子爵家の事情
前後をスープメンバーが堅め、おぼっちゃまは元々雇われていたトップチームが護り、危なげなく20階層。放置していたテントを片付け、更に登る、10階層で1泊。翌朝そこも片付け、夕方には地上に到着した。
「お支払い等もございます、当家にお立ち寄り頂けませんか?」
執事が、格上貴族を相手にするような振る舞いでゆいを招いた。
行きがかり上、断り切れずに子爵邸に同行する。真っ直ぐ大広間に通され帰還パーティーが開催された。
上座には年配の御夫婦、子爵夫妻だろう。その隣にはおぼっちゃまと同世代の男女、弟と妹か?
「では、ダンジョン攻略の帰還パーティーを始める。その前に、犠牲になった、騎士の冥福を祈り、黙祷を捧げる、一同黙祷!」
暫しの沈黙の後、
「愚息を連れ帰ってくれて、感謝申し上げる、今宵は楽しんでくれ給え。では乾杯!」
宴か始まるとおぼっちゃまは上座に歩み寄り、武勇伝を始めた。身振り手振りを交えた熱弁がヒートアップ、
「父上、コイツ等は25階層で逃げ出したんですよね!ボクは30階層まで行きました、コレで次期当主は決定ですよね!」
「まぁ、落ち着いて席に着きなさい。」
興冷めだが仕方が無い。メイドが引いた椅子の位置に違和感を覚えた。
いつもは中央に父母、左に自分、その左が妹、反対側に弟だが、中央に弟、左に父母、その左が自分、反対側に妹。更に弟と妹の隣が空席になっていた。祖父母が生きていた頃や王族の来訪時は、真ん中が代わっていたが、こんなパターンは見たことが無い。
子爵が、立ち上がり、
「さて、この度は次期当主を決定するに当たり、ご協力感謝する。発表の前に、めでたい発表がある。」
会場が暗転、ドアが開くと、スポットライトがドレス姿の女性を捉えた。
「宮の森公爵家長女、雅殿。この度、我が次男、進次郎と婚姻し、進次郎が公爵家を継ぐ事となった。」
拍手喝采の中、進次郎がドアまで迎えに行き、上座中央にエスコートした。
再び真っ暗になると、スポットライトは1人の青年を捉えた。
「界川子爵家次男、聡太殿。この度、我が長女薫と婚姻し、山の手子爵家を継ぐ事となった。発表は以上。」
聡太が上座に着くと再び拍手が巻き起こった。
青ざめたおぼっちゃまは、
「なぜ薫の婿に継がせるのですか?ダンジョンだってボクが1番深いところまで行ったんですよ!」
「他の2人は、先遣隊の意見を採り入れて犠牲者無しでもどってこれだか、お前はどうだ?聞く耳を持たずに、護衛騎士を殺し、偶々居合わせた冒険者に助けてもらえなければ、全滅してた程だったんだろう?そんなヤツには子爵は務まらない。お前は少し、家から離れてみなさい。北部の男爵領は解るな?そこで勉強して来なさい。」
おぼっちゃま以外は、最高の祝賀ムードで宴は進み、大盛況のままお開きなった。
跡取り不在で山の手家で管理している男爵領。そこに島流しで、子爵から男爵に降格。腹立たしいが、妹婿の家臣になるよりはましと、父の意見に従った。
3日間で準備、スープが目指す次のダンジョンがある地域なので、子爵からの依頼で、おぼっちゃまの護衛を引き受けた。
2日で到着。不在の筈の男爵がおぼっちゃまを迎えた。
「裕太郎様、遠い所ご足労お疲れ様でした。お屋敷のようには生きませんが、どうかお寛ぎ下さいませ。」
「お前、誰だ?」
「はい、この度、男爵を拝命致しました、富岡でございます。」
「俺様が男爵じゃ無いのか?」
「旦那様からは、何か仕事を教えるよう、仰せつかりました。どのようなお仕事がお望みでしょう?」
ただ、踏ん反り返って過ごしていたおぼっちゃま・裕太郎は、どんな仕事が有るのかさえ解らず、取り敢えず、
「騎士でもやるか。」
と、応えると、
「騎士ならば、試験を受けて下さい、この老いぼれに一太刀入れたら合格です。」
富岡は裕太郎を中庭に案内し木剣を渡した。
「では、お手並み拝見致します。」
普段、護衛騎士達との手合わせでは無双していた裕太郎は、渾身の一撃を最上段から振り下ろした。男爵は軽く受け流すと半歩引いて、つんのめった裕太郎の後から首筋をトンと叩いた。真剣ならば首が落ちていただろう。
「参りました。」
と、言うべき所、
「ふん、まだまだだ!」
と猛ダッシュで突いたが、木剣は宙を舞い、男爵の剣は再び首筋を捉えた。
「ちょっと油断しただけだ、次は本気出すぞ!」
と、木剣を拾ったが、
「油断をするような方には、騎士は務まりません。何か別の仕事を探しましょう。」
不満たっぷりで反論しようとする裕太郎を男爵はみ無視して室内に招き入れた。




