第24話「瞬撃の拳闘士の力を借りてチョウリの極意に目覚めた話」2/2
片手で軽々と持ち上げられた。
——軽ッ! 何これ!?
次の瞬間、私の親指と人差し指はテーブルを貫き、木片が地面に散らばった。
「え?」私はぎゅっと手を握りこむ。握りこんでしまった。
豆腐を握りつぶすかのようにテーブルがつぶれ、中央から裂けた。
テーブルの片側はセラの背中を押しつぶした。
『こ、こんなの初めてぇぇッ♡』
私も人生で経験をしたことがないようなひどい悲鳴を聞いた。
私は手を見つめ、開いたり、閉じたりした。
——この力があれば、Sランクも夢じゃないかも……
「ねえ、エスルス。私、三か月後までにSランク配信者にならないと魔石採掘部門に行かないといけなくなっちゃったんだ」私はうつむき加減で、拳を軽く握りこんだ。
「ふむ、そうなんだね。それは大変なのかい?」エスルスは顎に指をあてて小首を傾げた。
「エスルス様、昇格試験は月に2回しかないのでツッコちゃんなら毎回昇格しないと無理ですね」フリードは腕を組んだまま淡々と応えた。
「そうなのかい? ポイントに慣れてるキミが言うくらいなんだから大丈夫なんじゃないか?」エスルスは首を巡らせてフリードを見た。
「そうですね。ツッコちゃん、いや、トオルと戦った時の実力があれば余裕だと思います」フリードは片手の指を折って計算するように見せた。
「ふむ、キミの見立てでトオルや、ボクはどのくらいのランクになるんだい?」エスルスは興味深そうに視線を向け直した。
「明確な基準はないですが、全盛期のトオルはSSランク相当、エスルス様はSランクのトップ層あたりでしょうか。ツッコちゃんに憑依しているトオル。トオルちゃんで多分Sランクの下位くらいだと思います」フリードは顎を引いてフッと鼻で息を吐いた。
「フリード、キミを倒したのに、トオルちゃんはSランクの下位くらいなのかい?」エスルスは目を丸くしてフリードを見つめた。
「最初はツッコちゃんだと思って遊んでましたからね。油断してなければ結果は違いましたよ」フリードは軽く片手を振ってみせた。
「ふむ。ということだツッコ。キミはうまく力を使えばSランクくらいはなれる実力があるようだよ」エスルスは私に向き直り、パチンと指を鳴らした。
「うん……わかった。私、頑張るよ!」私は力強く頷いて両拳を胸の前で握りしめた。
「おや? キミにしては珍しく前向きだね?」エスルスは意外そうに目を細めた。
「やんなきゃいけないし、それにお父さんが私の道を示してくれたから」私はまっすぐ前を見つめ直した。
「だから、私頑張るんだから!」私は拳を突き上げた。その様子を配信用のカメラが映していた。
スクワライドLOVE美:おっぎゃーーーーん! 天使の覚醒よーーーーん! 覚醒! KA! KU! SE! Iィィィッ! 拡声器で声を大にして叫ぶのよぉーーー! 世界の中心で天使への愛を叫ぶしかないわー!! エアーズロック オルル! オルルルァァァッ! 投げ銭祭りしか勝たん! 勝たん! キーボードをカタタタターーーン!
ツッコラーB:投げ銭祭りじゃぁぁぁーーー!
ツッコラーD:投げ銭祭りじゃ! わっしょいわっしょい!
ツッコラーE:投げ銭祭りじゃ! わっしょいわっしょい!
ツッコラーF:投げ銭祭りじゃ! わっしょいしょい!
「おや、LOVE美さんたちもいたのかい。静かだからもういないと思ってたよ」エスルスは視線を部屋の隅に置かれた端末へ向けた。
ツッコラーA:いなくなるわけないよぉ。ツッコちゃんの今後が気になるからねぇ。
「そうかい、ツッコラーA君。キミもツッコのためにひと肌脱いでくれるかい?」エスルスは画面のカメラレンズをじっと覗き込んだ。
ツッコラーA:それはどういう意味かなぁ?
「いやいや、せっかくだから君にもツッコを鍛えてもらおうと思ってね?」エスルスは手のひらをカメラに向かってかざした。
私はそのやり取りに首をかしげていた。
=============【作者より】
読んでいただきありがとうございました。
ツッコが調理の極意に目覚めましたね。この後も様々なスキルに目覚めるのでしょうか?
〇今回の声に出して読みたいかっこいいドイツ語講座ァーッ!
Warum kannst du das benutzen?(ヴァルム・カンスト・ドゥ・ダス・ベヌッツェン?!)
Warum:なぜ / なんで=Why
kannst du:君は〜できる(主語 + 動詞) = You canですね
das:それを
benutzen:使う / 使用する useですね
これをくっつけることで「キミがなぜそれを使えるんだい!?」という驚きになります。
そのままムーンサルとでカカトを落とすことでセラはシュバイン(豚)になってしまいます。




