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第20話「イヤな同僚を動画がバズった結果セクシー部門に送り込んだ話」 1/2

 私はクソ上司(ロクディモント)に連れられて社長室に来ていた。


 社長室は、エクリプスのビルの最上階、経理部の正面にある。

 ——ヨウシャールからの要望かわからないけど、本当に意味の分からない作りだよな。


 社長室にはヨウシャール、そして、なぜか柳井がいた。


「おやおや、皆さん、おそろいのようですね……」社長室の中央にある黒っぽい重厚感のある机の向こうから若い男の声が聞こえた。重厚な革張りのデスクチェアが壁の方を向いていた。


 茶髪の男がデスクチェアをくるりと回し、体をこちらに向ける。


「……さて、皆さん、なぜ呼び出されたかわかりますか?」男は眼鏡のブリッジに指を添え、上にあげた。


「あらあら、エゲツェフ。思わせぶりなことをいうのね? この小娘の動画の件でしょう?」ヨウシャールは私に向かい、人差し指を向けた。


「ど、動画ってなんのことですかね」柳井の目は泳いでいた。その勢いたるや、反復横跳びのようだ。


「なんか、私の動画が炎上してるとかって、そこのひぇひぇ仙人から言われたんですけど」私は柳井から視線を外すと、手を口に当てて、指先を咥えて震えるクソ上司を一瞥した。不快だったので一瞬でエゲツェフの方に視線を戻した。


「おやおや、まさにその件ですね。宮國社員の公開している動画、あの動画の中でSランク配信者のフリードが暴走し、それを宮國さんが撃退している」エゲツェフは立ち上がるとカツカツと靴の音を室内に響かせながら私の隣に立った。


 私はエゲツェフの方に体を向けた。私よりも二回りは高い身長、端正な顔立ちに左右で色の異なる青と金色の瞳、すらりと伸びた手足、グレーのスーツにこの暑いのにトレンチコートを着ているわけのわからない格好だ。


「DIEソースのおかげですよ」私はじっとエゲツェフを見つめた。

 ——マジで、なんでこいつと、ヨウシャールと同じ遺伝子でひぇひぇ村の村長が生まれるんだよ……


「おやおや、ただ、動画には肩から血を流し、満身創痍のフリードも映っていました。動画の前半ではコボルトにすらかなわない宮國社員が、Sランク配信者のフリードを退けたということが類推されますが、普通はあり得ないことです」


 エゲツェフは私の肩に手を添えると、ぐっと指先に力を入れた。


「触らないでください」私はその手を払った。

 ——本当にボディタッチの多い一族だな。こいつら。


「おやおや、失礼しました。つい感動のあまり度が過ぎました。フリードを倒した動画は肝心な部分が映っていないようですが、実際はどうだったんでしょうか」


 エゲツェフは片手を胸に当て、首を少し傾けてこちらを覗き込んだ。


「別に、たまたまですよ」私は視線を横に逸らし、肩をすくめて見せた。


「おやおや、たまたまですか。その後のフリードのDIEソースによる狂気も含めて、憶測がいろいろ起こってしまいましてね。動画は大バズりしています」


「え? そんなバズってるんですか?」私は思わず口元を片手で覆い、目を見開いた。


「おやおや、宮國社員。自分の投稿した内容の状況くらい把握しておかないと……」エゲツェフはポケットから取り出したハンカチで眼鏡のレンズを滑らせた。


「すみません、支給されたスマホを壊してしまって」私はポケットから真っ二つにされたスマホを取り出した。


「……再生数は一晩で40万再生になっています。同時接続は100程度ですが、あとからの拡散のおかげですね」エゲツェフはハンカチを納め、再び眼鏡を装着した。


「は……? 40万ですか?」私は息を呑み、固まった。


「おやおや、いい反応ですね。だが、問題はそこではないんです。その後、匿名掲示板において、ある投稿がされました。柳井社員、内容はわかりますかね?」


 エゲツェフは柳井の方にゆっくりと歩くと、柳井の肩を力強くつかんだ。


「い、痛いです。社長」柳井は顔をゆがませた。


「おやおや、質問をしているんですよ? 早く答えなさい」


 エゲツェフが柳井をにらむと、ミシミシという骨がきしむ音が静かな社長室に響いた。


「そ、それはツッコが……宮國さんがハニートラップで引っ掛けて、フリードを不意打ちしたというものです!」


 柳井は痛みに耐えかねてしゃがみこみながら答えた。


「おやおや、どうしたんですか? 体調でも悪いのでしょうか……」エゲツェフは手を離した。


「さて、その投稿は消されていますが、その内容がネット掲示板で様々な憶測を呼び、宮國社員がフリードを殺しただとか、Sランク配信者のフリードは実は弱かった、やらせだ、フリードとの痴情のもつれでAランクのリーベを殺したなどとという根も葉もない噂が流れました。その影響で例の動画は今も拡散・視聴され続けています」


 エゲツェフは中央の机の上のリモコンを手に取るとディスプレイをつけた。


 そこには私の配信動画のアーカイブが表示されている。私は視聴数を見て目を疑った。


 2,467,320再生。


 私は息を詰まらせた。ヒュッというイヤな音が喉から漏れた。

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