第23話「瞬撃の拳闘士にアーッ!と言わされた話」
「相性ってのはね。前に話した闘気を使うスキルのことさ」エスルスはスプーンを弄びながら、面白そうに瞳を細めた。
「えっと、それはセラさんのスキルが私の力に近いってことでいいのかな?」私は首を少し傾げ、自分の手のひらをじっと見つめた。
「ああ、そうとも。なんならそこのゲテモノはその道のスペシャリストと言ってもいい。なかなか面倒見もいいしね?」エスルスは顎でセラをしゃくり、指先で卓上を軽やかにトントンと叩いた。
「確かにそうだね。彼女は自分の流派を持って後進の育成も行っていたからね」フリードは胸ポケットからハンカチを取り出し、唇の端を丁寧に拭った。
「なんだよ、お前ら、アタイを褒めたって何もでねぇよ? アタイがなんでこいつを育てなきゃいけねぇんだよ?」セラは私のことを指さすと、ぷいと横を向いた。
「キミ、この世界で行く当てはあるのかい? どうやら相棒が行方不明のようだけど」エスルスは肘を突き、手のひらに顎を乗せて上目遣いに覗き込んだ。
「ちっ……それこそ、その女のせいなんだよ! 柳井が家に帰ってこねぇから、家にも入れねぇし……」セラは乱雑に頭をかきむしり、ポニーテールの結び目を引き抜くように締め直した。
「なんでツッコのせいなんだい?」エスルスは首を傾げた。
「詳しくはわかんねぇんだけどよ……ツッコの配信のせいで柳井が迷惑を被ったって話だぜ?」セラは机にドサリと腕を押し当て、身を乗り出した。
スクワライドLOVE美:あら、そこの金髪ポニー、不確かな情報で人を貶めるもんじゃないわよ?
ツッコラーA:そうだよぉ……エイト君は匿名掲示板で悪さをしてたのがバレて、お仕置きされてるだけだよぉ。
「あ? お前らなんだよ。有象無象が声かけてんじゃねーぞ?」セラは端末の画面を鋭い眼光で睨みつけ、鼻を大きく鳴らした。
「おーい! 金髪ポニー類人猿。うちのリスナーになんて口利いてくれてんですか。柳井が私の動画の悪評流して、会社の発展のために身を粉にしてセクシー配信してるだけですよ」私は机を指先でコンコンと叩き、表情を変えずにセラへ視線を向けた。
「セクシー配信? 柳井がか?」セラは目を見開き眉をひそめた。
スクワライドLOVE美:そうよ! アイツはやりすぎたのよ。
スクワライドしか勝たん子:でも、エイトさんはなかなか可愛い顔してるから良い感じになるんじゃないの?
スクワライド推して参る隊A:そうね。下手するとアーッ! という間に人気セクシー配信者になるかもしれないわ?
スクワライドしか勝たん子:それはなかなか楽しみね? 応援しに行かなきゃ。
「こいつら……腐ってやがる……!」セラは引きつった顔で、自らの肩を両手で抱え込んだ。
スクワライドしか勝たん子:そうね。私は腐ってるわ。でもね? これも貴腐人の嗜みなのよ?
スクワライド推して参る隊A:スクワライド様とのコラボ配信も見てみたいわー。
ツッコラーA:それは見たくないなぁ、そんな話はもうやめようよぉ……
スクワライドLOVE美:あんたら、神聖なスクワライド様に汚ねぇもんを組み合わさせちゃダメよ? わかる? そのギルティ……
スクワライドLOVE美:万死に値するわ! BANG! SHI!に値する! 運営に通報してアカウント凍結しちゃうんだからーーーん! RUN &GUNでBANG!BANG!BANG!私の台パンも止まらないんだからーーーん! 手が痛すぎるわーん! 駿河わーん!
スクワライドしか勝たん子:あ……LOVE美さん、ごめんなさい……調子に乗ったわ……
スクワライド推して参る隊A:ごめんなさい……どうかしてた……
スクワライドLOVE美:わかればいいのよ……
「なんだよコイツラ、ホント大丈夫なのかよお前の配信?」セラは私のことを憐れみを孕んだ目で見つめてきた。
「大丈夫です、皆さんいい人たちなので」
——ってことでいいんだよな? たまによくわからなくなるんだよな。この限界リスナーたち。コイツラのせいで炎上しないよな……?
「なあ……ツッコ。おめえとは最初っから諍いばっかだったけどよ、アタイをここに泊めてくれねぇか?」セラはじっと私のことを見つめてきた。ゴリラが仲間になりたそうにこちらを見ているという脳内ナレーションが聞こえてきた。
「え? これ以上、人増えるのやなんですけど」私は大きく首を横に振った。
——エスルスと、フリードだけでも生活費がヤバくて、しかもS級目指さないといけないのに厄介事はこれ以上ごめんです。
「もちろん、ただでとは言わねぇよ。お前に闘気の操り方を教えてやる」
セラは立ち上がり、私を見下ろす。
右手を握りしめると、拳が淡い青色に光りだした。
「な、何するんですか?」私は身構えて、後ろに下がり、壁に背中をぶつけた。
——ゴールデンキングコングに見つめられているお姫様の気持ちです。本当にありがとうございます。
私はエスルスとフリードを交互に見つめた。
「ああ、セラ、あれをやるのかい?」エスルスは口角を上げてセラの拳を見つめていた。
「そうか、確かにツッコちゃんにはちょうどいいだろうね」フリードは愉悦に満ちた目を私に向けてきた。
「ちょ! ちょっと! エスルス? フリードさん? 助けてくれないの!?」私は二人にすがりつくように体を向けた。
「なぁに、経験すりゃあわかるさ……行くぜ?」セラは左手で私の肩をつかむと、ゆっくりとブルーシャイニングフィンガーを私の胸元に添えた。
その瞬間、全身に衝撃が走り、私の意識はアーッというまもなく刈り取られた。
読んでいただきありがとうございました。
ごめんなさい、セラのキャラが不快な方がいたら申し訳ありません。
でも、いい味を出すキャラなので何度も咀嚼してください。
次回、ツッコはいったい何をされてしまったのか?




