紅の調べ
おぼっちゃまと別れたスープ一行は、もう一つの神器、『紅の調べ』があるかも知れない未踏破ダンジョンに向かった。
今回は僻地のダンジョンらしく貸切状態だった。管理人の様な人は居らず、入窟届けに、日付とパーティー名、人数を記入して手続きは完了。早速潜り始めた。
このダンジョンの魔物は蟻。浅い層では、ただ数が多いのが面倒だが、火炎放射で焼き払うと、難無く進む事が出来た。深くなるにつれ大型化、25階層迄潜ると、大型犬程の大きさになり、流石にただダラダラと放射する炎では倒せなくなって来た。ただ、数が減ったので、火球を飛ばして個別に倒して行った。
「次の階層を諦めて、子爵の次男殿が引き返したんだよな?」
トムは、次男の護衛を請け負っていた冒険者から聞いていた情報を確認して情報を共有した。26階層の蟻は羽蟻も増え、かなり高速で飛ぶ。罠を掘るヤツも居て、25階層とは別格との事。
上空の羽蟻と、足元の罠を気にするので、落ち着かなかったが、羽蟻は火炎放射で羽根を焼くとバタバタと墜落。落ちてしまうと、戦闘意欲は無くなり、火球の餌食。潜る蟻と罠は、鑑定で把握してしまえば、然程苦労はしなかった。
40階層からは、幻覚や魔法攻撃が加わり、攻略の速度は落ちたが、着実に魔物を倒して50階層。他の10倍もありそうな巨大な蟻が現れた。女王蟻と思われる。周りの蟻達が一斉に群がる。これまでに倒してきた奴らと大差ないので、個々の脅威は気にならないが、数が多いので、結界でガードし、その中から火炎放射や火球で削っていこうと思ったが、結界は張れないし、炎はマッチの火程度しか燃えず瞬時に消えてしまう、魔力が殆ど使え無い。物理攻撃に頼らざるを得ないが、武器に纏わせてあった魔法も、筋力アップの魔法も効果が消えている。武器の性能もそれを扱う能力も充分なので、ドンドン蟻達の死骸が増えていくが、一向に減った気がしない。魔力封じの元が解れば解消出来る筈だが、鑑定も出来ない。地道に減らしていった。
鬱陶し羽蟻をミンシルが弓で墜とす。普段は魔力の矢を射るので、ほぼ無尽蔵だが、物理の矢には限界がある。上からの攻撃に対する牽制ていどの効果しかない。
「あっ!」
近寄った羽蟻を大きく外してしまったが、追うようにして矢を受けて墜ちた。矢の方向は女王蟻。試しに女王蟻を狙うと、羽蟻が群がってガード。
「それならコレは?」
イクシーが手榴弾を女王蟻に向けて投げると、蟻達は囲んでガード。持っていた4発を連続で投げ、女王蟻までの道を作った。勿論、蟻達は塞ごうとするがゆいの脚力はそれを勝り、女王蟻に到達。いっきに駆け上がり、女王蟻の触覚を斬り落とすと、筋力アップが復活。雷土を落として女王蟻を仕留めた。
魔力が復活すればカンタンに制圧。一掃したが、孵化した蟻が加勢して来るので巣ごと焼き払ってようやくゲームセット。女王蟻の魔石を回収すると、下の階層に降りるスロープが現れた。
スロープを降りると、先頭を歩いていたトムは、
「ブイヤの出番だよ。」
カラフルな壁に突き当って先頭を交代した。
ブイヤは前回同様、ブツブツと言いながらマスに鍵を挿して行き、全てが挿し止まれると、壁は消えて無くなった。
壁の向こうには、赤い棒状の物。近くに寄って見ると、横笛だった。前回同様、ゆいがサクッと手にして鑑定。
「えっ?紅の調べ・其の参?参って事はその壱、其の弐はありそうだよね?しかも名前しか解らないし。」
少しガッカリした口調のゆいだったが、
「取り敢えず、お宝ゲットだね!紅の調べは幾つかの楽器でワンセットなんだろうな、壱と弐はあるでしょ?四以降もあるかもだよね!次だ楽しみだよ。」
ミンシルは、目的が見つかり嬉しそうだった。
お宝ゲットの可能性があるダンジョンは、もう近隣には無いので、一旦王都に戻る事にした。




