第8話「食欲の魔女をカツを卵でとじただけのものでちょろい女にさせた話」2/2
2時間弱後、私はエクリプスについた。
オフィスロビーを通り過ぎると真っすぐ25階の経理部に向かった。
――無駄にでかいんだよなこのビル……何で経理が最上階にあるんだよ。普通社長室とか人事部だろ。
経理の受付に女性が立っていた。
その女性は白色の長い髪を揺らし、人を魅了するような桃色の目、プルンと震えるルージュを纏った唇、妖艶な雰囲気を覆い隠すような真っ白なワンピースに包まれた女性だった。
「あらあら、宮國さん、14時55分。5分前の御到着とは偉くなったのね……すごいわ……」女性は笑っていた。目は笑っていなかった。
「あー……すみません。それで、ヨウシャールさん、私何をすればいいんですか?」私は、カバンを下ろし、ファスナーを開けた。PCを取り出した。
――こいつは経理のヨウシャール。クソ上司の姉だ。社長のエゲツラーの姉でもある。書類不備などは一切認めてくれず、社員に給与や交通費が振り込まれなくても気にも留めない。多分社員が餓死しても「あらあら、餓死するまで書類準備しないなんて、すごいわ」といい放つような鉄の女だ。
「あらあら、別にあなたのパソコンはいらないわよ? このウルチャの金額と、発信元の誤りがないか確認してくれるかしら?」
ヨウシャールが自分のPCを操作して、システムの精算画面を見せてきた。
確かに500万円と書かれていた。
それ以上にその他のウルチャの金額を見て目を見開いた。
ウルチャ収益合計金額: 6,325,008円
「は? これ、ウルチャの合計額ですか?」
「あらあら、こんな簡単な漢字と数字が読めないくらい残念な頭なの? それで生きているなんてすごいわ……」ヨウシャールは頬に手を添えて首をかしげた。
「これくらい読めますよ……ろっぴゃく さんじゅう にまん ごせん はちえん ですよねぇえ?」私は指さし確認しながらヨウシャールの顔を見つめて答えてやった。確定ボタンを押した。
――ああー! ぶんなぐりてぇえええ! でもこいつも社長一族だから殴ったら即セクシー配信行きだしなぁ……しっかし、この金額……セクシー配信回避できたんじゃね!?
「あらあら、読めたのね。すごいわ」ヨウシャールは興味もなさげに答えた。
パソコンを操作するヨウシャール。
カチカチというマウスをクリックする音、
カタカタカタカタというキーボードの打鍵音が響いた。
「あのー……まだですか?」私はヨウシャールの方に体をかがめて声をかけた。
「あらあら、まだいたの?アナタの対応は終わったからそこをどいて頂戴。次の方どうぞー」ヨウシャールは既に私が存在しないものとして、私の後ろに目線をやった。
「……」私はその場を無言で離れた。
――あいつ、マジで腹立つな。一事が万事こんな感じだからホントムカつくんだよな。前なんか、領収書の文字が汚すぎるっていう理由ではじかれたけど、書いたのは店の人だっつーの!
私は年休なので帰ることにした。エレベーターホールで声をかけられた。
「ひぇひぇ……宮國ぃ……お前年休なのにこんなところで何をしてるんだぁあ?」
聞きたくもないひぇひぇ語がエレベーターホールにこだました。
=============【作者より】
読んでいただきありがとうございました。
〇今回の声に出して読みたいカッコいい言語・ドイツ語講座ァーッ!
Was=What 何
war=was ~だった(動詞 sein の過去形)
zuerst=first最初に
da=there そこに
das Huhn=the chicken その鶏
oder=or あるいは、または
das Ei=the egg卵
鶏と卵はどっちが先だと思う?
Nein!(ナイン) = 違う! No! 否定ですね。
es ist das(エス イスト ダス)= it is それは
Schweinekotelett
豚のカツレツ=トンカツ 豚はシュヴァインです。強そう。
英雄:シュヴァイン・クーゲル・シュライバーとかカッコいいですよね。
直訳すると豚ボールペンですけど。
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