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第4話「食欲の魔女と一緒に解説脱力飯テロダンジョン配信を始めてみた話」3/3

「そうだろうね……でも、このやり方だと多分ツッコでも倒せるよ。ツッコ、まずは適当にスライムを剣で突いてもらえるかな?」


 エスルスは挑戦的な目で私をカメラ越しに見つめていた。


「えーー……いいけど……」


 私は腰の剣を抜いた。近くにいるスライムにゆっくりと近づいて対峙すると真っすぐついた。


 剣が弾力に弾かれて通らない。スライムがとびかかってきた。


 横に剣を振り、核を切り裂いた。


「存外手際がいいね。でも、ダメだったろう?」エスルスは肩をすくめた。


「だから言ってんじゃん、突いたら通らないって」ツッコは少し頬を膨らませた。


「じゃあさ、次は核の向いている方向からついてごらん。よく目を凝らすと核は真ん丸じゃないんだ、ちょっと突起が出ているからそこを真っすぐつくんだ」エスルスは親指を立てた拳を作り、親指の方向から真っすぐつくように見せた。


「そんなものあるの……?」


 私はダンジョンの中を歩きながらスライムを探した。歩いている際に通知音が聞こえた。


「おや……ツッコ、誰かが見に来たようだよ。三人もいる」エスルスがコメント欄を開いた。


 スクワライド推して参る隊A:スクワライド様が気にしてたツッコってこの子かしら?


 スクワライドしか勝たん子:たぶんそうよ、エクリプス社の配信機材使ってるし!


「スクワライド……ツッコ知っているかい?」エスルスが眉をひそめた。


 スクワライドLOVE美:ちょっとそこの白髪オンナ! 可愛い顔してスクワライド様のことも知らないとかどこの三流よ! 配信者してるのにそんなことも知らないの!?


「ああ……スクワライドLOVE美さん、すまないね。ボクはまだこの世界に来たばかりでこっちのことがよくわからないんだ? 教えてくれるかな?」エスルスはカメラに向かって首をかしげた。


 スクワライドLOVE美:スクワライド様はね! 最近はやりの4Kなのよ―――ッ! 高身長・高所得・高スキル・高年齢! 普段は「おじさんだよぉ〜」なんてなよなよしてる脱力系おじ様なの! でもひとたびスイッチが入って糸目がカッと開いた瞬間、数多の修羅場を潜り抜けた本物の強者の眼光になって「おいおい!」ってべらんめえな江戸っ子口調に切り替わるのよ! そのギャップがもう致死量! CHI! SHI! RYO! しかも素手と見せかけて、何もない空間からあらゆる武器を自在に掴み出す不条理スタイリッシュな戦闘スタイル『WWCウォーキング・ウェポンケース』! エクリプスのトップに君臨する最高峰のSクラス配信者よ! あの神がかったお姿を見たら、全人類ご飯十杯は確定なんだからーーーッ!


 スクワライドしか勝たん子:LOVE美姉さん熱量が限界突破してるwww でもマジでそれなwwww


 スクワライド推して参る隊A:ちょっとー! もうすぐ同接10人いきそうよ! 神配信の予感!


「えーッ……私の配信スクワライドのファンで埋め尽くされそー……あのー何があったんですかー?」私は歩くのをやめてスマホの画面に目を落とした。


 スクワライドLOVE美:スクワライド様が、「ツッコって社員(家族)が新しい配信スタイル試すって言ってたのが気になってねぇ……」っておっしゃっていたのよ! 神の寵愛を受けるなんてずるいわ! ZU! RU! I! ずるい女ねぇ!


 ――えー……なんで気にかけてるんだろ……やっぱ好きなの? 怖ッ!


「ちょ、ちょっとツッコ……ボクは今、猛烈に感動しているよ……!」エスルスが両手のひらを上に向けて大げさに肩をすくめ、一転してパチパチと目を輝かせた。


「高身長、高所得、高スキル、高年齢の4K、か! なるほど、この世界の『おじさん』という概念はそこまで進化しているのだね。しかも空間から武器を出すゲテモノ……いや、傑物とあれば、ボクの食欲を満たすうえで役に立ちそうだ。何より、そのLOVE美というお嬢さんの、語彙力を完全にドブに捨てた熱量溢れる解説が素晴らしいじゃないか!」


「エスルスさーん、スクワライドさんを利用しようとするのやめてくださーい」私は頭をかいた。


 スクワライドLOVE美:まぁーーーーーッ! 私のLOVEが理解できるのね、アナタ美女の癖にやるじゃない。そんなに褒めなくていいのよ~!


 スクワライドしか勝たん子:褒めてる……のかしら……


「いや……勝たん子さん……褒めてないですね……エスルス、視聴者にひどいこと言うと飯テロなしだよ」私はエスルスをにらんだ。


ありえない(ウンメークリッヒ)ッ!!』エスルスは立ち上がった。ワイプからはみ出した。


「エスルスさーん、はみ出てまーす」私は苦笑いをした。


 エイト:あれ!? 同接20? 何が起こってるんだ!?


「あーっと……みなさんたくさん、お集まりいただきありがとうございます。こちらは『ツッコのダンジョン配信脱力解説講座、飯テロもあるよ』です。今スライムの核について解説してたんで興味あれば見てくださーい」


 エイト:スライムなんか、誰でも倒せるだろwww


「おやー、ツッコ。ツッコと同じような初心者むき出しの残念コメントをしている人がいるねぇ。スライム種の倒し方を実演してみようか。ほら、あそこにちょうどいいのがいるよ」エスルスは画面に向かって指をさしていた。


 通路の奥の闇から、ねっとりと這い出てきたのは、禍々しい(まがまがしい)紫黒色のスライムだった。普通のスライムとは一線を画すその体躯は、ドロドロと不気味に沸き立ち、触れた岩肌を「ジジュウ……」と白煙を上げながらドロリと溶かしていった。洞窟ののどかな空気を一変させる、鼻を突く強烈な酸の異臭。ずるりと(うごめ)くたびに、周囲の土を腐食(ふしょく)させて抉っていくそれは、はじまりの洞窟一階層にはおよそ存在するはずのない、全てを溶かし尽くす捕食者、アシッドスライムだった。

 =============【作者より】

 読んでいただきありがとうございました。


 ツッコ×エスルスの動画配信が始まりました。お待たせしました。


 トンデモ応援団なスクワライドLOVE美他スクワライド推して参る隊、柳井八郎ことエイト、彼らも交えてどのような話になるのだろうか。


 そして、まさかのツッコが倒せないと宣言したアシッドスライムとの対峙。


 まだまだ目が離せません。


 明日以降は1エピソードずつ毎日18時10分公開です。


〇今回の声に出して読みたいカッコいい言語・ドイツ語講座ァーッ!

 Unmöglichウンメークリッヒ:不可能だ!ありえない! 

  英語のimpossible

 

 ö:前回登場した ü に続き、

 今回もoの上に点々がついている「ウムラウト」の仲間です!

 こちらもドイツ語特有の音で、今度は口の形を「オ」にしたまま「エ」と発音するという、これまた日本語にはない複雑な響きを持っています。

 

 日本語のカタカナで強引に表記するときは「エー」の音に近くなるので、

 möの部分が「メー」となって『ウンメークリッヒ』になるんですね!

 あとは前回お伝えした、末尾のich(〜リッヒ)の法則もバチッと効いています!


 ブクマ、感想、★評価をいただけると執筆の励みになります。引き続きよろしくお願いします。

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