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食欲の魔女と底辺OLのダンジョン飯テロ配信~「赤字ならクビ」と言われたので、ポンコツ魔女に飯を食わせてブラック企業の売上を超えます~  作者: ダニエルさん
第2章:Sランク配信者なんて無理無理無理! でも、魔石採掘部門にはいきたくない!

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第73話「堅牢の殲滅士と稽古の約束で指切りげんまんした話」

 Bランクダンジョン『灼熱の炎獄洞』に挑戦した翌日、私は普段より早く会社に出勤して、デスクで顔を覆っていた。


「はぁ~……やってしまった。あんな姿を見せることになるなんて」


 私は指の隙間から目を出して、部屋の中央にある壁時計を見つめた。


 ――まだ八時か……じっとしててももやもやするだけだし、体でも動かすかな。


 私は袖机からジャージなどが入っているスポーツバッグを取り出すと肩に担ぎ、演習室に向かった。


 演習室の扉に社員証をかざそうとしたところ、室内から怒鳴り声が聞こえた。


 私は扉を開けず、恐る恐るガラス越しに中を覗き込んだ。


 演習場の真ん中でクソ上司(ロクディモント)が左右に軽快なステップを刻んでいた。


 私は足元へ視線をそらし、一度大きく深呼吸をした。


 ――なんだ? 今のは? ひぇひぇ族の朝の祈りか何かか?


 私はもう一度ゆっくりと顔を起こし、扉の先を見た。


 変わらずクソ上司(ロクディモント)は軽快なひぇひぇダンスを披露していた。誰も望んでなどいないのに。


 私がしばらくそのダンスを監視していると、クソ上司(ロクディモント)の右足が不自然に弾かれ、バランスを崩した。


 倒れたクソ上司(ロクディモント)に緑色の無数の弾丸が撃ち込まれ、クソ上司(ロクディモント)がその衝撃でこちらの方に滑ってきた。


 回転ずしのレーンを流れるように、クソ上司(ロクディモント)は私の目の前の扉まで運搬されてきた。


 ――すみません。私こんなゲテモノ頼んでいません。


『いつまで寝てるデスか! クソ虫が! お掃除ロボットの真似はイイから早く立つデス!』


 地面を揺らすような怒声が響いた。禍々しい闘気を感じる。


 私は息を飲んだ。ガラス扉越しに正面を見ると、深緑色に輝く大型のガトリングガンのようなものを持って、顔面に青筋を浮かべ、鬼の形相で震えるシェリーさんがいた。


 私はゆっくりとすり足で横へ移動し、ガラス扉の死角に隠れた。


 ――何あれ……シェリーさんの銃ってもっと小さいライフルみたいなのじゃなかったっけ……


「ひぇひぇ~……昨日から何度も撃ち込まれて足が痛くて立てません……」


 クソ上司(ロクディモント)が体を丸めて震えていた。昨日の私を思い出させる見事なアルマジロ姿で、私に対する精神特攻は抜群だった。


 ――おい、やめろ、クソ上司。今その姿勢を私に見せるな。


『痛い? 今、痛いって言ったデスか!? 私は体に薄い闘気の膜を張って、攻撃を弾くことができるデス! なんでできないデスか!?』


 シェリーさんはガトリングガンを肩に担ぎ、クソ上司(ロクディモント)に近づいてきた。


「ひぇひぇ! そんな精密な闘気運用はなかなかできるものではありません。ボクには無理です……」


 クソ上司(ロクディモント)は丸まったまま顔を上げた。涙と鼻水まみれだった。私の不快感に拍車がかかった。


『ホゥッ! 先日お前はケーネに何と言ったか覚えてるデスか!?』


 シェリーさんはガトリングガンの銃口で、床に丸まるクソ上司を指した。


「ひぇひぇ……気合が足りないといいました……」


 クソ上司(ロクディモント)は鼻をすすり、床に額をこすりつけた。


『そうデス! じゃあ、私が次に何というかわかるデスか?』


 シェリーさんは小さく微笑んだ。金色の目がギラリと輝き、笑っていなかった。


「ひぇひぇ……気合が足りない、気合を出せ……?」


 クソ上司(ロクディモント)は震える両手を合わせ、シェリーさんを見上げた。


『その通りデス!』


 シェリーさんはジャギッ! という音を立てて銃口をクソ上司(ロクディモント)に向けた。


「ひぇひぇ! 申し訳ありません。許してください!」


 クソ上司(ロクディモント)は床に頭を押しつけ、両手を前に伸ばした。


『謝る相手が違うデス!』


 ガトリングガンの銃口が緑色に光る。シュルシュルと音を立てながら銃身が回転を始めた。


 緑色の光が広がる。


 ドガガガガガガガガガッ!


 銃声が響き、白い煙が上がる。


 シェリーさんはガトリングガンを肩に担いで扉を開け、演習場から出てきた。


 死角に隠れていた私に気づくと、シェリーさんはにこっとほほ笑んだ。


「宮國社員、いいところにいたデス。この後十時からケーネと一緒に稽古をするんデスが付き合うデスか?」


 シェリーさんの小さな体には不釣り合いなガトリングガンを揺らしながら、私を見上げてきた。


「え、ええ……ちょうど体を動かしたかったのでお願いします」


 私は顔を引きつらせながら何度もうなずいた。


「じゃあ、十時デス! 約束デス」


 シェリーさんが小指を出してきた。


「えっと……こうですか?」


 私は小指を出してシェリーさんの指に絡めた。


 ――指切りげんまんかな……? シェリーさんがわかるの?


「指切りげんま~ん、うっそついた~ら……」


 シェリーさんはニコニコと絡めた小指を縦に振る。


『カラシニコフでシュートヒムデスゥ……』


 シェリーさんの金色の瞳が光る。


「ゆ~びきった! デス!」


 シェリーさんは大きく縦に手を振り、指を離した。


「じゃあ、約束デス!」


 シェリーさんは鼻歌交じりにスキップしながら、その場を離れていった。


 私は演習場の中をガラス扉越しに覗き込んだ。


 クソ上司(ロクディモント)は、無数の銃痕に囲まれた床の中央で、白目をむいて泡を吹いていた。


「汚ねぇ……」


 私は吐き捨てるようにつぶやき、二時間後の約束に向けてその場を後にした。

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