第69話「限界OL配信者が運命の扉を叩こうとしたらGGKに阻止された話」1/2
私はイケメンの胸元に見とれていた。ガンギマリ剣士をガン見である。
――いや待て。今は胸板を鑑賞してる場合じゃない。
「ボクを放置したままフリードを鑑賞するのは辞めてもらえるかな?」
穴の中の魔女が何かを呟いていたが私は無視した。
「フリードさん、生きてます……?」
私はイケメンの頬をペシペシと叩く。反応はない。
パチッ!
少し強めに叩いてみた。
「ん……うん……」
イケメンの顔が歪む。小さく吐息を漏らした。艶めかしさすらある。勘違いかもしれないけれど!
――な、なんだこれは……な、何か新しい扉を叩いている気がする……
ベチッ!
「うぅん……」
イケメンの端正な顔立ちの眉が形を変える。
――ヤバい。ナニコレナニコレ!? ナニコレイケメン百面相なんだけど!
バチンッ!
「うっ……」
イケメンが目を強くつぶる。表情が苦悶に崩れる。
――運命は! 運命はこのようにダダダダーンと扉を叩く!
私は興奮のあまり手に紫色の闘気がにじみ出た。
フリードの顔めがけて、全力で運命の扉を叩く左手を振り下ろす。
イケメンの頬に触れる寸前。
私の運命の扉を叩く左手は、ゴリラ顔の門番――ゴリラゲートキーパーに阻まれた。
「ツッコ、ガンギマった顔でそれは洒落になんねぇよ。フリードが死んじまう」
金髪ポニーのGGKが私の左手首をつかんでいた。
片手で持ち上げられていた。
「あ、ゴメン……運命の力に抗えなかったんだ。助かった」
私はセラにつかまれ、ぷらぷらと揺れていた。
「いいってことよ。気絶してるやつの気付けはこうやるんだよ」
セラは私を地面に下ろすと、右手のひらに薄い青白い光を集めた。
左手でフリードの体を支え、背中に右手を添える。
セラの青白い闘気がフリードの背中に広がった。
「フンッ!」
セラが鼻を膨らませ、ゴリラブレスを吹き出す。
青白い闘気が強く煌めいた。
「ガハッ!」
イケメンが大きく息を吸い込み、ゆっくりと目を開けて私を見つめた。
――細目のイケメンもアンニュイで素敵です!
「う……ここは?」
イケメンは頭を手で押さえ、左右に首を振った。
黒い前髪が揺れる。
私の両の眼も、その動きに合わせて左右に動いた。
「アタイがぶちのめしたから意識をなくしてたんだよ!」
セラは満面の笑みでサムズアップした。
こんなありがた迷惑な現状報告はあっただろうか。いや、ない。
「そうかい……ありがとうと言っていいかはよく分からないけど……それより、変な夢を見たよ」
イケメンは頬に手を当て、何かを思い出すように首をかしげた。
「夢? トオルにでも会ったか?」
セラも首をかしげた。
「死人の夢を見たみたいな言い方はやめよう。トオルは生きてるんだ」
フリードは目を細めた。
「そうじゃなくて、目をガンギマらせて鼻息を荒くしたピグミーマーモセットに、顔を何度も叩かれる夢だったよ」
イケメンは頬を撫でた。
私は顔を真っ青にして震えた。
「ピグミーマーモセット……私はピグミーマーモセット……」
私はしゃがみ込んで頭を抱え、虚ろな表情でブツブツとつぶやいた。
「おい、フリード。ツッコにアレ教えてやってくれよ。アタイが苦手なヤツ」
セラは私に視線を落とすと、小さくため息をついた。
「ああ、僕でよければ。ツッコちゃん、局所での闘気循環はできるかい?」
イケメンは私の前にしゃがみ込み、目線を合わせた。
「きょくしょでの……とうきじゅんかん?」
私は猿並みに落ちた知能で言葉を反芻した。
――ピグミーマーモセットのわたしにはむずかしいことばです。わらってくだはい。
「あぁん? ツッコ、おめえにも気付けが必要か? ちょっと強めの」
セラは手を開く。
手のひらから蒼白い闘気があふれ、バチバチと激しい音を立てていた。
私は背筋を伸ばした。
「セラ! それはノーサンキューです! 私が死んじゃいます!」
私は両手を左右に広げ、一気に胸の前で交差させて、ばってんを作った。
「局所での闘気循環。指先でくるくると闘気を回していただろう?」
フリードが私の顔に人差し指を向けた。
そのまま指を上へまっすぐ立てる。
フリードの指先が灰白色にパチパチと光り、ぐるぐると小さな渦を作った。
「あ、コレならできます」
私はうずまきクッキーのことを思い浮かべながら、指先で紫色の闘気を渦巻かせた。




