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食欲の魔女と底辺OLのダンジョン飯テロ配信~「赤字ならクビ」と言われたので、ポンコツ魔女に飯を食わせてブラック企業の売上を超えます~  作者: ダニエルさん
第2章:Sランク配信者なんて無理無理無理! でも、魔石採掘部門にはいきたくない!

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第46話「クソ上司のキメぇ配信動画を再生してしまった話」2/2

「ひぇひぇーッ! 愚民ども! 貴様らは幸運だなぁ! 偉大なるボク、ロクディモント様の配信を見ることができるんだからなぁ!」


 画面内のクソ上司(ロクディモント)は、両手を広げ、ローブを翻すと気持ち悪いキメ顔をした。キメぇ顔だった。


「ひぇひぇ! 今日は、黄砂の古代遺跡を攻略していくぞ!? 美しいボクの姿を見落とさないように目ん玉かっぽじってよく見るんだぞぉ!?」


 画面の中でロクディモントが砂丘に第一歩を踏み出した時、不自然なほど大げさに砂が舞い上がった。


 ——ああ、そうか。確かに目ん玉つぶして音だけにしないと体調崩しそうだからな。賢明な判断だ。心理的安全性ってやつかな。これは。


 私は、音だけを聞くことにした。


 ——サンドワームのところはいいな……遺跡の中からにしよう。


 私は動画を先に進め、クソ上司(ロクディモント)をみないようにコメント欄を表示する。


 コメントがすでに投稿されている。


 サクラ:ロクディモントさんはいつも乱暴な物言いだけど本当は優しい人なんですよ?


 ——なんだこいつ? サクラ? あいつが優しいわけないじゃないか……


 私は動画を再生した。


「ひぇひぇ! なんだお前らはボクの動画に映りこんじゃうだろう! モブはあっちへ行け!」


「た、助けてください。仲間がスモールゴーレムに襲われて……」


「ひぇひぇ~? ボクが何でお前らみたいなゴミ共を助けないといけないんだ?」


「幼馴染なんです……付き合い始めたばかりなのに守れなかった……」


「ひぇひぇ? 女か? 可愛いのか?」


「はい……」


「ひぇひぇ! それはいい! ボクに任せるんだ。お前は戦えるのか?」


「いえ……闘気が切れてしまって」


「ひぇひぇ~っ……全くグズめ! ボク様の素晴らしい闘気運用を目に焼き付けるんだなぁ!」


 私は動画を停止した。

 ——闘気運用だって……?


 不本意だが、コメント欄を閉じて、動画を確認することにした。


 動画を再生する。


 ロクディモントが両足首に薄い灰色の闘気をまとい走っていた。


 木漏れ日程度のうっすらとした輝きだった。


 ロクディモントが小さなゴーレムが密集しているところを見つけると両腕をかざす。


 オレンジ色に指先が光り、先端から炎が噴き上がった。


「ひぇひぇーっ! ゴーレム風情がボクにかなうと思うなよぉ!」


 ロクディモントが手を握りこみ、もう一度開くと先端からレーザーのようにオレンジ色の炎が噴き出す。


 左から右に薙ぐとゴーレムたちが吹き飛んだ。


 そのまま一気に中央に駆けるロクディモント。


 ゴーレムの群衆の攻撃を、足首だけのステップでまるで踊るようにかわすと、両手に淡い灰色の闘気をまとい、ゴーレムの密集の中から女性を担ぎ出した。


 その場で跳躍すると拳を握りこむ。拳だけがオレンジ色に輝いている。


「ひぇひぇ! 遊びはおしまいだぁ!」


 ロクディモントが地面に拳を打ち付けると、オレンジ色の光が周囲に広がり、爆音が後に続く。打ち付けた拳を中心に豪炎が広がり、周囲のゴーレムを吹き飛ばした。


 私は動画を止めた。

 ——クソ上司(ロクディモント)が普通に強くてびっくりするんだけど……あと、闘気が弱いのになんであんなに火力が出て動けるんだろう……


 私はこれ以上見せ場はないと判断し、コメント欄を表示しながら動画を再生した。

 

「ひぇひぇ……大丈夫かぁ?」 


「あ……ありがとうございます。なんてお礼を言えば……」


「ひぇひぇ~! 偉大なボクと付き合ってくれればいいのさぁ?」


「え……付き合う? ごめんなさい、それはちょっと……」


「ひぇひぇ? お前、高貴なるボクからのアプローチをまさか断るっていうのか?」


「おい! 何をしている!」


「ひぇひぇ? 貴様も、彼女を助ける力もないくそモブのくせにボクになんてことを言うんだ?」


「助けてくれたのはありがたいですが……そういうのはよくないと思います」


「ひぇひぇ……貴様、モブ男の分際でボクに意見するとは……ぶち殺してやろうか?」


「ちょっとケン! 逃げよう!」


「ああ、こいつはやばいやつだ! 逃げるぞハルコ!」


「ひぇひぇ! 逃げるんじゃない! ボクの彼女を連れて行くなーーーッ!」


 私は、動画を止めてコメント欄を凝視していた。


 ——うん、安定のクソだ。かっこよさそうな動きしてたけど、入口から出口までクソだった。これはあれかな? クソラビリンスかな? 入ったらクソから逃げられないようにできているのかな?


 サクラ:ロクディモントさんは恥ずかしがり屋だから、こうやって手柄をなかったことにする癖があるんだ! なんて懐が深いんだろう!


 名無しさん:そうなのか……?


 サクラ:そうですよ! ロクディモントさんは子犬とか、子猫を保護してたくさん育ててるらしいですよ?


 名無しさん:あれはポーズってこと?


 サクラ:動画とかって大げさに見せたりするでしょう? ロクディモントさんはちょっとやりすぎですが、そこがまた、彼のいいところなんです。


 名無しさん:なるほど。そういう見方もあるのか。


 私は、コメント欄をスクロールして目を通す。

 ——なんだ? このサクラってやつ。ロクディモントとやけに親し気で訂正に走ってるな……


 私は動画を止めて、パソコンの画面を閉じた。

 

 ——闘気の使い方を見直した方がいいのかもしれない。でも、どうやればいいんだろう……


 私は大きく息を吐き、天井を見つめ、木目の数を数えていた。

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