第12話「イケメンパラディンにコボルトに襲われていたところを助けられてもじもじした話」 1/2
コボルトの巣穴の入り口に入ると、撮影機材を広げ、カメラのスイッチを押した。
カメラが起動して、周囲を旋回し始めた。
「は~い……みなさん、おはようございます―。だるい人は寝転がってみてもいいですよー。『ツッコのダンジョン配信脱力解説講座、飯テロもあるよ』第2回始めていきたいと思いますー」私は手を叩いた。
「ツッコォ……ボクの映像は見えているかなぁ……」エスルスがワイプにゆっくりと現れた。
「あー、見えてるし、音声もOKでーす。今日はエスルスさんは体調不良のため、自宅待機でーす。飯テロは昨日作ったビーフシチューをエスルスさんにお昼に食べてもらうので楽しみにしててくださ―い」私は手を振った。
「え!? お昼なのかい!? 配信すぐに食べれると思ってたのに……」エスルスは目を潤ませた。唇も震えていた。
「いやー流石にそれは勘弁してください、第一お前朝飯食っただろ! 米五合分も」私はカメラに向かって指先を向けた。
「そうか……そうだよね……わかったよツッコ……ボクはそれまで寝転がっているとするよ……」ワイプから消えるエスルス。
「おーい! 解説役! 仕事放棄するなー! ちゃんとやらないとシチュー抜きだ……」
「それは困る!」エスルスは食い気味に体を起こし、机の上に腕をついて顎を乗せた。
「それじゃあ中に入っていきますねー」私はカメラとともにコボルトの巣穴の奥に進んだ。
巣穴を少し進むと、空間が広がった。さながら地下の広場のような様相を呈していた。壁には誰が掘ったのか、コボルトの背丈に合わせた無数の小穴が空いており、そこが彼らの安息の地であることを物語っていた。床には集められた色とりどりのガラクタ……光る石や異国のコイン、折れた剣などがあたかも宝物のように積み上げられ、獣の鼓動と荒い呼吸音が、湿った空気の中で反響し合っていた。
スクワライドしか勝たん子:あら、配信が始まったのね。
ツッコラーA:みたいだねぇ……今日はコボルトの巣穴かぁ……ツッコちゃん大丈夫かなぁ……
スクワライドしか勝たん子:ミノタウロス倒していたし大丈夫じゃない?
「あれはツッコの実力じゃないからね……本人はスライムしか倒せないといっていたし」エスルスはカメラ目線で口をはさんだ。
スクワライドしか勝たん子:それ大丈夫なの? 一人でこんなところに来て。
「大丈夫だよ……ボクが知恵を授けてあるから」エスルスはカメラに向かって手を振った。
ツッコラーA:前のスライムの時みたいなやつかなぁ?
「そこまで即効性はないけどね。まあ楽しみにしていておくれよ」エスルスは不敵な笑みを浮かべた。
「エスルス……コボルトいたよ……」私は巣穴の壁に手をついて、覗き込むように道の奥の方を見ていた。コボルトが二体いた。
「ツッコ……復習だよ。コボルトの3つの弱点は何だったかな?」エスルスは指を三本立てた。
「えーっと、臆病者で集団行動をしているから一匹ずつだと途端に弱くなる。巣穴で生活しているから光に弱い。刺激物に弱いの3つだよね」私は指を折りながら説明した。
『Genauッ(そのとおり)!』エスルスは親指を立てた。
スクワライドしか勝たん子:この魔女、ほんとにこの辺りはちゃんとしてるのよね。
ツッコラーA:飛んだり跳ねたりするのにおもしろいよねぇ……
エスルサーA:エスルスさまは本当に頭の良いお方……
「じゃあ、ツッコその弱点を元にその2体のコボルトをどう倒す?」エスルスは手を組んでカメラをじっと見つめた。
「えーっと……ライトを持ってきたから片方の目を潰して、そのすきにもう一体を刺激物を顔にぶつける、ひるんだところをそれぞれ倒す感じかな……」私は持ってきたバッグから小さな袋を取り出した。
「どこを狙って攻撃するんだい?」エスルスは自分の頬に手を添えた。
「首のつけ根……後は膝の裏とか、かかとを切って機動力を削いでからとどめ……かな……」私は剣の刀身をみつめていた。
『Gut(いいね) 』エスルスは頬を緩めた。
「じゃあ……行くよ……正直スライム以外はいい経験ないからちょっとドキドキしてる……」私は胸を押さえた。心臓が早かった。
ツッコラーA:無理はしちゃダメだよぉ……
スクワライドしか勝たん子:コボルトは臆病だから躊躇しちゃダメよ。行くなら一気に!
私は右手に剣を、左手には小袋とライトを握った。




