第6話「食欲の魔女がデリシャススティックで鳥になった話」2/4
「!!!!!!!!!!」私はゆっくりと後退した。
ツッコ:何か、牛がいました……
スクワライドLOVE美:ミノタウルスね……ツッコちゃんほかの道は?
ツッコ:登れなさそうな道しかないっす……牛野郎に気付かれずに逃げる方法は? 赤いマントとかかぶればいい?
スクワライドLOVE美:パワフルに追いかけてきそうだからやめなさい……
「ツッコ! 隠れてるんだ! ボクが助けに行く……」エスルスはカメラ目線で下唇を噛むと、カメラを担いだまま走り出した。
スクワライドしか勝たん子:ちょっとちょっとワイプ画面揺れまくりで酔っちゃうんだけど!?
エスルスには聞こえていなかった。
ツッコラーA:おいおい、どうなってんだ!
「ヒヒーーーンッ!」私の背後から泣き声が聞こえた。牛野郎なのに馬なのかい!?
スクワライドLOVE美:まずいわ!? 気付かれたわ! ツッコちゃん、私のチャットを音声読み上げモードに変えなさい。スマホはポケット! 剣を構えて、気を抜かないで! 死ぬわよ!
「え? え!? あ、うん!」私はスクワライドLOVE美のチャットを音声読み上げに変えた。
――こんな機能あったんだ……初めて使った……
「スクワ↑ライドLOVE↓美、カメラで全体を映して、私が合図する通りに動くのよ! 死にたくなければ言うことを聞きなさい」
「わかった!」私は牛野郎を見た。
牛野郎は斧を片手に持ち振りかぶった。
「スクワ↑ライドLOVE↓美、ツッコちゃん! 全力で足元に走って、頭はかがめて!」
「え……嘘……あんなところに走るの?」私は息をのんだ。
「スクワ↑ライドLOVE↓美、早く! って名前が毎回長いわ!」
「クッソ―ッ!」私は目をつぶった、全力で地面を蹴った。牛野郎の股下に滑り込んだ。
牛野郎の斧が地面にめり込んだ。
私がさっきまでいた場所が大きくひび割れていた。
濛々と土煙が立ち込め、
パラパラという地面のかけらが周囲に落ちた。
「美、ツッコちゃん走って! 振り向かずに! 風を切る音が聞こえたらしゃがむ!」
私は必死に手を突いて立ち上がると逃げた。全力で走った。
正直怖くておしっこを漏らしそうだった。足ももつれて、転びそうだった。
でも、走った。涙が出ていた。
轟轟という風切り音が聞こえた。私は音を避けるようにしゃがみこんだ。
髪の毛が切れた。ギリギリだった。体が震えた。
それでも、また立ち上がって走った。逃げた。逃げようとした。
行き止まりだった。
「あ……ああ……LOVE美さん、行き止まりだよ……私、どうすればいい……」私はスマホの方を見て震える声を出した。
「美、ツッコちゃん、前を向いて、動きをよく見て、次、縦に大きく振りかぶるわ。その時に右に飛んで避けて、牛野郎の左わき腹に剣を差し込みなさい」
「倒せっていうの……?」私は歯を鳴らしていた。
「美、違うわ……残念魔女が行くまで、攻めて時間を稼ぎなさい。逃げても逃げられないわ……」
「エスルス……早く来てよ……怖いよ……」私は剣を握り前を向いた。
牛野郎が半開きの口から舌を出していた。
黄色い歯がロクディモントみたいで臭そうだった。
牛野郎が大きく斧を振りかぶった。
「美、今! 前に走って右に飛んで!」
私は前のめりに駆けた。斧が振り下ろされる瞬間に右に半歩とんだ。
斧を避けて、がら空きの牛野郎の腹に体ごと突っ込んだ。
私の剣の切っ先は折れ、カラカラと乾いた金属音を立てて転がっていた。
左側頭部に衝撃が走って、
私は意識を失った。
「美、ツッコちゃん!」




