第69話「限界OL配信者が運命の扉を叩こうとしたらGGKに阻止された話」 2/2
「あ、コレならできます」
私はうずまきクッキーのことを思い浮かべながら、指先で紫色の闘気を渦巻かせた。
「そうそう、それだね。偉いじゃないか、ツッコちゃん」
フリードは私の頭にぽんぽんと手を乗せた。
私はフリードの顔を見上げた。
フリードは少しはにかむように微笑んだ。
イケメンであった。
私の胸に何かが刺さった。
――ズッキューーーーン! 私のハートが射抜かれましたよ!
イケメンはさらに左右に手を動かす。
優しく撫でる。
指先がかすかに耳に触れる。
私の心臓が射抜かれる。
手の動きに合わせ、二本、三本。
ハチの巣のように貫かれていく。
――ズキュキュキューーーーン! 私のハートがハニカム状態でもうもたーーーん!
私は顔を真っ赤にし、指先に紫色の闘気を渦巻かせたまま体を縮めた。
「それでね? ツッコちゃん。極端に熱い場所や寒い場所では、外気から体を守るために全身をこういう風に包むんだよ?」
フリードの指先でパチパチと弾けていた灰白色の闘気が、少しずつ音を小さくしていく。
指先から手のひらへ。
手のひらから腕へ。
肩から胸元へ。
薄い灰白色の光は流れるように広がり、やがてフリードの全身を包み込んだ。
「ツッコちゃん? ちゃんと見てる? ほら、こんな風に全身で循環させればいいんだよ」
私は顔から手を離し、しゃがみ込んだままフリードを見上げた。
フリードの全身が薄い灰白色に輝き、その光が体の表面を流れるように動いていた。
ロマンスグレーイケメンであった。
「おっふ」
私は息をするのを忘れていた。
目をそらすように体を縮こまらせた。
「コツは簡単で、指先でやっていた動きを全身に取り入れればいいんだよ? って、ツッコちゃん聞いてる?」
イケメンは腰をかがめ、丸くなった私の顔を覗き込んだ。
私はさらに体を縮こまらせた。
――イケメンヤバいです。今までの所業がなかったことになるくらいカッコいいです。今更だけど恥ずかしい。穴があったら入りたい。
私は指先から闘気をあふれさせたまま膝を抱きしめ、体をさらに小さくした。
――端から見ればアルマジロのようなものだろう。まん丸なアルマジロ。
――そうだ! 私はアルマジロだからイケメンオーラから身を守るんだ!
私は己の身体を一つの大きな球に見立てた。
指先で作っていた紫色の渦を、そのまま体全体へ広げるように意識しながら、さらに丸くなる。
目の前が淡い紫色に染まった。
「……ん?」
私はうっすらと目を開けた。
自分の腕を見る。
薄い紫色の光が腕を包み、その表面をゆっくりと流れていた。
私は目を大きく開き、丸めていた体を少し緩める。
足も同じように紫色に輝いていた。
『ああ、初めてにしては上手じゃないかぁい』
イケメンがニチャリとした粘り気を含んだ声を漏らした。
私はゆっくりと顔を起こすと、紫色の闘気をまといながらイケメンを見上げた。
イケメンはそこにはいなかった。
『殺してくれと懇願してくれと叫ぶ辛さ』で、私の中のNo.1ガンギマリストだったダイくんを超える、ガンギマった上半身裸の何かがそこにはいた。
そのガンギマった何かは首から下げた十字架に手を添える。
十字架が淡い灰色に輝いた。
それと同時に、ガンギマリの全身から灰白色の光があふれ出す。
――このガンギマリ……発光するの!?
十字架が強く輝き、霧のような灰色の粒子へと変わった。
粒子がガンギマリの全身を包み込む。
霧が少しずつ形を成し、黒色の鎧へと変わっていった。
肩。
胸。
腕。
腰。
脚。
次々と漆黒の装甲がガンギマリの全身を覆っていく。
私の目の前でブラックアーマーガンギマリストが爆誕した。
その爆風に吹き飛ばされるように、私のハートのときめきは霧散した。
――顔が良くてもガンギマリはガンギマリなんだよ。何度も騙されちゃダメだよ? 私?
そのトキメキと同じように。
私の全身を包んでいた紫色の闘気も、ふっと霧散した。




