表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
73/78

第37話「瞬撃の拳闘士のゴリラフォールでもんじゃ焼きを作りそうになった話」

 セラは血を滴らせながら居間にドカッと座り込んだ。


「ツッコ、風呂入ってきたから飯にしてくれ!」セラは滴る血液をタオルでぬぐった。


「あの、血が垂れて、ばっちぃんですど……ってかなんでそんなに血まみれなんですか?」私は血まみれのゴリラを見上げた。


「あぁん? これくらい日常茶飯事だろ? 食欲の魔女に地面に打ち付けられた拍子に頭が割れただけだ。そのうち治る」セラは私の横に腰かけた。


「そのうち治るって……そんなわけ……」私はゴリラの頭を見つめていた。よく見ると青白い光がうっすらと体を包み、徐々に傷が治っていた。

 ——おっと……このゴリラ再生能力まであるって、ゴリラ・オブ・ノスフェラトゥだったのかな?


「よしっ! 治った! 飯だ! 飯だぁ!」セラは和風スパゲッティを手に取った。


 フォークに麺を巻き付け、豪快に口に運んだ。


 もぐもぐと口を動かす。ほほを赤らめ、前のめりになるセラ。


 ごくりと飲み込むと大きく息を吐いた。


『はぁぁ~♡ このキノコたまらないよぉ……』セラは腰を震わせ荒い息を吐いていた。


「毎回、そんな感じで食べるのやめてもらえませんかね?」私は食卓に肘をつくと顎を乗せた。


『ツッコの料理がおいひいんだからしかたないだろぉ……♡』セラは震えながらも食事を続けている。


「ああ……そうですか」私は三白眼を細めてセラをにらんだ。

 ——食欲と性欲の両立は難しいっていうけど、食卓でこれを見せられるのはただただ不快だな。


 セラは残ったスパゲッティを一気に平らげるとしばらくテーブルに突っ伏していた。


 大きく息を吐くと顔を上げて私をじっと見つめた。


「ツッコ、お前、今日何やってたんだ?」セラは空になった皿を押しのけ、両腕をテーブルの上にドスンと置いた。


「え、ご飯作ってましたけど」私は口元を片手で覆い、わずかに首を傾げた。


「そうじゃねぇよ! 会社行ってぶっ倒れるまで何やってたんだって話だよ。いきなりボケかますんじゃねぇぞ」セラは握りこぶしで自分の膝をドスッと叩いた。


「あ、ああ。修行してました」私は人差し指で自分の頬を掻いた。


「修行だぁ?」セラは太い首をカクンと横に傾けた。


「えっと、闘気のコントロールと鞭を避ける訓練をしましたよ」私は広げた手のひらを胸の前でひらひらと振った。


「あ……? なんだって……?」セラは開いた口のまま静止し、そのまままばたきを二回した。


「え? だから鞭を避ける訓練をリーベ……」私は上体を後ろへ引き、じりじりと距離を取った。


「あの変態野郎ッ!」セラは勢いよく立ち上がった。


「え……どうしたの!?」私は両肘を曲げて防御するように手を前に突き出した。


「アタイの妹分を鞭で調教しようとするたぁ! 何て野郎だぁッ!」セラは自分の胸板を太い腕で力任せに殴りつけた。


「ち、違いますよ! セクハライドさんは、確かにボディタッチは多いですけど……」私は両方の手のひらをセラへ向けて横に振った。


「セクハラ野郎だぁ!? ツッコ、アタイが面倒見てやるから会社なんか辞めちまいな!」セラは私の両肩をガシッと掴み上げ、強烈に揺さぶった。


「ちょっと……揺らさないでください!」私はセラになすがままに揺さぶられ続けている。首がガクガクと揺れた。

 ——このゴリラ、力強すぎぃッ! 首がもげる!


 ゴリラの力は強い。私の体はつま先立ちになり、ただただ、体を揺さぶられ続けていた。

 ——あ……やばい……このままじゃ吐くかも。さっき喰ったスパゲッティ……


 私は上下に振られる。フリーフォール、もとい、ゴリラフォールであった。

 ——まずい、吐くのはダメだ……食べたものに対する侮辱だ……


 私は意識を胸に集中する。体から何かがあふれるのがわかる。


「さっきから振りすぎなんだよ! このクソゴリラ! もんじゃ焼きができちまうだろうが!」私は全身から紫色のオーラを噴き出し、セラの手を握りしめた。力任せに握ると、地面を踏みしめた。

 ——はぁっ! はぁっ! 解放された! 決壊数秒前だった……


「もんじゃ焼きだって! どこだい!?」エスルスが静止した状態から顔をこっちに向けた。こっちみんな。

 

 セラは自分の手を押えながら片側だけ口角を上げて、私の体から出る紫色の闘気を見つめていた。


「へぇ……」


 私は息を吐くと、体からあふれる紫色の光が霧散した。


「ふぅ……」


「ツッコ、テメェなかなかコントロールが様になってるじゃねぇか」セラは顎に手を当てながら近づいてくる。


 セラは私の目の前に立つと、蒼白い光を体中から吹き上げる。


 バチバチと稲妻のような音を立てながら私を見下ろしていた。


「ツッコ、稽古をつけてやる。表に出な」セラは親指で中庭の方を指し示した。


「へっ?」


 私の間の抜けた声は、セラが放つつんざくような光の音にかき消されていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ