第46話「クソ上司のキメぇ配信動画を再生してしまった話」1/2
私は自宅に戻り、居間に座っていた。座卓に突っ伏してぼーっとしていた。
——体が重いな。気絶したりすることはないけど、頭もふわふわする。跳理と諜理の使い過ぎかな……
セラがドスドスと足音を立てながらやってくる。
「おーい! ツッコ! 帰ったのか? アタイの飯知らねぇか? 今まで寝てて腹減っちまって」
セラは首を左右にひねりゴキゴキと鳴らしながら私の隣に座った。
「あー多分……エスルスが食べちゃったよ?」
私は突っ伏したまま目線をセラに向ける。
ゆっくりと体を起こし、肘をついて顎を乗せた。
「アイツ……またかよ。信じられねぇ……」
セラは歯ぎしりをしながら、座布団の上にドスンとお尻を落とした。
私の方を見て、眉を上げた。
「うん? ツッコ、お前、また闘気が切れそうじゃねぇか」
セラは顎に手を当てると、まじまじと私の顔を覗き込んだ。
「そうだよ。黄砂の古代遺跡で戦ったらガス欠になっちゃった」
私は笑いながら、力が抜けきった手で前髪をかき上げた。
「ふーん……お前闘気の運用下手なのか?」
セラはあからさまに呆れた顔で、鼻を鳴らした。
「お前にだけは絶対に言われたくない」
私は声のトーンを一つ落として、ピシャリと言い放った。
「あぁん!? アタイは切れるのも早いが、回復も早いんだよ。力と速度と根性と気合で何とかなってるからな!」
セラはドンと胸を叩いた。脳筋ゴリラのドラミングはちょっと不快だった。
「まったく、ツッコも即オチが師匠なだけあって属性が近くなってきているのかな?」
エスルスは、いつの間にか居間の入り口に立っており、意地の悪い笑みを浮かべていた。
「あ、テメェ……食欲の魔女。アタイの飯どうしたよ?」
セラは即座にエスルスを睨みつけ、臨戦態勢に入った。
「ごはんが食べて食べてって泣いていたからお腹の中にしまっておいたよ。お礼はいらないから安心してくれたまえ」
エスルスは優雅に自身の腹部をさすりながら、挑発的なウィンクを飛ばした。
「テメェ……ケンカ売ってんのか?」
セラは立ち上がり、拳を固めて威嚇した。
「セラも、エスルスもめんどくさいからそういうのやめて……今はダルい」
私は喧嘩を始めそうな二人を片手で制し、もう片方の手で机をバンと叩いた。
「ああ……ツッコすまねぇ……ところで晩飯どうするよ?」
セラは一瞬で殺気を消し、しゅんとした顔で私の隣に座り直した。
「今日は疲れたからカップラーメンでもいい?」
私は力なく天井を見上げ、独り言のように呟いた。
「カップラーメン? 何だいそれは?」
エスルスは不思議そうに小首を傾げた。
「おやぁ? 食欲の魔女ともあろう方がまさかカップラーメンをご存じない?」
セラはニヤニヤとしながら、エスルスの顔を覗き込んだ。
「キミは本当に腹立たしいね。冗談は即オチだけにしてもらおうか」
エスルスはピクピクと額に青筋を立てながら、セラに言い返した。
「煽るな。ゴリラ。乗るな。魔女。キッチンの戸棚の中にいろいろあるからセラ。準備手伝ってあげて」
私は深い溜息をつき、冷ややかな視線を二人に向けた。
「おう! わかったぜ。アタイに任せて休んでな! 行くぜ? エスルス。ついてこい」
セラはエスルスの首根っこを掴み、キッチンへと引きずっていった。
「なんだか、ちょっと不本意ではあるけど。仕方ないね」
エスルスは観念したように、セラの腕を解き、大人しくキッチンへ向かった。
私は一人居間に取り残されてぼーっと天井を見つめていた。
「うーん……このままじゃ、Bランク昇格が微妙かもしれない……」
私は自分のカバンからパソコンを取り出した。
キーボードを叩き、マウスを操作しながら、黄砂の古代遺跡の攻略を行っている動画がないか探してみる。
「Bランク昇格試験」と入力し、キーボードをカタカタ、マウスホイールをカリカリと回しながら動画一覧を確認する。
私はふと、手を止めた。
『高貴なるロクディモント様の偉大なる配信 第8回 黄砂の古代遺跡攻略編』という動画を発見した。
——すげぇタイトル……あいつが配信してるの?
私は動画を再生してみた。




