襲撃未遂
スカスカの結界で襲撃を待つ。3日目の夜、動きがあった。椿嬢の護衛団を労う宴会が催された。
「堅苦しい屋敷より、華やかな街で羽根を伸ばすのがよろしいでしょう。」
主催者は、第一王子推しの福住公爵の関係者で、王都の警備を担っている者だった。
想定内なので、椿嬢は大公家の護衛に任せ、心配はしていないスタンスで、誘われるがままに飲み食い、夜が更けてくると、酌をしていた女性達は本来の職場である、娼館に誘った。
朝まで屋敷を離れる事は、本来の護衛であればあり得ない事だが、イクシーにとっては待ちに待った返り討ちのチャンス。ホンモノのメイド達を結界でしっかり護って、刺客を待った。
深夜、結界に干渉する魔力をゆいが検知した。簡単な術式なので、プロの刺客なら然程困らない。ただ、魔力を使わざるを得ないので魔力の残滓は残ってしまう。誰が結界を破ったのかが把握出来るので、逃がした場合でも、黒幕に繋がる証拠になる。
刺客は5人。離れを囲む生け垣に沿って張られた結界。破って侵入した。建物迄は結界で迷路ななっていて、行ったり来たり庭を彷徨う。その間に鑑定する。冒険者崩れで典型的な悪人らしい。殺人、誘拐、人身売買等々、ワルの見本のような連中だった。小一時間も彷徨うと、流石に結界に嵌った事に気付く。
「伯爵の話じゃ、離れの護衛は全員娼館でお楽しみ中だろ?メイドの中に、結界を操るヤツでも居たのか?」
「このままじゃ、母屋の護衛か来るかも知れないし、朝まで出られなかったらヤバいだろ!」
ゆいは、動揺に乗じて、追跡用の魔石をポケットに滑り込ませた。東の空が白んで来た頃、迷路で誘導して、5人バラバラにして、実行班の中でリーダーらしき男は拘束、他を解放した。
その頃娼館では、永く引き留める様に相場の3倍の花代が支払われていたので、濃厚なサービスが繰り広げらていた。ホンモノの護衛達は、酔った勢いと刺激的な誘惑ですっかり我を忘れて快楽を貪った。
『ここで俺達だけ断ったら、敵さん警戒するから、一緒に楽しんでおこう。』
ミンシルは他のメンバーに念話を送った。
『了解、作戦だからしゃあないな。』
『イクシーがアレだからな、久し振りだな!』
『ゆいから連絡がある筈だから、気が付かない程には熱中するなよ。』
『そうだな、程々にしておこう。』
一応理性を保ったまま、実質他の護衛達と同様に楽しむ事にした。
3回戦を熟し、休憩中のミンシルは、念話で状況確認。他も同じ様な状況だった。帰るタイミングを相談していると、
『ソロソロ気が済んだ?』
イクシーからの念話だった。
『見透かされてる?まさかソレも職業スキル?』
ブイヤが反応すると、
『いや、いつものパターンなら、今頃かなって。刺客が5人来てて、ゆいが結界でイジメてるの。日の出前に解放するから、アジト突き止めて!追跡用の魔石付けとくから。』
『『『『『了解!』』』』』
朝の延長戦は諦めて、5人は大公邸に向かった。




