
アイアンゴーレムの胸には大きな穴が開き、その穴の周囲はバチバチと焼け焦げたように煙を上げていた。
銃を目の前で三度両腕で回転させ肩に担ぐと、銃は桜の髪飾りに姿を変える。
私は地面に落ちた左腕の破片に近づき、一枚の布切れを手に取った。右袖の一部のようだった。
「チッ……」
私は一度舌打ちをすると、つま先を緑に輝かせながら遺跡の入り口に向かい滑る。右手に桜の髪飾りを握りこんだままだった。




