カマキリ
現在、30階層には子爵家の子息とその護衛騎士が4人、雇われ冒険者が16人の計21人が潜って居る。スープが降りた時には視界に人間は居らず、岩の隙間をカマキリ達が見張っている感じだった。鑑定すると、隙間に数人隠れて居る。そんな所が4ヶ所。チカラ技で倒す事も可能だが、隠れて居る人達の安全を考慮して、場所を移しての闘いに持っていきたい。作戦を練っていると、
「奥の草地でなんにもしてないヤツ、他よりデカいよね?」
イクシーが他と見比べながら呟く。
皆んなで確認、絵描きさんが、筆で大きさを測る様なポーズでトムは、「離れていても解る位の差が有るね?女王カマキリとか?」
「アリやハチじゃないから女王じゃ無いよ、でもメスなのは間違い無い!あの近くまで連れてって!」
「もしかして、この前の盗賊みたいなの考えてる?」
イクシーはコクリと頷いた。
ゆいとイクシーは結界で隠れながら、岩地を通過。隙間を狙っているオスは13匹。草地に到着してメスから10メーターに接近した、
「魔力ブーストするね!」
ゆいはイクシーの肩に手を置いて魔力を込めた。イクシーは、大きく息を吸うと、フゥーっと息を吹き掛けた。
メスカマキリは4本の脚で立ち上がり、鎌を天に翳す。羽根をバタつかせると、甘い香りが漂って来た。岩地の隙間に避難して様子を覗うと、オス達はメスを目掛けて群がった。交尾を試みるが、他のオスに邪魔され胸と腹で両断された。
オス達の闘いが繰り広げられているうちに、隙間に隠れていた人達を救出。護衛の騎士3人を除いて確保し、29階層へ逃がした。
3時間程続いた、交尾権争奪戦に勝利したオスがメスに乗る。色気も何もない行為が済むと、メスはオスを食い散らかした。
メスが産卵の為、山に登る。深く切り立った谷間に泡の様な卵を産みつける。産卵に集中して全くのノーガード、ゆいは、雷を強めに落として一発KO。胸を捌いて魔石を取り出す。男子がオスの魔石を回収している間、ゆい達は護衛騎士の捜索。1人は重体でヒール出来たが、残念ながらあとの2人は遺体での回収となった。
遺体を届けにスープも29階層へ。遺体を安置、執事に救出費を請求した。
「俺様の騎士を2人も死なせて、金を取るっていうのか!不敬罪で投獄するぞ!」
命からがら帰って来た若様が、ゆいを睨みつけて胸ぐらを掴もつうとした。が、触れる前に押し潰されるように地面に貼り付いた。せめて、スカートの中でも覗こうかと上を向こうとしたが、全身が抑えつけられる様で身動き取れなくなっていた。
「あと、俺やっとくから、ゆいはヒールに専念して!」
ミンシルは、ゆいから契約書を受け取り、地面に貼り付いたままの若様に契約内容を説明した。
「で、契約不履行の場合、こうなるって事。ご理解頂けました?」
ただ唸るだけの若様に、
「ハイなら1回、イイエなら2回瞬きして!」
若様が、ゆっくりと1回瞬くと、抑えつけられていたチカラがスッと消えていった。
全員を歩ける程度まで回復させると、冒険者達はそれぞれ有り金全部をゆいに差し出した。
「いや、若様から貰うから、要りませんよ。」
「あのままじゃ、全滅間違いなしだったからな、冒険者としては当たり前の支払いだ、受け取ってくれ。」
ゆいはそれでも断ろうとしたが、
「じゃあ、1枚ずつ貰うわ!」
イクシーは、革袋から、金貨だったり銅貨だったり、ランダムに1枚ずつ取って革袋を放り返した。雇われ冒険者達も、ソコを落とし所に、革袋を受け取った。
長居しては、また若様が面倒を起こしそうなので、スープは早々に下へ向かう。
「それでは、帰り道お気を付けて。」
若様に挨拶すると、
「待て!お前等、俺様が雇ってやる、日当は金貨3枚だ。最下層までクリアしたら、賞金も弾むぞ!」
ゆいは返事もせずに振り返り歩き出した。
「こら、お前、無視するのか!・・・んぐっ!!」
再び、地面に貼り付いていた。




