第64話「堅牢の殲滅士になる前の少女が豚の魔物を打ち抜いた話」2/2
二階に上がると、左手奥の部屋に子供たちとともに駆け込んだ。
全員がいることを確認すると、入口の扉を閉めた。
二階にはバルコニーがあり、そこに複数人の大人たちが杖や弓を構え、大きな声を上げながら交戦していた。
「ガーベルさん、ケーレを頼むデス」
私は握っていた小さな手をガーベルの方へ差し出した。
ガーベルは私の顔と愛銃を交互に見て、小さく口を開けた。
何かを言おうとしたようだが、すぐに口を閉じてうなずき、ケーレの手を握った。
私は愛銃を両手で構え、ゆっくりとバルコニーに向かう。
窓の横に背中をつける。
一度大きく息を吸い、半身になって少しだけ顔を出した。
外を見渡す。
敵の数は五十体程度。
すべて豚の顔をした人型の魔物。オークだ。
小型が三十体、中型が二十体。
中央に大きな個体が二体。
さらにその二体よりも一回り大きな個体が一体。
「クソ! オークキングまで出てきやがった!」
バルコニーにいた男が杖を突き出す。杖の先に真っ赤な炎が集まり、大型の魔物めがけて火球が飛んでいった。
大型の魔物は大きく鼻から息を吐き出した。
火球が横へ弾き飛ばされ、地面にぶつかって爆発する。
オークキングは何事もなかったように中央に陣取り、私たちがいる建物を見つめていた。
「オークキングならトオルが何とかするデス! それよりもほかの魔物を削るデス」
私は窓枠に手をかけ、一気にバルコニーへ飛び出した。
着地と同時に愛銃を持ち上げ、比較的小さなオークの額へ銃口を合わせる。
細く息を吐き出し、引き金を引いた。
ダァンッ!
愛銃が大きく跳ねる。
オークの頭から血が噴き出し、そのまま地面に崩れ落ちた。
「じょ、嬢ちゃん何者だよ……」
隣の男が杖を構えたまま、私へ顔を向けた。
「話はイイから狙うデス!」
私は男を見ることなく愛銃を横へ滑らせ、次のオークへ照準を合わせた。
ダァンッ!
もう一度、肩に衝撃が走る。
オークの額から血が流れ、そのまま前のめりに崩れ落ちた。
「ああ! すまねぇ!」
男はハッと前へ向き直り、杖を両手で握り直した。
杖の先から炎の球が飛び出す。
地面を走っていたオークの胸に直撃し、全身が炎に包まれた。
私は次の標的を探して愛銃を左右へ振る。
ダァンッ!
一体。
銃口をずらす。
ダァンッ!
もう一体。
隣から矢が飛び、別のオークの胸に突き刺さった。
私は魔法使いの男や弓兵たちと一緒に、地上にいるオークたちを少しずつ削っていった。
その合間にバルコニーの手すりから下を覗く。
トオルやメッサー、ほかの男たちも地上で戦いを繰り広げていた。
トオルはオークの棍棒を身をかがめてかわすと、すれ違いざまに包丁を振り抜いた。オークの脇腹から血が噴き出す。
その横ではメッサーが剣で別のオークを受け止め、蹴り飛ばしていた。
トオルとメッサーは二体のオークジェネラルを相手取り、そのうち一体を撃退したところだった。
そのとき。
中央で動かなかったオークキングが、ゆっくりと顔を上げた。
「ブオオオオオオオオッ!」
空気が震える。
私は思わず愛銃を握る手に力を込めた。
オークキングが背中へ腕を伸ばす。
背負っていた大剣を引き抜くと、そのまま力任せに地面へ振り下ろした。
「うわっ!」
足元が大きく揺れ、私はバルコニーの手すりをつかんだ。
次の瞬間。
オークキングが地面を蹴った。
巨体からは想像できない速さでトオルとメッサーとの距離を一気に詰め、大剣を横薙ぎに振り抜く。
「トオル!」
私の口から勝手に声が飛び出した。
トオルが包丁を、メッサーが剣を構える。
二人の武器と大剣が激突した。
一瞬だけ拮抗したように見えた。
「ぐっ!」
二人の体が地面から浮いた。
トオルとメッサーは大きく弾き飛ばされ、そのまま宙を舞った。




