第14話「イケメンパラディンと限界リスナーがガチバトルした話」1/2
「フリード・ベルセルク! あんたとは面識はないが、ツッコをいじめるならただじゃ置かねぇよ!?」リーベは腰のムチを掴むと地面を叩いた。
「おやおや、どうしたんだい? そんな怖い顔をしてボクはツッコちゃんに剣との向き合い方を教えていただけだよ?」フリードは素振りをやめるとリーベに微笑んだ。
私は息も絶え絶えで腕が震えていた。朦朧とした目でリーベと、フリードのやり取りを見つめていた。
——助かった、やっとこの地獄から解放される……
私は手をおろした。
フリードは私の剣先に視線を送るとにたりと笑った。ゆっくりと私の方に近づいてきた。目の前まで来て目を見開いた。
『ツッコちゃぁぁぁん……何で手を止めちゃったんだぁい? そんなことで強くなれると思っているのかぁい!?』
私は身震いがした。全身に寒気が走ったとき目の前に黒い線が見えた。
大きな衝撃音が洞窟に響く。
「てめぇ! ツッコに何やってくれちゃってんでぃ!?」私の目の前にフリードの黒剣の切っ先があった。
刀身にはリーベの放った鋼のムチが巻き付いていた。
『キミィ……ボクの稽古を……剣に対する愛の儀式を邪魔するというのかぁい? キミは一体何を考えてるんだぁい?』フリードは首だけを横に倒し、リーベを睨んだ。
「これが愛の儀式だって? 本当に愛があるなら虐げるんじゃなくて、見守って成長を促してやるのが粋ってもんだろうよ!」リーベはもう片方のムチに手をかけ、フリードめがけて振るった。
フリードの手が消えた。衝撃音が響いた。
リーベの双鞭が縦横無尽に踊る。
フリードがそれを弾く。弾く。弾く。
双鞭は地面をえぐり、壁を削り、天井を破壊した。
「なかなかやるじゃねぇか! それなら……」リーベは両手を後ろに引くと、両腕のムチを上下に振り始めた。
ウネウネとムチがヘビのように蠢いた。
『キミはなかなか積み上げてる人だねぇえ。鞭を愛してるのかぁい?』フリードは黒剣を握る右手を前に伸ばした。
「当たり前でぇい! 愛鞭を毎日ふるって研鑽してるんでぃ!」リーベの目の前で双鞭が、球状にうねりながらビョウビョウと音を立て、風を切り裂き始めた。
『いいねぇ! いいねぇ! ボクにキミの愛を味わわせてくれるかぁい? どんな味がするんだぁい?』フリードは右足を前に出し、前傾姿勢に沈んだ。舌なめずりをしていた。
「けっ! その余裕、後悔させてやるよぉ! くらぃな! 双鞭の大蛇ァっ!」リーベが両手を前に振るうと球状の鞭が分かれ、それぞれが大蛇のように広がり、フリードを襲った。
フリードは黒剣を振った。振った。振った。振った。とにかく振り続けた。
リーベの双鞭を弾いた。弾き、弾き、弾き、弾来続けた。
だが、大蛇は怯むことなくは徐々にフリードの体を捉え始めた。
フリードの体を切り裂き始めた。
フリードの手が止まり、剣を落とした。
黒剣が地面に刺さった。
私はそれを息を呑んで見つめていた。見つめることしかできなかった。
——LOVE美さん、すごい……イケメン狂人もすごいけど、こんなに強いなんて、私助かるの!?
「どうでい! 伊達に最年少Aクラス配信者とは言われてないぜぇ!?」リーベは右手を前に伸ばし、鞭をフリードに向けた。
『どうして止めるんだぁい?』フリードは血まみれのまま顔を上げた。ポタリポタリと体から地面に赤い血溜まりを作り始めていたが、その顔は愉悦の笑みを浮かべていた。
「ど、どうしても何も、このままだと殺しちまうだろぉ!?」リーベは息を呑んだ。
『殺す気で来ないのかぁい? どうすれば殺す気になってくれるんだぁい?』フリードは自身の体に手をかざすとオレンジ色に輝いた。みるみるうちに体の傷が消えていった。
フリードは地面の黒剣を拾うと、背中の二本目の剣を抜いた。
黒剣と、蒼剣が怪しく光を放った。
周囲の空気が重くなった。フリードは笑っていた。
『アーハッハッハッハッハァっ! さぁ! 本気で! 殺す気で! ボクに! ボォクに向かって来てくれるかぁい?』




