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食欲の魔女と底辺OLのダンジョン飯テロ配信~「赤字ならクビ」と言われたので、ポンコツ魔女に飯を食わせてブラック企業の売上を超えます~  作者: ダニエルさん
第2章:Sランク配信者なんて無理無理無理! でも、魔石採掘部門にはいきたくない!

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第82話「堅牢の殲滅士がチョコレートフォンデュでサイコーでハラショーになった話」

 私はシェリーさんの頭を撫でた。

 

「シェリーさん、大丈夫ですよ。いつものことだから落ち着いてください」


「いつものことデス!? おにぃもセラも、食べ物で今までこんなことになったことなんてなかったデス……怖いデスゥ」


 シェリーさんは涙目で私の肩をつかみ、顔を見上げた。


 スクワライドしか勝たん子:そうよね。私たちも慣れたけど異常よね。


 ケセラセラ:私も慣れてしまったわ。

 

 ガンギマリスト:同じく……

 

 エスルサーA:だが、常に新鮮さもあるという不思議……


「そっか。でも、大丈夫ですから。そんなことより甘い物食べます?」


 私はシェリーさんの手を握った。


「甘い物? 欲しいデス!」


 シェリーさんが顔を上げると、ぱあっと表情が明るくなった。


 私はその輝きに目を細めた。


 ——おっと……チョロいぞ? こんなにチョロい堅牢の殲滅士なら、あっさり瓦解できてしまいそうだぞ?


 私はシェリーさんの手を引きながらキッチンに戻った。配信用のカメラが私たちの後を追いかけてきた。


 キッチンに着くと食品棚を開け、チョコレートを取り出した。冷蔵庫からはバターを一片、生クリーム、牛乳を取り出す。


「何を作るデス?」


 シェリーさんは目をこすりながら、チョコレートを見つめていた。


「いいものですよ。楽しみにしていてください」


 私はまな板の上にチョコレートを並べると、ザクザクと刻んでいった。


 片手鍋に牛乳と生クリームを注ぎ、弱めの中火にかける。


 しばらくすると、ふつふつと小さな泡が浮かび始めた。


 温まったミルクと生クリームの優しい匂いが広がると、シェリーさんが鼻をひくつかせた。


 私はその様子に頬を緩ませ、火を止めた。


 スクワライドしか勝たん子:今日はまだなにか作るのね?


 ツッコラーE:ツッコさんの料理を作るところをまた見られるなんていいですね。


 エスルサーA:エスルス様にもぜひ食べさせてほしい。

 

「みなさん、ありがとうございます。じゃあ、チョコレートを溶かしていきますね」


 刻んだチョコレートを鍋へ加え、バターをぽとりと落とす。ゴムベラでゆっくり円を描くように混ぜながら溶かしていく。

 

「こうやって温めすぎないように混ぜ合わせていくのがコツです」


 ゴムベラの動きに合わせ、チョコレートは少しずつ角が取れ、形を崩していく。


 ふわりと濃厚なカカオの香りが鼻をくすぐった。


『チョコレートのいいにおいデスゥ』


 シェリーさんは鍋を覗き込みながら、すんすんと鼻を鳴らしていた。


 やがてチョコレートは完全に溶け、艶のあるトロトロのチョコレートソースが出来上がった。


「さて、あとは一緒に食べるフルーツの準備ですね」


 バナナの皮をむき、一口サイズに切りそろえた。


 冷蔵庫からイチゴやキウイを出すと、同じように食べやすい大きさに切り、キッチンペーパーで表面の水気を取って皿に並べた。


 スクワライドしか勝たん子:ツッコちゃんはご飯じゃなくてお菓子も作れるのね。


 ツッコラーB:チョコレートフォンデュもおいしそう。

 

 名無しさんC:これ、なんでキッチンペーパーで拭いたの?


「えっと、フルーツに水気が残ってるとチョコレートが薄まったり、うまく絡まなかったりするので軽く取っておくんです」


 私はカメラに向かってキッチンペーパーをひらひらと振った。


 名無しさんC:あ、ありがとうございます。

 

 スクワライドLOVE美:ツッコちゃんはよく知ってるのね。


「無駄に料理してるだけですよ~」


 私はバナナを一つ串に刺すと、鍋の中でくるりと回し、たっぷりとチョコレートを絡めた。


 串を持ち上げると、とろりとバナナからチョコレートが滴り落ちる。


 ——うん、絶妙な感じのトロみ。これはキマるぞぉ……?


「シェリーさん、おひとつどうぞ」


 私はチョコバナナの下に片手を添えて、シェリーさんの口元へ運んだ。

 

「え、食べていいデス!?」


「もちろんです! はい、アーンしてください」


「アーン……」


 シェリーさんはチョコバナナを口に入れ、噛み締めた。


 口の端から一滴のチョコレートが垂れそうになるが、ぺろりとなめ取る。


 もぐもぐと口を動かすと、両頬に手を添えた。


『バナナとチョコレートが混ざって、とっても美味しいデスゥ』


 シェリーさんは目尻を下げ、顔いっぱいに幸せそうな笑みを浮かべていた。


 私はその様子を見つめ、口を小さく開けた。


 ——シェリーちゃんはやっぱりかわいいぞ!? この生き物! 他に! 他に何食べるんだ!?


「シェ、シェリーちゃん。次はイチゴですよ……」


 私はテーブルの上にあるイチゴを串に刺した。

 

 チョコレートをたっぷりと絡め、シェリーちゃんの口元へ運ぶ。

 

 シェリーちゃんが小さな口を大きく開いた。


 パクリ。


 モグモグ。


 ゴクリ。


『イチゴはほのかに酸っぱいですけど、こっちも美味しいデスゥ』


 シェリーちゃんは口元についたチョコレートを舌でぺろりとなめると、嬉しそうに足をぱたぱたと揺らした。


 私もシェリーちゃんの様子を見つめながら、ゴクリと生唾を飲み込んだ。


 ——ちょっとこのシェリーたんめ! 次はどうしてやろうかしら。次はキウイフルーツ? いや……変化球だ!


 私は戸棚から薄切りのポテトスナックを取り出し、袋を勢いよく開いた。


 勢い余って中身がキッチン台に何枚かこぼれてしまったが、構うものか。


 私はポテトスナックを一枚つまむと、その半分をチョコレートの中へ沈めた。


 表面にたっぷりとチョコレートを絡め、片手を添えながらシェリーたんの口元へ運ぶ。


 シェリーたんはパクリと食いついた。


 パリパリと軽快な音を立てながら咀嚼する。


『甘じょっぱいのも美味しいデスゥ』


 シェリーたんは頬を押さえ、幸せそうに身体を左右へ揺らした。


「ああ! もう! 最高かよ! シェリーたん!」


 私はたまらずシェリーたんを抱きしめた。小さな身体を胸元へ抱え込み、柔らかな頬へ自分の頬を擦りつける。


 ——ちょっと髪飾りが刺さって痛いけど、気にするもんか! かわいいなチクショー! ハラショーだよ!


 シェリーたんは私の頭を引きはがそうと、両手でぐいぐいと押した。


「ちょ! ちょっとどうしたデス!? ツッコさん!」


 シェリーたんは身体をよじって逃げようとする。


 私は気にせず、さらに力を込めて抱きしめた。


「い、痛いデス! セラみたいなことはやめるデス! お仕置きするデスよ!」


 シェリーたんは私の頭を押しながら声を張り上げた。


 それでも私は離さなかった。


『警告はしたデス。宮國社員』


 次の瞬間、空気が重くなった。


 私はゆっくりとシェリーたんの頬から顔を離した。


 ——いや、違う。目の前にいるのは、カラシニコフ部門長だ。


 猛禽類のように鋭く輝く金色の瞳と目が合った。


 私はそっと両手を離し、二歩、三歩と後ずさった。


 そのまま床に正座する。


 おそるおそる顔を上げた。


 カラシニコフ部門長の全身を覆う緑色の闘気が、螺旋状に渦巻いていた。


 私はその光景を見上げたまま、目を見開いた。


 ——あれ? おかしいなぁ? 私のシェリーたんはどこにいっちゃったの?

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