第17話「イケメンパラディンを激辛ソース入りビーフシチューで大興奮させた話」2/2
ツッコラーA:おいおい、ようやくつながったぜ。LOVE美は大丈夫かよい?
スクワライドLOVE美:みんな、心配かけたわね。
「キミ、目の前にいるのにスマホで何やってるんだい? 死にかけたんだから無理はダメだよ」エスルスは肩をすくめた。
スクワライドLOVE美:だめよ。私はリスナーなんだから映像に映るのはギルティなの。
「そういうものかい? まあいいけど。それより面白いものが見れると思うよ」エスルスはフリードの方を指さした。
私はそのやり取りを尻目にゆっくりとフリードに近づいた。
「フリードさん、大丈夫ですか?」
「ツッコちゃん、君はあんなことをした僕に優しくしてくれるのかい?」フリードは力なく垂れ下げていた右手を僅かに動かし、目を見開いた。
「正直、今もむかついてます。でも、このまま死なれるのも後味が悪いです」私はビーフシチューが入った容器をフリードの前に置いた。
——第一、フリードを切ったのってお父さんとは言え、私なんだよなぁ……このまま死なれたら殺人罪になっちゃうよ……
「すまないね」フリードは震える両手で容器をつかむとゆっくり口に近づけた。
フリードはぐいっと首を上に向け、ビーフシチューを口に含み、飲み込んだ。
「っ……!」フリードは喉を抑えた。
「か……辛い、口が、口が焼ける……熱い……いや、痛いよ、ツッコちゃん……何を入れたんだ……これは……まさに……」フリードは震え始めた。
「え? フリードさん、顔赤い……いや、青いけど大丈夫ですか? エスルス!? 何入れたの!?」私はフリードの肩に手を添え、エスルスの方を振り向いた。
「これをさ、入れてみたんだよ」エスルスは『DIEソース』の瓶を逆さにして振っていた。瓶のラベルのDIE君はいつも通りガンギマっていた。
「え……エスルス? それは、まさか……」ツッコは青ざめた。
——『DIEソース』……しかもあれ、確か半分くらい残ってたはず……
「まさに……」フリードは立ち上がり、後ろに大きくのけぞった。
『DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ! まさに死興奮の味なのだぁいぃいいいい!!!』フリードは喉に手を入れながら、DIE君のごときガンギマった形相で叫んだ。
「ひぃい! イケメンがまた狂ったぁあああ!」私は後ずさりした。
次の瞬間、フリードの体が緑色に輝いた。胸の傷がみるみるうちに回復していく。
「な……イケメンがゾンビになったよーーーッ!」私は全力で後ろに走った。
——何なのこれ! 何なのこれ! 何なのこれーッ!
エスルスは目を見開き、その様子を凝視していた。大きく息を吸い、上を向くと咆哮した。
『Gott ist geborenンンンッ!!!(神は誕生せりィィイイイッ!!!)』
スクワライドLOVE美:今、その魔女! ゲボっていった!? 吐瀉物!? 今のツッコはゲボじゃないわ! 大天使ガブリエルなのよ! 見てるだけで受胎告知されちゃうんだからーーーーん! ラッバのマークのせいろがーーーん!
スクワライドしか勝たん子:お腹に優しそうね……
「ゲボじゃないよ、神が誕生したといったんだよ。このツッコの調理スキル……」エスルスはカメラを見て、息を整えた。
大きく口の中に周囲の大気を取り込むと、両手を左右に広げた。
『たまらない! たまらないんだよ、ツッコぉおおおおッ!』その場で跳躍し、一回転した。安定のワイプ芸だった。
スクワライドLOVE美:たまらない!? そうよ! 貯まらないのよ! なぜかって!? それは投げ銭しまくるから! 何かわからないけど、コッホクンストいただきましたーーーーーンッ! キーボードをタタタタ―ーーーーんッ! 財布の紐ももうもた――――ンっ!
【スクワライドLOVE美がウルチャを行いました:10万円】
エスルサーA:コッホクンストは調理スキルという意味ですよーっ!
【エスルサーAがウルチャを行いました:3万円】
スクワライドしか勝たん子:投げ銭祭りじゃぁーーーーッ!
ツッコラーA:わっしょいわっしょい!
エスルサーB:投げ銭祭りじゃ!
ツッコラーB:わっしょいしょーーーい!
「み……みんなどうしちゃったのよ……ここにはまともな人がいないの?」私はしゃがみこんで、ゆっくり顔を上げた。
フリードの体をエスルスがゆすっていた。
「フリード……そのビーフシチュー、僕にもちょっと分けてくれないか? ちょっとだけでいいからさ!?」
『いくらエスルス様とはいえ、この死の味のスープは渡しませんよぉ』フリードは一気に掻きこんだ。
『Lass」 mir auch was übrig!ィィィッ!(ボクの分を残しておくんだよぉッ!)』エスルスは思いっきり地面をたたいた。洞窟が大きく揺れ、地面が大きく凹んだ。
『体中に死が広がるようだぁーーーッい!』フリードはその中央で全身を震わせながら悶絶していた。
エスルサーC:投げ銭祭りじゃ!
ツッコラーC:わっしょいしょーーーい!
私は周囲を見渡した。大きなため息をつくと、力なくその場に寝転んだ。
——お父さんが出てきたこと、私のよくわからない力。わからないことだけど。
私は、肘を立てて腕を枕にして、もう一度狂人と食欲の魔女を見つめた。
——この狂人たちの存在に比べればぶっちゃけどうでもいいな。
私はうつぶせになって、眠ることにした。
=============【作者より】
読んでいただきありがとうございました。
シリアスな展開、トオルに関する謎、それをすべてぶち壊す限界リスナー、狂人、魔女の大饗宴。




