指示役確保
イクシーがお楽しみの最中、ゆいは次の手を打っていた。王子推しのスパイの特定は出来ていたので、それぞれのスパイに、襲撃の実行班について別の情報を流した。慰労会を開いた第一王子推しの福住伯爵を最も怪しいと見ているが、証拠が無ければ踏み込めないし、一気に息の根を止めなければ、ホンモノの椿嬢は安心出来ないだろう。どの陣営が反応するのか見極める。
流した情報は、捉えた襲撃実行班の拘留場所。何処が襲われれば、誰が手配したのか絞り込む事が出来る。屋敷内を動き回って、3王子推しそれぞれにニセ情報を掴ませた。
夕方、イクシーからの念話で離れの結界をスカスカに張り直した。離れに戻ると、上機嫌のイクシーと、やっと座っていられる程度にクタクタの5人が待っていた。
『そんなになるまで?今夜も張り込みよ?』
ゆいは、念話を送り、誂う様に笑い掛けた。
『ゴメンゴメン、アタシが誘ったの。』
『フフフ、知ってる。あんね、ニセ情報はちゃんと流したから、張り込みは打ち合わせ通りでお願いね。』
と、5人をヒール。シャキッとして護衛の控室に戻って行った。
『ゆいのヒールは、全身を元気に出来るよね、アタシは、一部だけ。』
と、満足気に大欠伸。
『もう、結界戻したんだから、椿嬢に戻って!』
軽く咳払いをして、姿勢を正した。
その日の深夜、騎士団の詰所が一箇所襲撃に会った。交番の様な施設で拘留場所もある。そこは第二王子派のスパイに、襲撃実行班を拘留しているとニセ情報を流した場所だった。詰所ごと焼き払って中に居る人は即死するに充分な炎魔法が撃ち込まれた。
襲撃は想定していたので、中ではフカヒレが結界でガード、死体を確認に来た男を捉えた。
その頃、清田伯爵邸では、
「捕まった役立たずが、余計な事を話してはコッチに飛び火して来かねないからな、チンピラに任してまたしくじられちゃたまらん、アイツなら一発で片付けて来るだろう。」
黒幕は、第二王子推しの清田伯爵。普段から、裏の仕事を任せている冒険者を差し向けていた。騎士達が束になっても敵わない実力で、都合が悪くなれば圧倒的魔力差で何とでも出来るので、大船に乗った気分で報告を待っていた。
秘密の裏口に反応があった。
「少し遅かったじゃないか、何かあったのか?」
内側の扉を開けると、立っていたのは、いつもの冒険者ではなく、騎士団長だった。
「この男の事で伺いたい。」
団長は、一枚の人相書きを突き出した。
「ふん、そんな冒険者、伯爵家に関わりがある筈ないであろう。」
余裕で突き返したが、
「この男が、冒険者とは一言も話していないはずだが?」
「いや、そ、それは、そうだ!その面構え、如何にも冒険者って感じじゃないか、それで、その・・・」
何とか取り繕ろうとしていたが、あっという間に騎士達がなだれ込んで、伯爵を筆頭に第二王子派の主要メンバーをアッサリ拘束した。
第二王子派の取り調べが行なわれている中、念のため他の派閥からの襲撃に備える。伯爵達が捕まったその日の夜、メイドに成りすまして、毒を盛ろうとした女を捕らえ、第三王子派の刺客であることが判明。
その後、日が変わった深夜、巨大な炎魔法の火の玉が離れを襲った。並の建物であれば、中に居る人は、骨を拾うのも困難なほどに焼き尽くされる威力だが、ゆいの結界はびくともしなかった。しかも、魔力の残滓をハッキリと読み取る事に成功。翌日には、第一王子直属の護衛騎士であるとこが判明した。
結局、王子達を推す3派は、各々で暗殺を企てており、幹部クラスは全て拘束、王子自身は直接関与していなかったとして、名目上はお咎め無し。政治家の『秘書がやりました』っぽい結末で騒ぎを収めた。




