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第22話「瞬撃の拳闘士をトロトロの親子丼で即オチさせた話」3/3

 スクワライドLOVE美:シンプルな親子丼でもトロトロでおいしそうね。


 ツッコラーA:ほんとだねぇ。しかし、一気ににぎやかになったね。S級配信者、A級配信者に、銀髪の魔女に、ツッコちゃんか……


「ツッコ……相変わらずキミは美味しそうなものを作るね。これ、食べてもいいかな?」エスルスはスプーンを右手に持ち、左手の指を順番にワキワキと動かした。


「温かいうちに行っちゃってください。お好みで七味もどうぞ」私は七味唐辛子を食卓に置いた。


 エスルスはスプーンで親子丼をすくうとゆっくりに口に運ぶ。


 もぐもぐと口を動かし、ゴクリと飲み込んだ。


 エスルスはスプーンを置くと、机をたたき立ち上がる。


 両手を水平にして曲げると、体を横にひねる。

 

 ひねった方向とは反対に一気に体を回すと、つま先立ちになって軸を垂直に固定した。

 

 勢いを増すごとに回転軸が鋭くなり、銀髪の髪とディアンドルの裾が円を描いて美しく広がる。完璧で圧倒的な回転速度だった。

 

Man(マン) kann(カン) nicht(ニヒト) ein(アイン) Oyakodon(オヤコドン) machen(マッヘン), ohne(オーネ) Eier(アイアー) zu(ツゥ) |zerschlagenツェアシュラーゲン!(卵を割らなければ親子丼は作れない!)」

 

 旋風のような回転の頂点で、エスルスは天井を仰ぎ見るように絶叫する。

 

 直後、ふっと両腕を胸元で引き締めて回転の勢いを一気に殺すと、片足を後ろに引いてピタリと静止した。

 

 一切のぶれもない、完璧なフィニッシュ・ポーズ。


 静寂。立ち上る親子丼の湯気。そして、ドヤ顔でカメラを指さす食欲の魔女。


 エスルサーA:ドイツ語の格言を親子丼でもじるとはさすがエスルス様。

 

 スクワライドLOVE美:え? どういうこと?

 

 エスルサーA:ドイツ語の格言に「卵を割らなければオムレツは作れない」という何かを得るためには犠牲が必要という意味の格言です。

 

 スクワライドしか勝たん子:ちょっと、重い格言ね。


「なあ、ツッコ。あたいにも分けてくれよ……」セラがよだれを垂らしながらだらしなく口を開けていた。 


「どうぞ? 召し上がってください」私はセラにスプーンを渡した。


 セラはスプーンで震える黄身をすくい上げる。

『ふわぁ……プルプルしてるよぉ……♡』


 セラは気色悪い声を上げながらうっとりしていた。


「いいから早く食えよ」私はイラッとした気持ちを隠さなかった。


 セラはスプーンを口に運ぶ。


 ゴクリと喉を鳴らすと、熱い吐息を漏らし、舌なめずりをした。


『体が……熱い……トロトロでとろけちゃうよぉ……♡』


 セラは頬を赤らめ机に突っ伏した。即落ちだった。


「飯ぐらい普通に食えないのかコイツは……」私は満面の苦笑いを浮かべた。


 隣を見ると真剣な目でフリードが机の上を見つめていた。切れ長の目に、整った鼻が映える。親子丼の白身が反射する光でキラキラと照らされていた。


 視線の先には七味唐辛子の小瓶があった。


 フリードはおもむろに瓶を手に取り、蓋を開ける。内蓋も。


 大きく口を開けると瓶を逆さまにしてすべて口の中に流し入れた。


 ゴクリと喉を鳴らす。


 目を見開いた。血走り例のごとくガンギマっていた。血走警察署御一行様いらっしゃ~いであった。


『これぞまさしく! 阿鼻叫喚だぁい!! 鼻を突き抜ける刺激、喉を焼く激痛! 目から溢れる涙! ゲフォっ!ゲフゲフ』

 フリードは嗚咽どころか咳を盛大に漏らしていた。


 回る銀髪、悶える金髪、ガンギマって咽る黒髪を見つめ、私はにこやかに微笑んだ。


「うん……こいつら、ろくでもねぇな!」


 私の独白は奇女、痴女、狂人たち銘々が出すハーモニーのなかに溶け込んでいった。


 エスルスがドヤ顔を私のほうに向け、さらにドヤ顔を決めた。


「ツッコ、チョウリの極意の修行をセラにつけてもらうといいよ。キミたちは相性がいい」


 私は一体何の相性なのか悩んだがエスルスの次の言葉を待った。

 =============【作者より】


 読んでいただきありがとうございました。


 新キャラドM拳闘士セラは食においてもドMだった!?


 濃ゆいキャラに囲まれたツッコはいったいどんな修行を受けるのか?


 〇今回の声に出して読みたいかっこいいドイツ語講座ァーッ!(久しぶりですみません!)


「Man kann nicht ein Oyakodon machen, ohne Eier zu zerschlagen!」


Manマン: 人、一般の人(英語の one や they に相当)


kannカン: 〜できる(助動詞 können の3人称単数現在形) can


nichtニヒト: 〜ない(打ち消し・否定)英語の not にあたります。


einアイン: ひとつの、ある(不定冠詞)


Oyakodonオヤコドン: 親子丼


machenマッヘン: 作る。 英語の make にあたります。


 ここまでMan kann nicht ein Oyakodon machenで「親子丼を作ることができない」


ohneオーネ: 〜なしに without にあたります。後ろに zu + 動詞の原形 を伴うことで「〜することなしに」という構文となります。


Eierアイアー: 卵の複数形  単数形は Eiアイ eggs


zuツゥ: 〜すること。英語の to

zerschlagenツェアシュラーゲン: (叩いて)割る、粉砕する


 元になったドイツ語のことわざ 「Man kann nicht ein Omelett machen, ohne Eier zu zerschlagen.」卵を割らずにオムレツは作れない = 何かを得るには代償や力仕事が必要だ)の Omelettオムレツ部分を、そのまま Oyakodon(親子丼)に差し替えた文になっています。

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