第11話「食欲の魔女を納豆ご飯で下衆MAX(ゲシュマックス)させた話」2/2
次の日、エクリプスには寄らず、初心者向けの二つ目のダンジョン「コボルトの巣穴」に向かっていた。
「ああ……あの残念魔女、食レポで張り切りすぎて、筋肉痛で外出が嫌だとかマジでなめてるよな……とりあえずビーフシチュー食べながら食レポ配信しとけっておいてきたけど……」
――マジで、無理しないといいんだけど。限界突破しそうで怖い……
私は撮影機材が入ったカバンを抱えて、ダンジョンの入り口まで向かった。
ダンジョンの前に強面のガチムチ男や、魔導士の装束を着た優男、何人か人が集まっていた。
――何か強そうな集団だな。何でこのダンジョンに?
私は警戒しながら横を通り過ぎた。後ろから声をかけられた。
「あれ! もしかしてツッコちゃんじゃねぇか!?」女の人の声だった。
私は後ろを振り向いた。そこには若い女性が立っていた。
燃えるような深紅の武道着を身に纏い、耳には三日月を象ったイヤリングを身に着けていた。艶やかな黒髪を大きな二つのリボンで括ったツインテールの女性。小柄で細身な体躯ながら、腰に携えた双鞭がその練達の技を予感させていた。猛禽のごとき黄色の瞳は、爛々と輝きながら鋭く周囲を射抜いていた。
「すみません。どなたですか……?」私はいきなり知らない女の子から声をかけられてカバンを抱きしめて半歩下がった。
「ああ! すまねぇ……ちょっとスクワライドの旦那から気にかけてやってくれっていわれててよ。わっちの名前はリーベ・クレッセン。これでもAクラス配信者だ! よろしくな!」リーベと名乗った女性は手を差し出した。
「ええ!? あのセクハ……スクワライドさんの知り合いなんですか? 大丈夫ですか? 変なことされてませんか?」私はこの幼気な少女のことをただただ心配した。
「ツッコちゃん……旦那はそんな悪いヤツじゃねぇよ……前だってツッコちゃんを助けに行ってたじゃねぇか……」リーベが髪の毛を指にくるくると巻き付けていた。
「えー……正直何があったかあんまり覚えてないんですよね……」私は顔をひきつらせた。
「はぁん!? まさかわっちが指示出しして牛野郎と戦ったことも忘れちまったのかい!?」リーベは手を振って抗議した。
「え? 指示……? 牛野郎……? まさかあなた……」私はリーベを指さし震えた。
「あ……しまった……つい言っちまった」リーベの顔が青ざめた。
「LOVE美さん!?」私は声が震えた。
「あー……頼むから外でその名前で呼ぶのはやめてもらってもいいか?」リーベは頬を掻いた。
「え……ええ、いいですけど。LOVE美さんって男だと思ってました」私は改めてまじまじとリーベを見た。
――スタイルがよくて可愛らしい……年齢は私よりも若そうだ。
「あぁん!? そんなわけねぇだろい!? ピッチピチの18歳の乙女だよぃ!」リーベは頬を膨らませた。
「そ……そうでしたか、若いんですね……今日は何をしにコボルトの巣穴まで?」私は会話をそらした。
「ああ……ダンジョンの奥にイレギュラー固体のコボルトキングが出たって聞いてな。仲間と討伐に来た。Eランクダンジョンのコボルトの巣穴に出るには強すぎるからな」リーベはガチムチ男たちの方を一瞥した。
「コボルトキングってBクラスか、Aクラスですよね……? ダンジョンには、入らないほうがいいですか?」私は息を飲んだ。
「いや……低階層は大丈夫だ! 気にせず配信しちまってくれ!」リーベは親指を立てた。
そして、ゆっくりと仲間たちの方に歩き出した。
「じゃあまたな! 何かあればわっちを頼るんだぜぇ!」リーベは大きく手を振った。
「ありがとうございます!」私は頭を下げた。
私はリーベさんと別れて、コボルトのダンジョンの入り口を通り抜けた。
『ツッコちゃぁああん、キミはどんな剣を振ってくれるんだぁい……』
私は何か声が聞こえた気がして振り向いたが、そこには誰もいなかった。
=============【作者より】
読んでいただきありがとうございました。
LOVE美のリアル……中の人が明らかになりましたね。
次回、更新は7月3日(金)18時10分です。
〇今回の声に出して読みたいかっこいいドイツ語講座ァーッ!
intensiv : 強烈なintense。
frisch: 爽やかな fresh。
höchste Qualität :最高品質。 Highest quality。
Das ist:これは it is。
wahrhaftig:まさに 英語だとTruly 本当に 辺りが対応します。
eine Galaxie銀河 これはわかりやすいですね。Galaxyです。
※eineは一つのという意味ですね。 英語のaと同じような使い方をします。
des Geschmacks!(デス・ゲシュマックス) = 味覚の 英語だと、tasteとかflavorの意
Das ist wahrhaftig eine Galaxie des Geschmacks
ダス・イスト・ヴァールハフティヒ・アイネ・ガラクスィー・デス・ゲシュマックス!
これはそのまま直訳で、まさに味覚の銀河だ! というわけですね。
食欲の魔女の味覚は下衆MAXと覚えてください。
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