第22話「瞬撃の拳闘士をトロトロの親子丼で即オチさせた話」1/3
私はうつ伏せになりながらも強気でイキがるセラを見下ろしながら、ため息をついた。
ヌルリと手に触れる血液に気づきすぐにエスルスに目を向けた。
「エスルス? ケガは大丈夫!?」
「ああ、これしきの傷、問題ないよ」エスルスは胸元に手をかざすと、オレンジ色の光が体を包み込む。
頭のキズや、体中の擦り傷が治っていく。
「良かった……で、あれは何なの?」私は観賞用に成り下がったように、腰を震わせて動かない金髪ポニーゴリラを指さした。
「ああ、言っただろ? あれが即オチだよ」エスルスはセラを見下しながら口角を上げた。
「だ、誰が、即オチだって! アタイをなめるんじゃねぇよ!!」セラは顔だけを向けて眉間にシワを寄せて叫んだ。
「ツッコ、このゲテモノのおもしろいところはね、戦闘センスや身体能力については世界トップクラスで圧倒的な破壊力とスピードから瞬撃と呼ばれてるんだ」エスルスはセラを指を差し、私の顔を見つめた。
「でもね?」エスルスはセラの方を向くとゆっくりとセラに近づく。
「すぐに全ブッパして闘気をなくして身動きが取れなくなる上に」エスルスはセラの隣に座り込むと大きく上に手を振りかぶる。
「ドMになるんだ」エスルスが手を振り下ろすと、軽快なパァン!という音が響く。
「ひぃん……♡」
それと同時に何やら可愛い声が漏れる。
私は周囲を見渡した。
視界にあるのはディアンドルがはだけて少しセクシーな銀髪の奇女と、折檻されて反省している金髪ゴリラだけだった。
——さっきの声はどこから聞こえたんだろうか?
私はヨシッ! ヨシッ! と指差し確認するが、やはりわからない。
首を傾げているとまたエスルスが手を上げ、軽快な音が響き渡る。
「や、やめて……♡」
——おい、なんだ今の甘い声は、まさか……
私はエスルスとセラの近くに歩み寄る。
エスルスに隠れて見えないセラの表情を見て私は自然と苦笑いが漏れた。
ゴリラのはずだった金髪ポニーが、頬を赤らめ、口をだらしなくあけ、よだれを垂らし、物欲しそうな目でエスルスを見上げていた。
淫靡さと可憐さを併せ持つ表情についゴクリと生唾を飲んでしまう。
整った顔立ちだけに先ほどまでのゴリラではなく一人の少女の面影まである始末だ。
——狂人のガンギマリも大概だが、これはこれできつい。
私はエスルスと、セラの様子を見つめていたが、エスルスはエスルスで愉悦に満ちた表情でセラの尻を叩いていた。
スパンキングの音は続く、だんだん勢いが強くなり破裂音がスパーキングだった。
「あ……ん……ふぁ……らめぇ……」
金色のポニーテールを揺らしながらセラがピンクな声を漏らす。
——これ、あんまり叩きすぎると痔になるんじゃないかな。
私は真顔でその様子を見つめている。
『はははっ!Quiek noch mehr,|du hässliches Schwein!(もっと鳴け! 醜い豚めっ!)』
エスルスは歓喜に満ちた表情で尻に腕を振り下ろし続けている。リズムでいうと32ビートだった。
——コイツ、食欲だけじゃなくて実は性欲の魔女でもあるんじゃないか?
私が背伸びをして背中を掻き始めたところで後ろから足音が近づいてくる。
「おや? セラ君じゃないか、相変わらず変わった姿で変わった声を上げているね」フリードが私の横に立ち、セラを見下ろしていた。
私は指差し確認をする。
——ヨシッ? ドMと狂人が合わさると最強に見えないか? このあと大丈夫か?
『き……キサマはフリードぉ……何を……見下してる……』セラはイキも絶え絶えでフリードを見上げていた。
私はセラの気持ち悪い顔を一瞥した後、フリードに目をやった。
フリードは大きくため息をつくと、蔑んだ目線をセラに向け、吐き捨てるように息を漏らした。
「全く気持ち悪い女だ……」
私はその侮蔑と不快感を孕んだイケメンの目に射抜かれていた。
——ヤバい! これはこれでいいですね! ご飯欲しくなってきました。もっと罵倒してあげてください!
「うぅん……そんな目で見るなぁ……言葉も……ひどいよぉぉ」セラもトロけていた。
私は冷や汗をかいた。
——危ない、あっちの世界に引き込まれそうになった。イケメンの侮蔑、おいしいです。セラがいなければ完全に持っていかれていた……
私はフリードの様子を見つめていた。
「……なんでこんなモノが生きてるんだ」フリードは遠い目をしながらつぶやいた。
「「うふぁんっ♡」」私とセラのマリアージュだった。
——だめだ! この空間はまずい! 私が、私の理性が刈り取られてしまう。生きててすみません!
私は体を震わせながら、出せる限りの声を振り絞った!
「あの! ご飯にしませんか!?」
64ビートを刻み始めていたエスルスの手がピタリと止まる。
「そうだね、ご飯にしよう」
エスルスは何事もなかったように立ち上がるとセラの足をつかみ、まるで子供が人形を引きずるように中庭から居間に向かい歩き始めた。
「やめて……♡ モノ扱いしないで……♡」というセラの汚い嬌声も後を続く。
フリードは腕組みをして、首を横に振りながらついていくので、私はそっとフリードの外套をつかみ先ほどまでの余韻を噛み締めていた。




