第76話「限界OLがぶっ倒れて水を欲した話」 2/2
急な熱にバランスを崩した私はツッコさんに向かって倒れ込んだ。
「え! なに!?」
ツッコさんの顔に私の胸がぶつかり、二人そろって倒れ込んだ。
「いたた……ごめんなさい」
私が両手をついた。
「はひじょうぶでふ、ほれよりほいでふだはい(大丈夫です。それよりどいてください)」
ツッコさんの闘気も消えており、私の胸に押しつぶされていた。
「ご! ごめんなさい!」
私は体を起こそうと手に力を入れたが、床が濡れていて滑ってしまった。
もう一度ツッコさんの顔を胸で押しつぶしてしまった。
「だ、大丈夫ですか!?」
私は体を起こした。
「おぅ~……わーらー……め……」
ツッコさんの目は朦朧としていた。
「シェリーさん! 大変です! ツッコさんにお水を!」
私は扉を開けて、シェリーさんに助けを求めた。
ツッコさんはわーらー、わーらーとうわ言のようにつぶやいていた。
「どうしたデス!?」
シェリーさんがサウナルームの中に入り、ツッコさんを抱えた。
「あ……シェリーさん。わーらー……」
ツッコさんはまだ水を欲しがっていた。
「ツッコさん、話さなくていいデス!」
シェリーさんはツッコさんを抱きかかえると、大浴場を足早に進んだ。
私も後を追った。
「硬い……」
ツッコさんがボソリと何かをつぶやいた。
「……ツッコさん?」
シェリーさんが足を止めた。
「硬いからWatermelonにチェンジで」
ツッコさんがシェリーさんに抱えられたまま手で×を作った。
『ほう? 宮國社員。どういう意味デス?』
シェリーさんの背中が小刻みに震えている。薄緑の闘気が全身を包み込んだ。
ツッコさんはシェリーさんの腕から飛び降り、何事もなかったかのように直立した。
「いえ! 不肖、宮國通子! 一瞬、意識が混濁してうわ言を漏らしておりました! 決して、まな板みたいだったなどとは思っておりません!」
大きな声を上げ、ビシッと右手で敬礼を取った。
『宮國社員……何がまな板みたいデスゥ?』
シェリーさんは桜の髪飾りを手に取った。
「ひぃっ! ごめんなさい」
ツッコさんは全力でお辞儀をした。
「……女性の胸を馬鹿にしたり、じろじろ見たりするのは、同性でもよくないデス。気を付けるように」
シェリーさんは桜の髪飾りを握りしめた。
「肝に銘じております!」
ツッコさんはさらに体を折りたたんだ。額と太ももが付きそうなほどの曲がり方だった。
——すごい、体柔らかいなぁ……
「分かればいいデス。取りあえず二人とも一度外に出るデス。体調を確認して今日の訓練をどうするか考えるデス」
シェリーさんは髪飾りを髪に戻すとツッコさんの手を引いて脱衣所に向かった。
私もそのあとを追いかけた。
脱衣所ではシェリーさんが私とツッコさんの体に触れ、闘気の巡りを確認したり、医療デバイスを使ってバイタルチェックを行った。
「ふむ、ケーネさんは闘気が枯渇気味なので、今日はここまでデス。宮國社員は倒れた割には安定してるデス。何か、体温や血圧が急激に上がるようなことがあったデス?」
シェリーさんは医療デバイスを片付けていた。
「あー、ちょっとアクシデントで私とケーネさんがぶつかりまして、そのせいかと。頭を打ったりもしてないのでぴんぴんしてます!」
ツッコさんは右の二の腕をバシンと叩いた。
「そうデスか。ツッコさんは闘気を維持したまま動くことに課題がありそうなので、このあと少し一緒に訓練するデス。動きやすい格好に着替えたら演習室に来るように」
シェリーさんはバスタオルで体を拭き始めた。
「私も一緒に見てもいいですか?」
私は小さく手を上げた。
「見学は自由デス。むしろ勉強になると思うので是非見るデス」
シェリーさんはそう言いながら着替えを始めた。
私たちは服を着替え、演習室に向かった。
演習室に着くと、シェリーさんは桜の髪飾りを握り込んだ。
髪飾りは深緑の光を放ち、銃へと姿を変えた。
「さて、ツッコさん。闘気の膜を維持したまま私の攻撃を避ける練習デス」
ツッコさんの方からひゅっと空気の漏れるような音が聞こえた。




