おぼっちゃまの行く末
男爵は、経理の仕事を勧めたが、計算はおろか、読み書きすらままならないおぼっちゃまは、手も足も出ない。当然ながら掃除も洗濯もしたことは無い。
「では、厩の方を手伝って貰いましょう。」
再び家を出て、少し離れた厩に向かった。
「おい、和也、新入りに仕事を説明しておくれ。」
呼ばれた少年は十歳を少し過ぎたくらいだろうか?
「はい、旦那様!」
ハキハキと対応し、
「じゃあ、そこの桶を持って付いて来い。」
和也の命令口調におぼっちゃまは、
「誰に向かってそんな口叩きやがる!」
と、キレるが、
「先輩の言う事を聞いて、早く仕事を覚えなさい。」
男爵が諫めた。
「ふざけんなよ、こんな下賤な仕事なんかやってたまるか!」
「では、仕方がありませんね。ゆい様、裕太郎様は、当家ではお預かり出来かねます。」
「承知致しました。では子爵様よりお預かりしました弔慰金です。」
ズッシリと重い革袋を男爵に渡した。
ゆい達は市街地迄おぼっちゃまを連れて行き、ギルドのカウンターに立った。子爵の署名入りの書類を見せると、応接室に通された。
少し待つと、大きな革袋と書類、何やら魔具の入っていそうな仰々しい箱を持ったギルマスだろうか?身なりの整った年配の男性が現れた。
「ギルドマスターの大野です。先日は、当ギルドの冒険者達を救って頂き、誠に有難うございました。」
先ずはゆい達に深々と頭を下げた。
「コチラが、例の元御令息ですな?」
ギルマスは視線だけで確認し、ゆいが頷くと、
「ここにサインしなさい。」
「ふん!ギルマス風情が子爵家長男になんて態度だ!不敬罪だぞ!」
「子爵家から、勘当したと通達されている。今のお前は職無しの平民だ、サッサとサインしなさい。」
納得しない元おぼっちゃまにミンシルが説明をした。無理に攻めた30階層で命を落としてしまった護衛騎士の家族の為、管理していた男爵領を、騎士の父に譲り、爵位を与え、騎士の子供達に継承出来るように配慮されたいた。裕太郎が男爵家で働き、まともな人間になれたなら、それ相応の婿入り先を探す、セカンドチャンスを与えられていたが、それも潰してしまったので、ギルドで借金、返済出来なければ奴隷落ちの崖っぷちに立たされている。
裕太郎は、Cランク冒険者として登録されているので、MAXの金貨300を借入れ、スープの救出に対する謝礼に充てる。もしも男爵家で働く事になっていたら、子爵から預かっていた革袋が、スープの謝礼金となり、弔慰金は自分で稼いで返していく思惑だった。
子爵は息子の冒険者のしての実力をランク通りに見積もり、金貨300のペナルティは、少々甘過ぎとさえ考えていたが、実際は強力な助っ人を雇って実績とした、カネで買ったCランク。金貨に届く依頼はかなり難しい。剣の手合せでは負け知らず、本人は剣に自信を持っているが、勝たなければ機嫌が悪いので、相手が上手く負けていたので、この自信も妄想に過ぎないのだが、借金返済が滞った時点で効力を発する隷属の首輪を付けて、依頼のボードに向かった。
この後、月に金貨10枚の36回払いで返済する筈だが、ひと月目は防具を売ってカネを作り、次の月は剣、その次には宝石の類を売り払い、4ヶ月目にはもう売るものが無く、アッサリと奴隷落ち。その間、冒険者としての収入はゼロだった。




