第4話「食欲の魔女と一緒に解説脱力飯テロダンジョン配信を始めてみた話」2/3
「は~い……みなさん、こんにちは―。だるい人は寝ちゃっていいっすよー。『ツッコのダンジョン配信脱力解説講座、飯テロもあるよ』第1回始めていきたいと思いますー」私は手を叩いた。
「えーっと、私は生徒役のツッコです。で、こっちの右上のワイプ……って……エスルスさーん、ちゃんと座らないと見切れてますよー」私は画面を見ながら配信を続けた。
「ああ……すまない……慣れてなくてね? これでいいかな?」エスルスは身体の角度を変えると上半身がきれいに映りこんだ。
「OK、完璧でーす。こっちの銀髪の民族衣装美女がエスルス・トゥルナリンさんでーす。見た目に騙されないでくださいね。私も残念ですが、自称食欲の魔女! 私以上の残念女子でーす!」
――あ……普段みたいにキャラ作んなくていいの楽ちんだぁ……
「ツッコ! 言い方言い方。しょっぱなから落としてどうするんだい……これでもボクはこの動画の解説担当! ちゃんとしてるところもあるのだからね?」エスルスは不服そうに腕を組んだ。視線はカメラ目線だった。
「はーい……残念女子がなんか言ってますが、本題に入りまーす。今日は始まりのダンジョンを進んでいくわけですが、初めてダンジョンに入る人もみんな安心して入れるように内部紹介から行きまーす」
ダンジョンの入り口に入るツッコ、入り口の中央で足を止めた。
「中はこんな感じになってまーす。いつも通りじめじめしてて嫌な感じですねー!」私はカメラをぐるっとゆっくり回した。
ゴツゴツとした不規則な凹凸を見せる岩肌と、どこまでも続く暗がり。天井の隙間から差し込むかすかな光が、宙に舞う微細な埃を白く照らし出し、足元に広がる湿った土の地面を朧げに浮かび上がらせていた。通路の奥からは、時折『ポタッ……ポタッ……』と、水滴が冷たい岩に弾ける高い音が、鼓膜を微かに揺らすように響いていた。
「ちょっと肌寒いですね。ちなみに今日は私はこんな格好です」私はカメラを自身に向けた。
革で出来た軽鎧、チュニックに、ロングパンツ、ロングブーツ、鉄製のヘルメットにヘッドライトを付けている。
「ダンジョンは暗いので、ライトなどを準備しておくと両手がふさがらなくていいでーす」私は頭のライトを点灯した。
「そうだね……あと服装も暑すぎず、寒すぎない格好にしておくと戦闘時の調整もしやすいよ」エスルスはディアンドルの上に羽織った外套をパタパタ仰いで見せた。
私はダンジョンの中を進み始めた。
「それでは中の様子を映していきますねー」
画面がゆっくりと横にスライドすると、通路の真ん中で「ぽてぽて」と気の抜けた音を立てながら、ゼリー状の体が波打つ最弱のモンスター、スライムの姿が映り込んだ。緊迫感など微塵もない、どこか長閑さすら漂う土の回廊。ツッコがだるそうに向けるカメラのレンズと、その横で腕を組み、軍服の裾を揺らしながら退屈そうに鼻を鳴らすエスルスの姿を、湿った土の匂いを含んだ薄暗い空気が、静かに満たしていた。
「エスルスさーん、スライムは解説いらないですよね? ヤッちゃっていいですか」私は剣を構えた。
「解説動画だって言ってるのに、本当に馬鹿だなぁ、ツッコちゃんは……」エスルスは頭を抱えていた。
「えー……スライムなんて誰でも倒せるじゃん。あと、エスルスも言い方ひどいし」ツッコは剣をカメラのレンズに近づけて見せた。
「仕返しに決まってるじゃないか……スライムはね……スライム種について話しておこうか……いいかい」エスルスはカメラ目線でツッコをにらんだ。
「スライム種? とりあえず聞くよ」ツッコは腕を組んだ。
「スライム種の中にはコアがある、そこが粘着質の流体の体を保持しているんだ。知っているかい?」エスルスは流れる白髪を指先でさらりと払った。
「そんなの知ってるよ? 核を切れば倒せるんだよね?」ツッコは腰に手を当てて、カメラを見た。
「ツッコは毒を持っていたり、酸性が強いスライムは倒せるかい?」エスルスは白髪を指にくるくると巻き付けた。
「私には無理だよ、真っすぐついても弾力ではじかれるし、横に切ろうにも、途中で毒か酸で大変なことになっちゃう」ツッコは横に首を振った。
「そうだろうね……でも、このやり方だと多分ツッコでも倒せるよ。ツッコ、まずは適当にスライムを剣で突いてもらえるかな?」
エスルスは挑戦的な目で私をカメラ越しに見つめていた。




