第3話「食欲の魔女に配信動画を吐瀉物扱いされた話」2/3
「さっきの動画……キミは必要に駆られてぶりっ子を選んだといったね? 人はなぜ動画やコンテンツを見ると思う?」エスルスは私の背中に手を添えた。
「……面白いから?」私は顔を上げた。エスルスを見た。
「面白いっていうのは何だと思う? ダンジョン配信という、他人の冒険を見たいと思うその心は?」エスルスは背中を優しくなでた。
「戦う様子……とか、ダンジョンでアイテムを見つけたりするのを見る……ため?」私は言葉を選びながら答えた。
「それだったら別に他のコンテンツでもいいんじゃないか?」エスルスはすぐに質問を重ねた。
「……レベルアップとか、技を覚えたりとか? そういう成長……をみたいのかな?」私は考えた。自分が今までに見た面白い動画を思い出していた。
――柳井の必殺技の動画を思い出したのは癪だ。正直ムカつく。
「そう……わかってるじゃないか。一つは人の変化をみたいんだ。人の能力の成長、心の成長、人間としての成長をね。もう一つ関連する大事な要素があるよ。近いところだ」エスルスは指を立てた。
「……その人の人となり? 応援したくなる気持ちとか?」私は顔を上げた。
――何かが分かった気がする。そうだ。動画配信はコンテンツだ。マンガや小説、他のコンテンツと一緒なんだ。テンプレばっかり気にして本質を見失っていた。
『Exactly!ッ』エスルスは親指を立て、人差し指を伸ばし、私に銃口を向けて撃つような動きをした。
「その人のことを応援したい、応援している人から反応が欲しい。その人の成長をみたい。その人なりの強さを、よさを知りたい。そのうえでさっきツッコが言ったような新しいアイテムやスキルを手に入れて、ダンジョンを攻略していくというゴールに向かう物語をみたいんだ。要はダンジョンという箱庭の中のヒューマンドラマを見たいんだよ」
「物語というのは基本的に起承転結の構造を取るものなんだ。起、つまり導入部分。物語の始まり、問題提起の部分だ。承、起を受け継ぐ物語を補足する要素、転、物語の転換点、変化だね。脅威や、事件が起こるといい、結、そしてその結果。脅威や事件にどう対応するか、対応したかだね」
「それでね……ツッコの動画には起承転結の承までしかない……ボクの見立てでは……ね。いや……」エスルスはゆっくりと立ち上がった。
大きく息を吸った。
両手を広げ目を見開いた。
『キミの動画は起承転結じゃぁないっ! 起承承承承承承承承ォッ! 承をshowしているだけッ……だ! 本来必要なのは圧倒的なエンターテイメンツ! そのための転ッ! と! けっつ! 転と結だッ!』
エスルスは両手を広げたまま、全力で20畳ある客間を走り出した。
飛び込み前転をしつつ『転ッ!』
転がる勢いのまま立ち上がり、
ロンダート、
バック転、
伸身二回転ひねりを決めて
両腕を真っすぐ上に掲げ、背筋を伸ばし、
『結ウウウウーッ!』
と叫んだ。
食欲の魔女はキメ顔で虚空を見つめていた。




