新居
面倒事をクリアして、ご機嫌のスープ一行だが、
「宿なんて無いわ、戴冠式でどこも一杯よ。」
委員長のひとことでまた憂鬱に。
「大公家の離れが、あるじゃない。」
委員長は少しズルい顔で笑った。顔を見合わせるゆい達をひと通り眺めてから、
「代案があるわ、ついて来て!」
とゆい達を連れ出した。
やって来たのは、住宅街で貴族と平民が共存している地域だった。貴族は騎士や城勤め、平民は羽振りの良い商人か、上位の冒険者。その中の一軒に到着すると、玄関前に商人風の男性が立っていた。
「お待ちしておりました。この地区で不動産を扱っております、麻生商会でございます。」
状況を飲み込めていないゆいに、委員長は、
「ここ買って、落ち着くと良いわ。さっき手続きした分で賄えるから!」
離れで世話になるよりはずっと気楽だし、宿賃も安いモノでは無いので、住居を構えるのも悪くない。
「ギルドに行くのにも便利だし、馬車も馬も置けるからいいんじやないか?」
乗り気のブイヤが言うと、誰も異議を唱えない。
「では、建物の中もご案内致しますね。」
即、内覧を始めたと思ったら、即決で購入。委員長はソレを見越して居たので、即入居出来る様に家具や生活必需品等々も準備万端。
「明日には使用人にも来てもらうわ、素性は確かな人達だから安心して。」
「いや、家事は自分達で出来るし・・・」
「こんなお屋敷、自分達じゃムリよ。それにね、お金を持っているひとが、お金を使わなきゃ、世の中回らないの。税金だと思って雇うんだよ。」
「そう言われたらね、うん、じゃぁ言う通りにするよ。遠征とかで留守がちになりそうだから、見てもらう人が、居たほうが良いよね。」
ゆいの同意を確かめると、委員長は数枚の書類を出し、不動産屋に契約を促した。契約書にサイン、他の書類は使用人の契約書だった。執事、料理人、メイド3人、庭師の計6人、年齢はまちまちで全員が女性だった。
厨房は既に使える様になっていたし、食材もアイテムバッグに充分入っているが、明日から料理人が来てくれるので、最初から任せる事にして、近くの食堂で夕食にした。普段の食事は、ギルド周辺で済ますので、居酒屋の様な所ばかりだが、住宅街の食堂は、かなり落ち着いていて、酒よりも食事を楽しむ感じだった。
早めに帰宅して、部屋割り。ゆいは4階の東端を選び、隣は一応郁のためにキープ。男子達は3階の西側から埋めていった。8畳くらいの部屋が2つ繋がっていて、手前にはソファーとテーブルでリビング風、奥にはベッド、クローゼット、机と椅子で寝室になっている。以前住んで居たのも、冒険者でパーティーメンバーのプライバシーをキープ出来る事を意識した構造だろう。その部屋が3階と4階に6つずつ有るので、かなりの豪邸である。2階はレストランでも開けそうなキッチンとダイニング、ホテルのロビーの様なリビング、10人くらい入っても余裕なくらいの浴場も完備、それと使用人の部屋。1階の半分はエントランスとパーティーの事務室、応接室、会議室に使えそうな広間、、残り半分は倉庫と馬車庫、厩になっている。確かに、自力で切り盛りするのは大変だろう。
各々部屋で就寝。かなり広すぎて落ち着かないのは全員共通の感想だったが、宿やテントでどこでも寝るのが冒険者の常識なので、そんなに苦にせずぐっすり眠りに着いた。
翌朝、委員長が手配した人達が出勤。執事は峰さん、白髪混じりのおばあちゃん。料理人は希さん、ぽっちゃりのおばちゃん。メイド長は憩さん、いかにもデキる人っぽいおねえさん。それと若いメイドが二人、七星さん、雲雀さん。庭師は、おばさ未満おねえさん以上?ふわっとしたイメージで年齢不詳の若葉さん。七星と雲雀以外は、その道のプロ。簡単に自己紹介を済ますと、既に委員長の指示を受けていて、すぐに仕事に取りかかった。




