第13話「イケメンパラディンにだらしない姿を見せたら狂人になった話」 1/2
「ちょっとLOVE美さん、いきなり出てきたと思ったらどういうことだい?」エスルスはカメラに食い入るように近づいた。
スクワライドLOVE美:あいつは、最近になって突然頭角を現した、スクワライド様と同じSクラス配信者……なんだけど殺刃鬼と呼ばれるヤバいやつで、剣が好きすぎて自分を自傷をしたり、周囲を壊すまで剣を振り続ける狂人よ。
「何なんだい、その異質な奴は……」エスルスはカメラに映る男の顔をよく見た。
「おや? この男はフリード・ベルセルクだね……」エスルスは口に手を当てた。
スクワライドLOVE美:残念魔女さん……あなたも知ってるの?
「知ってるも何も、彼は私の部下だった男だよ。彼は加減を知らないからね。確かにツッコが危ない……みんな失礼するよ。ボクはツッコを助けに行く」エスルスは立ち上がった。
脱ワイプしたが、その場に崩れ落ちるようにワイプインした。
スクワライドLOVE美:ちょっとどうしたのよ!?
「足が痛くて立てないんだ……ちょっと早いけどエネルギー補給させてもらうよ……」エスルスはワイプ外に手を伸ばした。
エスルスの手が再度画面に戻ると、昨日小分けにしたビーフシチューが入った大きなタッパーが二つ出てきた。
エスルスはタッパーに顔をうずめるとそのまま大きく吸い上げた。
スクワライドしか勝たん子:もう少し、おいしそうに食べてほしいわね。
エスルサーA:これはこれでらしいといえばらしいですよ。
エスルスが顔をあげた。顔には汚れ一つなかった。
目を見開いて叫んだ。
『Die Apokalypseッ! von Rind unt Weinッ!!!(牛とワインの黙示録!!! )』
スクワライドしか勝たん子:アポカリプス? この世の終わりだとでもいうの?
エスルサーA:リントとヴァインは牛とワインですね。
スクワライドしか勝たん子:わかるの? 牛とワインのアポカリプス?
エスルサーA:ドイツ語勉強してます。
エスルスはもう片方のタッパーを持つと今度はスプーンで一気にかき込んだ。
無言で咀嚼しきれいに平らげていった。
あっという間に空になったタッパーを見つめて目をつぶるエスルス。
体がオレンジ色に光った。
立ち上がるとカメラがエスルスを追った。
エスルスは空になったタッパーをもって立ち上がった。
足を軽く踏み鳴らし、小さく跳ねた。
つま先を地面にトントンと打ち付け、力強く歩き始めた。
キッチンのシンクでタッパーにお湯を入れて置いた。
「さて、本来はこの感動を全力で表現したいところだけど、無駄なエネルギーは使いたくないのでね。それでは失礼するよ!」
エスルスは全力でキッチンを駆け抜けた。
廊下を通り、
中庭に出た。
全力で踏み込んだ。エスルスの体を緑色の淡い光が包むと一斉に空気が噴き出した。
土煙が周囲に広がった。
Ich komme jetztォッッ!!(今から行くよぉおお、ツッコぉお―――!!)
ジャンプ、
ハイジャンプ、
前方宙返りをすると
そのまま着地することなく空を飛んで行った。
カメラはエスルスを追いかけた。
エスルサーA:と、鳥の王が空を飛んでおられる……
スクワライドしか勝たん子:魔女っていうのは伊達じゃないのね。
――――――
私はフリードの後ろについて歩いていた。
フリードは立ち止まると前の方に指を伸ばした。
「ツッコちゃん、あそこにコボルトが一体いるみたいだよ? 倒せるかい?」
私は指の先を見た。ピンと真っすぐな指できれいだった。
——はぁ〜、イケメンは何してもカッコいいわ。眼福、眼福…
「一体なら何とかなります」
私はカバン中の瓶に手をかけた。
「いや、それは使っちゃダメだよ。剣に対する冒涜だ。剣だけで倒せないのかい?」
フリードは私のカバンを見つめていた。
私はカバンから手を話すとコボルトを観察した。あくびをしていてこちらに気づいていない。武器は持っていない。
——素手で一体なら私でも大丈夫なはず……イケメンにいいところ見せたいし!?
「一体なら、何とかなると思います」私は剣を握る力を強めた。
「いいね。じゃあやって見せてくれるかい?」フリードは手を伸ばした。手のひらを上に向けると指を一本ずつ曲げて拳を作った。




