おぼっちゃま救出
おぼっちゃまのテントに向かう途中、
「実は、私達の護衛で中継キャンプに行った冒険者の方が途中で魔物を足留めして、私達を逃がしてくれたんです。」
詳しく聞くとすぐ上の階層だった。
トム、ブイヤ、ボル、フカヒレがおぼっちゃまへの配送を護衛、ゆい、ミンシル、イクシーは冒険者の救出に向かう事にした。
22階層では、イクシーが火球で魔物を蹴散らした。護衛の冒険者は3人、周囲を鑑定すると、結界が見つかって強制解除。中には、瀕死の冒険者達。幸い、3人とも息はあった。歩ける程度にヒールして、23階層に戻る。時より現れる魔物も気にせずに突破して行った。
「・・・なんだ、男か。」
助けたポーターを送り届けると、おぼっちゃまは、ため息交じりで不快オーラを撒き散らした。想定通りの反応で、
「地上まで護衛として雇ってやる、幾ら欲しい?」
ブイヤは、淡々と、
「1人金貨500枚なら引き受けましょう。」
生命に関わる危険からの救出、護衛であれば、相場通りの金額だが、
「そんなにか!ふざけるな!」
総勢65人の大所帯、32500枚は、おぼっちゃまと言えど、右から左に動かせる額ではない。
「では、交渉決裂ですね。失礼します。」
「いや、待て!」
「え?ポーター救出のお礼ですか?お気持ちで結構ですよ。」
「うるさい!そんな依頼した覚え無いからな。守銭奴め!」
「お待ち下さい!」
冒険者が割って入った。
「若さん、そりゃ無いな。マナー違反だぜダンジョンの。」
振り返り、
「ポーターは、俺達が雇ってる。今回、この食糧が無ければ、全滅は免れ無いだろう。この依頼失敗でコレが全部だ、受け取ってくれ。」
ブイヤはソレを遮り、
「おぼっちゃまに、立ち位置を理解して欲しいだけなんだ。今、カンタンに助かったら、また同じ過ちを繰り返すぞ!」
冒険者は、コッソリ魔具を渡した、
『聴こえますか?』
『あ、はい。』
密談の魔具だった。
『この会話は、我々2人にしか聴こえません・・・』
おぼっちゃまの状況について話し始めた。
ダンジョン攻略は後継者争いのミッションで、ライバルの弟と妹は同程度のダンジョンを25階層まで進んで、30階層を偵察した段階で引き上げている。ここをクリアして神器を手に入れれば後継者争いは、かなり優勢になるだろう。
『で、子爵様にはご贔屓にしてもらってんで若さんに付いたんだけどな、もう義理は果たした。次は姫さんに付くから、こんな横柄なヤツは今回限りっす!』
そんなやり取りをしていると、ゆい達が、助けた冒険者を送ってやって来た。面倒な事になるのは目に見えているので、おぼっちゃまのテントには近寄らなかった。が、
「女の気配だな、直ぐに呼んで来い!」
おぼっちゃまは護衛騎士達を追い出して、自らもテントを飛び出した。
直ぐにイクシーを見つけ、
「おい、ムスメ!もう1人はどうした?」
イクシーは無視して背中を向けた。怒ったおぼっちゃまが、肩に手を掛けようとすると?グシャリと地面に貼り付けられた。
「何をするんだ!」
「救出の時の契約が働いたんだよ、アタシ達に関わらなきゃ良いんだ。」
「ちゃんと撤退してるだろ、良いから落ち着いて、話しを聞け!お前等、二人とも妾にしてやる、そうしたら子爵家の一員だぞ、良い話しじゃないか!」
「興味ないわ。」
サクッと立ち去ろうとすると、
「そのムスメ、取り押さえろ!」
護衛騎士達が躊躇っていると、スッと人影が現れた。結界で隠れていたゆいだった。
「ハイ、そこまで。若様、取り敢えずテントに戻りましょう。」
おぼっちゃまの反応は気にせず、テントに進んだ。
おぼっちゃまが、イクシーを口説いていた少しの間に、ブイヤと作戦会議して方針を決めていた。
テントに着くと、冒険者のリーダーと握手、リーダーからおぼっちゃまに説明が始まった。
雇われ冒険者パーティーメンバーがスープに臨時メンバーとして加入。パーティーメンバーなので、ヒールは無償で全快。おぼっちゃま本人、子爵家の護衛騎士と使用人の計7人を金貨3500枚で地上に送り届ける事を提案した。おぼっちゃまは反発したが、執事がなだめ契約成立、早速テントを畳んだ。




