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食欲の魔女と底辺OLのダンジョン飯テロ配信~「赤字ならクビ」と言われたので、ポンコツ魔女に飯を食わせてブラック企業の売上を超えます~  作者: ダニエルさん
第2章:Sランク配信者なんて無理無理無理! でも、魔石採掘部門にはいきたくない!

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第70話「瞬撃の拳闘士がピグミーマーモをセッティングした話」

 ブラックアーマーガンギマリスト、略してBAGは、私の全身を包んでいた闘気が霧散するのを見て、大きくため息をついた。


『ツッコちゃぁぁん……なぁんでやめちゃうんだぁい?』


 BAGは爛々と輝く目で私を見下ろした。


「いや、お前の顔がガンギマってしまって、イケメンオーラから身を守る必要がなくなったので」


 私は立ち上がると三白眼をさらに細め、BAGを凝視した。


 ——さっきまではイケメンが眩しすぎて、凝視なんかしたら目が焼き切れてたかもしれないのに。今のBAGの目は黒く輝いていて、不快感しかない。不思議だ。


「おいおいツッコ! すげぇじゃねーか!」


 セラは私の背中を大きな手のひらでバンバン叩いた。


「ちょっとセラ、痛いよ……」


 私は眉をひそめた。


「何言ってんだよ。さっきのができればこれくらい痛くも痒くもねーだろ!」


 金髪ゴリラは喜々としてさらに背中を叩く。


 何度も何度も叩く。


 バンバンという音はドンドンと音を変えた。


「痛い! 痛いって……」


 私はゴリラの張り手から逃げるように再びしゃがみ込み、丸まるように体を縮こまらせた。

 

 ゴリラの手は止まらない。


 金髪ポニーテールが目の前で上下に跳ねる。


『いいねぇ、いいねぇ! その調子だよ。セラぁ! そのままそのピグミーマーモセットをつぶしちゃうんだぁい!』


 BAGはゴリラの放つ音のリズムに合わせてパチパチと手を叩いた。


「いてぇって! 言ってんだろうがぁ! やめろよオマエら! 脳みそバグってんのか!」


 私は体を丸めたまま、力を込めて叫んだ。


 うっすらと紫色の闘気が体を包み込んだ。


「おお! ツッコ! いい調子じゃねぇか! 耐久力勝負といこうぜぇッ!」


 ゴリラはさらに力を込めて私の背を叩く。


 ドォン! ドォン!


 轟音が響き、地面が沈む。


 松の木が揺れ、灯籠がガタガタと音を立てた。


「よくねぇよ! 手を止めろって! 痛……くはないけど!」


 私はアルマジロのようにがっちりと丸まった。


 ——私はアルマジロ……私は丸い玉……

 

『限界まで追い込もうねぇ! 何発まで耐えられるか数えてみようかぁい?』


 BAGが両手を広げ、私の正面でガンギマっていた。


『いっかぁ~い……』

 

 ゴリラの鈍打(ドンだ)に合わせ、BAGは舌を出し、ヨダレをたらしながら人差し指を立てた。


『に……かぁ~い……』


 BAGは白い歯をニチャッと見せ、二本指を揺らした。

 

 私は、脳内バグだらけの怪異へと成り下がったモンスターゴリラとBAGのコンビネーションに耐えていた。


 丑の刻参りのように続けられる鈍打(ドンだ)。


 響く音。


 沈む体。

 

 しばらくしてセラの手が止まった。


 ——あれ、終わり? まさかあの二人が飽きたとでも言うの?


 私はゆっくり目を開き、首だけを動かして周囲を見渡した。

 

 いや、首しか動かせなかった。


「ツッコ……なんかすまねぇな……」


 金髪ゴリラは眉をへの字に曲げ、私を見下ろしていた。


「ツッコちゃん、やりすぎちゃったみたいだよ」


 BAGはイケメンに戻っていた。


 口元に垂れたヨダレすらセクシーであった。


 申し訳なさそうにこちらを見下ろす金髪ゴリラとイケメン。


 私はその二人の足の隙間から、こちらを見る人影に気づいた。


「やあ、ツッコ。ご機嫌いかがかな?」


 私は目を見開いた。


 私はガンギマってはいないはずだ。


 だが、目の前の光景に戦慄した。


 地面に埋まった銀髪の魔女。


 そして、同じ目線にいる私。


 私はゴリランカー跡地に埋まるマンドラゴラ魔女の正面にピグミーマーモセッティングされていた。


「ちょ! ちょっとこれどうなってるの!? どうなってるんだよこれ!」


 私は首だけを動かし、ゴリラとイケメンに抗議した。


「埋まったんだよ。見事な闘気運用だった。手が使えないから口で失礼するよ? パチパチパチパチ」

 

 エスルスは小さくうなずきながら口だけで盛大なオベーションを送った。


「うるせえ、嬉しくねえよ」


 私は口をとがらせて、顔を背けた。


「仕方ねぇなぁ。引き抜いてやるよ」


 金髪ゴリラは蒼白い闘気を両手にまとうと、私の両脇へ手を差し込み、がっちりと体をつかんだ。


「ちょっ! 待って! イヤな予感がするから!」


 ——これ、さっきエスルスもなってたやつだよね!? ダメ! やめて!


 ゴリラが私をリフトアップしようと腕を曲げた。


 私の体が徐々に引き抜かれていく。ズボンがずれていくのを感じた。


「待てって言ってるだろぉ!」


 私は地面から抜けて自由になった右手に、紫色の闘気を全力でまとわせた。

 

 バチバチと音を立てる私の右手。

 

 一気にセラの脳天へ振り下ろした。

 

 ドォンッ!

 

 大きな音を立て、セラの頭が地面に打ち付けられる。


 セラは頭から地面に突き刺さり、首を支点に体を左右へ揺らした。

 

 ゆんゆんとしばらく揺れたあと、両脚を空へ伸ばしたまま静止した。


 半月がマンドラゴラ魔女、ピグミーマーモセッティング限界OL、新たに建造されたゴリラの柱(ピラーオブゴリラ)を照らす。


「なんでこうなったんだろうね」


 イケメンがため息を吐くように独り言ちた。 

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