新しい環境
最寄りの駅で郁と別れたゆいは、恐る恐る帰宅。いつも通り?記憶では相当昔、唯一として暮らしていた家の玄関ドアに鍵を挿した。
「お帰り!お姉ちゃん!」
小4の妹、めいが真っしぐらに抱きついてきた。見掛けは記憶のままだったが、唯一がイジメられっ子と知ってからは殆どコミュニケーションが取れていなかったのでスキンシップなんて、めいが幼稚園の頃、4、5年振りだった。
部屋は同じ作りだが、普通に女の子の部屋?小綺麗でぬいぐるみが飾ってあった。本棚に並ぶ、小中の卒アルで過去を確かめる。ゆい自身を含め、今回『本編へ進む』と選択し、性別が変わった人達は、今の性別に合わせて写っている。小学校のアルバムには作文が載っており、唯一がどんな事を書いたか覚えていないが、ゆいの作文は修学旅行の想い出で、仲良しの女子の名前が書かれていた。好きだった娘が仲良しグループにいたのは何となく嬉しく思えた。
本棚には、唯一が読んでいた少年漫画は少女漫画に置き換わり、隠し持っていたちょっとオトナな雑誌は見当たらず、女子高生らしいファッション誌になっている。それらを眺めていると、体験した筈のない、ゆいの記憶が、自分の記憶の様に感じられ、唯一の記憶は、知っている誰かの様に感じる様になって来た。
「あっ、ご飯炊かなきゃ!」
唯一の時には無かったルールだが、帰宅したら、炊飯器をセットするのが、ゆいの担当だった。慌ててキッチンに降りると、
「ねぇお姉ちゃん!お水、この位で大丈夫?」
めいが内釜をテーブルに置いて片目で覗き込んでいた。
「うん、バッチリだよ。」
「じゃあ今日から、めいのお仕事ね!お姉ちゃん、部活とかしても大丈夫だよ。」
「うん、ありがと。遅くなりそうな時にはお願いしようかな、私も中学からだったから、めいはまだしなくても良いよ。」
取り敢えず、サブ担当を任命して妹を納得させ、部屋に戻って記憶の確認をした。
スマホの画像やメールを確認。中高の生活が自分の記憶になって行く。春の体育大会でいい成績を出して、陸上部からスカウトされていた。全くその気が無かったので、家事手伝いを言い訳に断っていた。体育大会の表彰状で両親が大喜びしていたので、めいが気を使ったらしい。
彼氏とか、好きな男子とかの存在は見つからず、主につるんでいるのは、委員長こと秋田留美、ミューミュこと山崎美羽、桃こと小林大空がそら、ペコラこと坂本天飛が天音、イクシーこと生島郁の6人で全員が本編選択。クラスの中心的存在らしい。男子の方も、スープの5人がそんな立ち位置だった。ボルこと斉藤葵が慶喜、トムこと能登睦美が友樹、ブイヤこと虻井弥生が史弥、フカヒレこと深平麗美が令嗣全員帰宅部だが、体育大会とか球技大会等では大活躍していた様だ。
翌日は振替休日だが、情報共有のために、学校で待ち合わせの約束をしている。帰宅した両親と会話して、ゆいとしての振る舞いに違和感がないか確かめてから眠りに着いた。




