第7話「食欲の魔女がブリリアントポークトンカツで四回転半ひねりをキメた話」3/4
私はパン粉をバットに広げた。
冷蔵庫からウルトラブリリアントポークを取り出した。
「みなさん、見てください。このお肉100g、15,000円のウルトラブリリアントポークです」私は目を輝かせながらカメラに向けた。
「見てくださいよ! この白雪のように透き通った純白の脂身……淡いサクラ色の赤身。大理石のように繊細な霜降りがキレイでしょ! しかも、常温に置くだけで、ほらっ!? 脂がじわりと溶け出して、光を反射するの! 真珠みたいに光ってるんだよ!」私はカメラにキラキラ光る瞳と、キラキラ光るお肉を向けた。
スクワライドLOVE美:おっぎゃーーーーーーんッ! 何てブリリアントなツッコなのかしらーーーーんッ! 私はまるで産まれたての小鹿ッ! プルプル震えるバンビよぉおおおおお! ナチュラルボーンバンビなのよぉおおおおおん!
スクワライドしか勝たん子:いや……確かにこれはおいしそうなお肉。しかし、15,000円……
「じゃあ揚げていきますね!」私はパン粉を手に取りラードの海の中に落とした。
シュワァーっという音が聞こえた。
「うん……適温……いける」私は目をつぶって音を聞いていた。
ブリリアントポークを包丁の背で軽くたたく。
バッター液にくぐらせ、パン粉をまぶす。
「パン粉は今朝パン屋で買ってきた高級食パンを刻んで作ったものです」
ブリリアントポークをゆっくりとラードの海に沈めた。
ジュワワワワワァーっという音と、肉の揚がる香ばしい匂いがキッチンに広がった。
スクワライドLOVE美:ぎゃあーーーーッ! 何!? この圧倒的シズル感! シズルズルズルズルっズル! 語彙が語彙が死んじゃうわー! これ以上言葉が出ない! ワタシの脳が言葉をdenyッ! 今日のディナーはトンカツディナーーーいとっ! いけなーいっ!
スクワライドしか勝たん子:私もトンカツにしましょう。これは……凄い……飯テロ動画恐るべしね!
匂いはキッチンを通り過ぎ、廊下にも伝わっていた。
『なんだい! この匂いはッ! 破滅的ッ! な香りがするじゃないか!』エスルスは廊下を走った。
左足を前にして体をひねり、右足を大きく前方に振り上げると同時に、まるで大空へ跳び立つ鳥のように両腕を広げ高く、長く跳躍した。広がっていた両腕と両足を瞬時に体の中心へとギュッと巻き付けるように引き絞った。
空中でエスルスは回転した。
一回。
二回。
二回転半。
そのままエスルスはさっきまでいた配信席に着地した。
『待たせたね!』
スクワライドLOVE美:ちょっと今この魔女、ワイプ外から飛んでこなかった?
スクワライドしか勝たん子:ゴメン、見てなかったわ。
トンカツが揚がる音がシュワワワワッと変わった。私はトンカツを脂から取り出し、バットの網の上に置いた。
カサッと衣が音を立て、ポタポタポタポタ……ポタポタリ……と、余分な油を落としていく。
「さて、どんどん行きます」私は、二枚目、三枚目と、トンカツを揚げていった。
一枚のトンカツを包丁で切り分ける。
黄金色の衣に包丁を当てて力を入れるとザクッ! ザクッ! ザクッ! という軽快な音が響いた。
切れ目から極上の脂が染み出し、キッチン中に匂いが広がった。
『ツッコぉーーーーッ! その匂いはさすがに我慢の限界だよォオオオーーーー!』エスルスが空を仰いだ。脱ワイプした。吠えた。
エスルサーA:エスルスさまがご乱心だ!
スクワライドしか勝たん子:まあ確かに、昨日デリシャススティック食べてから何も食べてない状態でこれやられたら誰でも発狂する。
スクワライドLOVE美:発狂!? はっきょーーい! のこったーーッン! 私はキーボードをタタタタ――ンッ! なんて! なんて! おいしそうなとんかつなのかしら!!
「エスルス、じゃあ一口先にどうぞ」私はとんかつソースとからしを付けて、エスルスの口の中にトンカツを入れた。




