第7話「食欲の魔女がブリリアントポークトンカツで四回転半ひねりをキメた話」2/4
スクワライドLOVE美:あらやだ! いたの! 食欲の奇女はいないのね! って打とうとしちゃったわ。
「失礼な人だなぁ……ボクは昨日ツッコを回復してボクのポリシーを曲げてまで食事を与えて介抱して疲れてるんだ……奇跡の棒以降何も食べてないし……」
エスルスは再び画面に突っ伏した。
「こいつが作った料理は液体か、固形物かわからない吐瀉物でしたけどね。しかも、自分が食べたいからって涎いっぱい垂らしながら、スプーンで口に運んでくるもんだから最悪でしたよ」私は口元を押さえた。
――契約(唾液交換)は一回で十分だっつーの!
スクワライドLOVE美:Oh……ほんとうに残念な魔女サマね……
「うるさいよ……それより早く……ツッコ……ご飯を……」エスルスは震えていた。
「ああ、そうだね! 作るよ」私は腕まくりをした。
カメラがゆっくりとキッチン全体を映す。
スクワライドLOVE美:ちょっとツッコちゃん……設備がガチすぎるんだけど……
スクワライドしか勝たん子:配信始まってたのね……ってビザ窯とか、あのラック何? 包丁何本あるの? これ?
エスルサーA:エスルスさまに早くご飯を!
ツッコラーA:いやぁ……飯テロ配信楽しみだなぁ……
「それじゃあ……始めますね」私は手を丁寧に石鹸で洗い、キッチンペーパーで水気を拭いた。
包丁を握ると二度ほど手の中で回転させた。再度力を込めて握ると一呼吸置いた。
スクワライドLOVE美:ごくり……ツッコちゃん……雰囲気が変わったわね……
スクワライドしか勝たん子:ガチシェフ感、すごいわ……
「そうだろう……ツッコの調理スキルを見て驚くんだ……」エスルスは親指を立ててカメラに見せた。
スクワライドLOVE美:コッホ……何て?
ツッコラーA:始まるみたいだよぉ……
私は、キャベツを洗い、まな板に載せた。縦に半分に切り、芯を取る。
一呼吸置いた後で一気に切る。ザクザクザクザクッと小気味のいい音を立てながら千切りにしていく。みるみるキャベツが小さくなっていく。
スクワライドLOVE美:はぁーーーーーん! 天使が! 天使の包丁さばきに神が顕現っ! ゴッドよー! ゴッデスツッコの爆誕よーっ!
スクワライドしか勝たん子:確かにすごいわね……正確でしかも早い……
「ありがとうございます……」私は真剣な目でキャベツを刻んだ。切ったキャベツは一度氷水にさらしてざるに移し、水気を飛ばす。
「次、カツ煮の準備をします」私はタマネギを掴んだ。
タマネギの皮をむき、スライスする。
昆布をぬるま湯に一日漬けておいた鍋を取り出す、カツオ節を加えて一煮立ちさせる。
周囲に昆布の塩気を含んだ磯の香り、鰹節の香ばしい海の香りが混ざり合った香りが広がる。
「ツッコ……ちょっと破壊力が強すぎるんじゃないかな……」エスルスは顔を机に密着させていた。
スクワライドしか勝たん子:ちゃんと出汁を取るのね……限界女子なのに本格的……
ツッコラーA:すごくおいしそうだねぇ……
出汁を取った鍋にしょう油、みりん、酒、砂糖、スライスタマネギを入れてタマネギがくたくたになるまで火を通す。
その間にボウルを取り出し、卵、水、薄力粉、そしてマヨネーズを少量入れて泡立て器でかき混ぜた。
ちゃっちゃっちゃっちゃとリズミカルに混ぜ合わせていく。
「マヨネーズを入れることですごくサクサクするようになります……いいお肉なので触感も楽しみます」私は手を動かし続けた。
トンカツを揚げるためのバッター液が完成だ。
私は冷蔵庫から大量のラードを取り出した。
鍋に入れて熱し始めた。
熱した鍋の中でラードが形を崩していく。周囲に、ラード特有の甘く香ばしい獣脂の香りが立ち込める。100グラム15,000円のウルトラブリリアントポークを迎え入れるための、極上の脂の海が完成していく。
「な……なんだいこの悪魔的な香りは……ボクを殺す気なのかい……ツッコぉ……」エスルスは顔を机に突っ伏したまま、涎の海の中で小刻みに震えていた。
スクワライドLOVE美:ちょっと……この残念奇女汚いわね……あれ涎よね?
スクワライドしか勝たん子:腹減ってるのはわかるけどマイナス要素ね……
「それは困るな……ごめんよ。ボクもしっかりしなきゃ」エスルスはカメラの向きを変えて、顔と机を拭った。カメラを元に戻した。顔はカッピカピだった。
エスルサーA:エスルスさま……お顔が……
「ちょっと顔を洗ってくるよ……」エスルスは脱ワイプした。




