第30話「暴走した限界女子が漆黒の聖騎士、瞬撃の拳闘士とDIE乱闘した話」
「ハッハーッ! ツッコもフリードもギンギンじゃねぇか! アタイも混ぜてくれよォッ!」金髪のゴリラは赤黒くまがまがしいオーラを宿した拳を、ブンブンと振り回しながら私とフリードに近づいてきた。
『なんだぁい? 即オチのくせになかなか楽しそうな力を出してるじゃないかぁい!』フリードは蒼と黒の双剣を自分の前で交差させ、刃と刃をぶつけ、打ち鳴らした。それぞれの剣から剣と同色の霧があふれ始める。
「御託はいいッつてんだろぉ! ドMも、ガンギマリもまとめて相手してやっからかかってこいよ!」私の全身を包む紫色の光が黒く深くなり黒紫色に変わる。
三人が地面を蹴る。フリードの剣が、セラの拳が、私のナイフが交差する。
赤、蒼、黒、紫の光がぶつかり合う。
光がまじりあうと黒色の光が洞窟全体に広がり、遅れて轟音が響き渡った。
洞窟全体を揺らすような衝撃が走り、リーベは壁際にふっとばされる。
撮影用のカメラは粉々になり、かけらが周囲に飛び散った。
「うわっち! なんだってんでいアイツら本当に!」リーベは体を起こす。
リーベはそのあとに見た光景に息を飲んだ。
————
食欲の魔女エスルスは、布団の上で川の字で眠るツッコと、セラと、フリードを見下ろしていた。
わっちは倒れた三人をツッコの家まで運び終え、バキバキに凝った肩を回していた。
「それで? LOVE美さん、一体全体なにがあってこんなことになったんだい?」エスルスは、わっちに向き直り、頬に手を添えてこちらを見つめた。
「それがすごいことになってよぉ……すぐカメラはぶっ壊れて配信は止まるし、散々だったぜぃ」わっちは、座布団の上で胡座をかき、腕を組んで、目をつむり首をかしげた。
「ボクたちも配信が切れてしまってどうなったことかと思ったよ。あの後何があったんだい?」エスルスは小さく首を傾けた。
「そうだな……端的に言うとセラとツッコとフリードが乱闘を始めて、コボルトの洞窟の入り口が吹っ飛んだ」わっちは呆れたように深いため息をついた。
「……即オチの仕業かい?」エスルスは怪訝そうな顔をする。
「いや、どうだろうねい? とりあえず、フリードがセラに向かったんだが、セラが真っ赤に光る拳で双剣をへし折り、フリードを一発でのしちまった」わっちは当時の衝撃を思い出し、額に手を当てた。
「へぇ、即オチの闘気は蒼色だったはずだが……」エスルスは感心したように顎に手を当てる。
「まれに複数の波長の闘気を扱う人間もいるらしいよい」わっちは肩をすくめた。
「なるほど……そういうケースもあるのか。それで、そのあとどうなったんだい?」エスルスは布団で眠るツッコに視線を落とし、先を促した。
「セラがフリードを殴っているすきに、ツッコがセラの腹を切りつけたんだ」わっちは当時のツッコの動きを思い出し、目を細めた。
「へぇ……それで?」エスルスは身を乗り出す。
「ツッコのナイフは折れちまったよい。でもよ? そのあとセラが裏拳でツッコに殴り掛かったんだが、それを手を添えるだけでよけちまったんだ」わっちは自分の手で動作を再現してみせた。
「ツッコは相当強い闘気を出しながら『チョウリの極意』を使ってるんだね……」エスルスは感心したように頷く。
「その辺はよくわからねえんだがよい。セラはそのあと両腕に闘気を乗せてツッコに連打を繰り出したんだが、それも全部よけちまった」わっちは首を振る。
「ツッコも見違えるようだね……身震いがするよ」エスルスは口元を緩ませた。
「そのあとが、またおかしなことが起きたんだ」わっちは声を潜め、真剣な顔つきになる。
「おかしなことだって?」エスルスは眉をひそめた。
「ああ、セラの膝蹴りがツッコの腹に入ったんだ。でもよ……入ったと思った蹴りが、ツッコの体が金色に光ってすり抜けてたんだよ」わっちは目の前で起きた不可解な現象に、未だに戸惑いを隠せないようだった。
「何だって?」エスルスは目を見開いた。
「それに激高したセラが、全身から闘気を出して全ブッパしたんだが……ツッコの拳がセラの顎を的確にとらえて、セラはダウンさ。ツッコはそのまま力尽きておねんねって流れだったんだよぃ」わっちは一気に最後まで語り終えると、大きく息を吐き出した。
「また、金色か……」エスルスは顎に手を当て、深い思索に沈む。
「ありがとう、LOVE美さん。いろいろわかったよ」エスルスは顔を上げ、小さく微笑んだ。
「いいってことよ。でも、ツッコはどうなっちまうんだろうな……」わっちは心配そうに、眠るツッコの顔を見つめた。
「わからないけど、ボクが導くよ……」エスルスは慈しむような目をツッコに向けた。
「う~ん……もう、食べられないよ」ツッコは寝返りを打った。フリードの方に転がっていく。
「あんなに凶悪な感じで暴れまわってたのがウソみたいだよい」わっちは頬を掻いた。
「力のコントロールが課題だね。このままだと戦闘のたびに何度も……」エスルスは困ったように息を吐く。
「ああ……わっちも鞭に闘気を乗せて戦うスタイルだから、制御の仕方とかは教えるよい」わっちは立ち上がった。
「そうかい、もう帰るのかい?」エスルスは立ち上がったリーベを見上げる。
「ああ、また来るよい」わっちは手を振りながらその場を後にした。
——
私はカーテンの隙間から漏れる朝の日差しに照らされまぶしくて目を覚ます。
庭の方からちゅんちゅんと鳥の鳴く声が聞こえる。
私は瞼をこすり周囲を見ると、隣には裸のセラが眠っていた。
ヨシッ? 私はゴリラを指さし確認する。
おそるおそる布団をめくると、私も同じように裸だった。




