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食欲の魔女と底辺OLのダンジョン飯テロ配信~「赤字ならクビ」と言われたので、ポンコツ魔女に飯を食わせてブラック企業の売上を超えます~  作者: ダニエルさん
第2章:Sランク配信者なんて無理無理無理! でも、魔石採掘部門にはいきたくない!

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第44話_食欲の魔女の生活の知恵でサンドワームをシュワシュワにさせた話

 私はCランクダンジョン「黄砂の古代遺跡」の目の前に来ていた。


 エクリプスから電車で一時間くらい、バスで30分移動したところにある砂丘。


 そこに突然現れたダンジョンだ。砂丘に佇む巨大な石造寺院。風化しかけ黒ずんだ外壁には青白い魔導文字が浮かび上がり、吹き荒れる黄砂を拒むように淡い結界の光を放っている。入り口の巨大なアーチは、深遠な闇への呑み込み口のようだ。


 ——迷いの森も怖そうな場所だったけど。ここも不穏だな。


 私は、カバンから配信機材を取り出すと電源を入れる。カメラに羽が生えて周囲を飛び回った。


「おや? ツッコかい? 遅かったじゃないか」


 エスルスは、味噌汁の鍋を片手にすでにワイプ画面に映っていた。


「エスルス? 早いね。何してたの?」


 私はカメラに目を向けた。


「うん? LOVE美さんたちが来ていたからツッコの朝定食のおいしさについて語っていたんだよ」


 エスルスは、きれいに身が外された鮭の皮を箸でつまむと口にくわえ、ちゅるりと飲み込んだ。


 スクワライドLOVE美:ツッコちゃんの鮭とか味噌汁もおいしそうなのよね。さっきまでそこの食欲の奇女は、ズッペズッペ言いながら飲んでたわ。


「あ、LOVE美さん、こんにちは。そうだったんですね。ところでエスルス? お前さっき鮭食ってたよな?」


 私はカメラをつかむ。


「うん? あと二切れあったじゃないか。フリードとセラを待ってても来ないからね。残すのももったいないから食べることにしたよ。ごはんも、お浸しも、もちろん味噌汁もね?」


 エスルスは二枚目の皮を箸で挟み、大きく口を開けると、口の中に放り込んだ。


「あのさ……セラは私を看病してたし。フリードはこの時間、まだ修行してるときあるよね?」


 私は、エスルスが鮭の皮を咀嚼する様子を見つめていた。


「ああ、そうだね。知ってるよ」


 エスルスは大きく喉を鳴らした。


「じゃあ、食うなよ」


 私は半目で画面を睨みつけながら言った。


「ごちそうさまでした。そんなことより、黄砂の古代遺跡について説明しようか」


 エスルスは、両手を合わせ、小さくお辞儀すると、口をナプキンで拭いた。


「そんなことって……っていきなり話変えるなよな」


 私は深いため息をつきながらジト目を向けた。


「この遺跡では調べたところによるとサンドワームがよく出没するようだね。どうすればいいか覚えてるかい?」


 エスルスは満足そうにお腹をさすっていた。腕の動きでわかる。

 ——マジで全部食いやがった。帰ったら説教だな。


「大まかな位置を把握するために、地面に振動を与えながら歩くんだよね。音が低いと近くに何かがいるって」


 私は地面にカメラ用の三脚を突き立てた。ズムッという乾いた音がした。


「ん?」


 私は、何度か前後左右を突く。左。サクッ。後ろ。サクッ。前方。ズムッ。前方。ズムッ。


 後ろに下がりながら地面を突く。ズムッ。ズムッ。サクッ。


「エスルス……いるんだけど。たぶん前に」


 私は冷や汗を流しながら音の変化を感じ取っていた。


「ラッキーじゃないか。今のツッコなら跳理の極意で倒せるよ。準備しておいたものを投げるといい。自分のさっき立っていた場所の3~5m先を狙って投げるんだ」


 エスルスは腕を組んで、小さく後ろにのけぞった。


「わかったよ」


 私はカバンの中から、エスルスお手製の音響爆弾を取り出した。作り方を聞いたけど、魔力も使ってるから私には再現出来そうにない。


 私は耳栓をして振りかぶると音爆弾を投げた。


 爆弾は放物線を描き、飛んでいく。


 地面に落ちた瞬間に、破裂し、甲高い音を周囲に広げた。


 音の広がりに合わせ、地面が揺れ、大きなミミズのような、体にぬめり気のあるサンドワームが地面からせり出してきた。


 体を震わせ、その場をのたうち回っている。


 大口を開け、よだれを垂れ流しながら、鋭い牙をカチカチと鳴らしていた。


「ツッコ、今だよ!」


 エスルスは画面の端で前のめりになりながら叫んだ。


 私はエスルスの声に合わせて動く。ナイフを抜き、右手に紫色の闘気を集中させてサンドワームに切りかかる。


 体表の粘液でナイフが滑る。


「あ……しまった。忘れてた」


 私はポケットから小瓶を取り出すと、中身をサンドワームにぶちまける。


 体表からシュワシュワと泡が噴き出し、粘液が浮き上がって流れ落ちる。体表があらわになった。


「よいしょっ!」


 私は体ごとナイフを乾いた体表に差し込むと、一気に縦に裂いた。


 全身に闘気を展開し、ナイフを刺したままサンドワームの体を乗り越えるように切断していく。


 反対側に着地したとき、サンドワームは動かなくなった。


「完璧じゃないか」


 エスルスはパチパチと手を叩いた。


 私はナイフに付いた血と体液を布で拭くとホルスターに戻す。


「やっぱり、エスルスの言ってた通りだったね」


 スクワライドLOVE美:ねえ、ツッコちゃん、さっきの小瓶って何?


「え? 重曹とクエン酸を混ぜたものです」


 私はカバンから小さな小瓶を取り出した。


 スクワライドしか勝たん子:重曹とクエン酸……掃除かしら?


「あー……それに近いかもです。排水溝のぬめぬめとか、油とか浮かすのに使うじゃないですか」


 私は少量の白い粉を小瓶から取り出し、地面に撒く。


 スクワライドしか勝たん子:そうだけど。それで?


「水が付くと泡が出て、ぬめりを浮かせるんです。そうすると刃が滑りにくくなる」


 私は地面に水を垂らすと、白い粉が泡を噴き出した。


 ツッコラーA:生活の知恵でサンドワームを倒すなんてすごいねぇ……


「そうとも、ボクをもっと称えるんだ」


 エスルスは腕を組んだまま鼻を鳴らした。


 エスルサーA:エスルス様は本当に頭の良いお方。


「もっといっていいんだよ?」


 エスルサーB:流石エスルス様! 知識の宝庫!


「もっともっと!」


 エスルサーC:エスルス様は天才だ!


『Lobe(ローベ) mich(ミヒ) noch(ノッホ) viel(フィール) mehr(メーア)!(いいぞ! ボクをもっともっと褒めろ!)』


 エスルスはその場で跳躍して、ワイプ外に消えた。

 

 エスルサーD:エスルス様がいれば世界は救われる!

 

 私はそのやり取りを尻目に、砂丘の地面にサクッ、サクッと三脚を刺しながら進んでいく。


 遺跡の前に立つと、奥の方から何かが動く、ガタンッ、ガタンッという音が聞こえる。


 私は三脚を背に背負い、周囲を警戒しながらゆっくりと遺跡の中に足を進めた。

 =============【作者より】


 読んでいただきありがとうございました。


 〇今回の声に出して読みたいカッコいい言語・ドイツ語講座ァーッ!

 Lobe(ローベ) mich(ミヒ) noch(ノッホ) viel(フィール) mehr(メーア)!(いいぞ! ボクをもっともっと褒めろ!)

 

 Lobe(ローベ):褒める・たたえる(動詞lobenの命令形)、英語なら Praise


 mich(ミヒ):私を・ボクを(1人称単数の目的語)、英語なら me


 noch(ノッホ):さらに・もっと(強調の副詞)、英語なら still / even


 viel(フィール):非常に・たくさんの(量を表す副詞)、英語なら much


 mehr(メーア):より多く(vielの比較級)、英語なら more


 自画自賛からのドイツ語跳躍はとんでもないやつですね。飛んでますが。


 あと、作中にさらっと出てくるズッペズッペは、Miso-Suppe(ミゾ・ズッペ)(みそ汁)です。


 ズッペはスープという意味ですね。

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