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食欲の魔女と底辺OLのダンジョン飯テロ配信~「赤字ならクビ」と言われたので、ポンコツ魔女に飯を食わせてブラック企業の売上を超えます~  作者: ダニエルさん
第2章:Sランク配信者なんて無理無理無理! でも、魔石採掘部門にはいきたくない!

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第45話「限界OLが小型のゴーレムに囲まれガス欠になった話」

 私は遺跡の中に入った。一歩足を踏み入れると、周囲の音が消えたように静かだった。


 ひんやりとした空気の中、壁面に刻まれた幾何学模様の魔導回路がほのかに青く発光し、果てなく広がる暗闇と無数の石柱のシルエットを幻想的に浮かび上がらせる。


 奥の方から時折物音が聞こえた。


「ああ、この遺跡は見たことがある。おそらくボクたちの世界にあったものだ」


 エスルスは画面の向こうで眉をひそめ、真剣な眼差しで背景を覗き込んだ。


「どういうことなの?」


 私は、周囲を警戒しながら一歩ずつ遺跡の奥に進んでいく。


「言葉のままだよ。ボクたちの世界にあった研究施設とそっくりだ」


 エスルスは顎に手を当て、昔の記憶を探るように視線を上へと向けた。


「ごめん、理解が追い付かないんだけど」


 私は歩みを緩め、画面内のエスルスを二度見した。


「ふむ、きちんと説明しようか? この『黄砂の古代遺跡』と呼ばれている神殿は、見たところ、ボクがあっちの世界にいた時に部下に作らせたものだ。中で魔法や食、スキルの研究をするための研究施設みたいなものだよ」


 エスルスは人差し指を立て、懐かしむように頷いてみせた。


「それがなぜここにあるの? 私たちの世界にあるの?」


 私は周囲の発光する魔導回路を見回した。


「それはわからないな……ボクも自分がなぜこの世界にいるのかもわからないし」


 エスルスは両手を広げて肩をすくめた。


「ただ、一つ思い出したことがある」


 エスルスは急に表情を曇らせ、低く重いトーンへ落とした。


「ボクが覚えている、あっちの世界での最後の記憶は……ここでボクが何者かに襲われたときのことだよ」

 

 エスルスは胸元に手を当て、自らの体を抱きかかえるように身を縮めた。


「え……どういうこと?」


 私は息を呑み、胸が締めつけられるような感覚に足を止めた。

 

 その時、正面からガタンガタンという音が近づいてくる。


 正面を見ると、小さな石の人形のようなものが走ってくる。体には魔法陣が描かれ淡く白く輝いていた。


「おしゃべりは終わりのようだね。ツッコ。小型のゴーレムだ。何をすればいいかわかるかい?」


 エスルスは画面の前で身を乗り出し、鋭い眼光を前に向けた。


「関節の隙間を狙う。重心が不安定なので足を狙う。どこかに動きを止めるコアがある……だよね?」


 私はナイフを抜き、構えた。


「ああ、そうだとも。来るよ。この手のモンスターは大量に来るから気を抜かないように」


 エスルスは腕を組み、真剣な面持ちで小さく頷いた。


「わかってる! それもエスルスに聞いた!」


 私は足を大きく開き、いつでも踏み出せるよう重心を下げた。


「優秀な生徒で助かるよ」


 エスルスはニヤリと口角を上げ、満足げに微笑んだ。


 私は小型ゴーレムに向かって駆けた。全身を紫色の闘気で包み、膝関節にナイフを差し込む。


 ゴーレムはバランスを崩し、起き上がれなくなる。


 私はじっとゴーレムを観察する。首元に伸びる白い線を見つけ、線をたどり魔法玉を一突きする。


 ゴーレムの光は消え、動かなくなった。


 ガタンッ、ガタンッ、ガタンッ、という音が周囲から聞こえる。


 ——五、十、いや、十五体はいるか……


 私は少し遺跡の入口に向かい後退する。距離を取り、一体ずつ相手にする。


 紫色の闘気を噴き出すように駆けると、ゴーレムの足を切断していく。


 ゴーレムの足を切り落とした瞬間、別の一体が体につかみかかってきた。


 私は全身に力を入れ闘気を放出し、振りほどく。地面に落ちたゴーレムの白い線をたどり、一突き。


 ——よし、順調だ。なんとかやれそう。


 私はゴーレムの攻撃をよけ、関節を切り、倒し、白い線を追った。


 十体を過ぎたところで私の足の動きが止まる。


 体から汗が吹き出し、紫色の闘気の勢いが緩やかになる。


 私は手を見つめた。小さく震えていた。


 ——え……もうガス欠? 五分くらいしかたってないのに?


 ガタンッガタンッという音が響く。さらに小型ゴーレムが十体ほど出てきた。


 私は周囲を見渡した。ゴーレムだらけだった。


 体を入口の方に翻した。入口を抜け、砂丘を走る。左右からサンドワームが出てきたが、最後の闘気を振り絞り、駆け抜けた。


「はぁはぁ……だめだ……闘気がもたない……」


 砂丘をのぼりきり、安全を確認するとその場にへたり込んだ。


 スクワライドLOVE美:ツッコちゃん、大丈夫? さっき配信が途切れてしまっていたのだけれど?


 ツッコラーA:そうだよぉ……何かあったかと思って心配したよぉ。


「おや……そうなのかい? ボクには普通に聞こえていたんだけど」


 エスルスは不思議そうに首をかしげた。


「私とエスルスは配信用のチャネルだから何かが違うのかも……」


 私はゆっくりと立ち上がる。


「今日の配信はこれで終わります。すみません。ちょっと反省します……」


 私は額の汗をぬぐいながら、配信機材の停止ボタンを押す。


 よろよろと体を引きずるように歩き、最寄りのバス停前のベンチに座り込んだ。

  =============【作者より】


 読んでいただきありがとうございました。


 さらっとエスルスの爆弾発言がありながら、ツッコはツッコで課題もある。


 なかなか、思うようにはいきませんね。

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