第67話「堅牢の殲滅士がクソ上司を指導するために星になった話」 1/2
しばらく銃声と金属音と轟音が響いていたが、私は机のうえを片付け終えて居間でパソコンを開いた。
「Bランクになったけど、ダンジョンってどんなところなんだろ……」
私は例のごとくマウスホイールをカリカリと動かし、動画サイトを確認していた。
『高貴なるロクディモント様の偉大なる配信 第9回 灼熱の炎獄洞攻略編』
そんな動画を見つけ、手を止めた。
――ヤバい、またスゴイ動画を見つけてしまったかもしれない……見るのが怖い……
私は恐る恐る動画を再生してみた。
何故か動画はクソ上司のアップから始まった。
「ひぇひぇーッ! 愚民ども! 貴様らは幸運だなぁ! 偉大なるボク、ロクディモント様の配信を見ることができるんだからなぁ!」
相変わらずのキメェ口上から始まり、徐々にズームアウトしていく。
背景にはマグマが流れ、真っ赤になった岩肌が映っていた。そのオレンジ色の輝きがクソ上司の顔を照らしている。
キメェ顔が赤橙色に輝き、ブラッドオレンジクソ上司の完成だった。
キメェことこの上なかった。
私はPCを閉じた。
深呼吸をする。
――こんなヒドイ動画のオープニングを今までに見たことがあっただろうか? いや、ない。うん。ない。
反語を反芻することで、己の胸にこみ上げる反芻してしまいそうな気持ちを何とか踏みとどめた。
私はもう一度PCを開いた。
「今日は相方と一緒にBランクダンジョンの解説攻略をしていくぞぉ!」
クソ上司は手を横に掲げた。
カメラがその手に合わせて動き、汗だくでうなだれる女性を映し出した。
「ロクディモントさん……暑いです……」
女性は息も絶え絶えだった。
顔は真っ赤で、額には前髪が貼り付いている。
「ひぇひぇ!? お前! 段取りは教えただろう? まずはボクの視聴者たちに挨拶をするんだ!」
クソ上司は、へたり込む女性の肩をつかみ、無理やりカメラの方へ向かせた。
「あ……そうでした……私はBランク冒険者のケーネといいます……今日はよろしく……」
女性は挨拶をしながら、その場にへたり込んでしまった。
「ひぇひぇ……全く。ゲラルドがいきなり会社に来なくなったから代わりに面倒を見ることになったが、これしきの気温でへたり込むなんてどうなってるんだ!? ボクの動画で神であるボクを煩わせるんじゃないぞぉ!」
クソ上司は腰に手を当て、大きくため息をついた。
「すみません……どうすればいいですか?」
女性はクソ上司を見上げていた。
目はうつろで、焦点が合っていない。
私は眉をひそめた。
――これ、シャレにならないんじゃない? こんなの配信して大丈夫なの?
私はマウスを動かし、コメント欄を開いた。
名無しさんA:おい、これ大丈夫なのか?
名無しさんB:熱中症になってるよな?
名無しさんC:いや、闘気でカバーすればなんとかなるだろ。Bランクなのにできない資質の問題。
名無しさんD:攻略動画なのに指導する気ないのは非道。
私がコメント欄をスクロールしていると、後ろから居間と廊下をつなぐ襖が開く音が聞こえた。
「スッキリしたデスぅ……」
音の主は満面の笑みを浮かべ、髪に桜の花飾りをつけたシェリーさんだった。
「何を見てるデスか?」
シェリーさんはちょこちょこと歩いてきて、私の背中に覆いかぶさると画面を見つめた。
「えっと……ロクディモントさんの動画を……」
私は動画の内容を説明しようとした。
そのとき。
大きな歯ぎしりが聞こえた。
『アイツ……勝手に配信はするなと教えたはずデスゥ……』
シェリーさんは私からマウスを奪い取ると、ガチガチとクリックして動画を凝視した。




