鬼人の再々出発
結果的にカヒサーのクーデターを潰す立役者になった生島は、真っ暗で何も聴こえ無い空間に居た。
「ん、また死んだんのか?」
様子を探ると、初めに転移した時の様に何も感じ無い。視覚も聴覚でも無く何か分からない3度目の感覚が、直接脳に送り込まれたように情報が流れ込んだ。
画面の様な感覚で右上には、
『チュートリアル完了31人、チュートリアル中0人、案内中1人、案内待ち0人』
画面が変わると、
『種族は鬼人です。』
「ま、しゃあないな。」
次へ、を選択。
『性別は女性です。』
「え?選べ無いのか?!」
次へ、を選択。
『初期装備は選択できません。』
「なんにもねぇって?!ざけんなよ!」
と、言いながらも他に選択肢は無いので次へ。
『チュートリアル期間を選んで下さい。』
「かったるい事、してられっかよ!」
と、1時間を選択。
『設定を受け付けました、鬼人の女性、初期装備無し、1時間のチュートリアルとなります。ステータスを確認して下さい。』
種族 鬼人
性別 女性
年齢 17歳
レベル 1
スキル 無し
経過日数 0/1
3度目のチュートリアルをスタートした。1、2回目と同様、世界の概要や通貨、言語の説明を受け、ステータスを確認すると、
種族 鬼人
性別 女性
年齢 17歳
レベル 1
スキル 生活魔法F
経過日数 (1/1)
『チュートリアルが完了しました、お疲れ様でした。』
と感じ、一気に明るくなった。
視覚がハッキリすると、1、2回目と同じ、森の中の空きスペース。あたりを見渡しても誰も居なかった。着ているのは矢の雨を浴びて穴だらけのドレス。身体は健康の様なので北に向かって、歩いて見た。
途中で冒険者に出くわす、
「こんな所に女の子独りで何ししてるんだ?」
「異なる世界から来て、どうして良いか解らないの。」
「そうか、俺達と一緒にくるか?カヒサーって街に行くんだ。」
「何をしに?」
「カヒサーの領主様が王国から独立するらしいんだ、そこの傭兵になって、どさくさ紛れで騎士団に入ろうと思って!」
「じゃ、一緒に行く!」
男ばかりの3人組は『北風の爪』というパーティーでそれほど良い装備では無い。取り敢えず馬車には乗っているが、いつ壊れても不思議じゃない。整備の行き届いていない凸凹道をガタガタと走った。
生島は全くの手ぶらだったが、食糧は分け与えられ、
「亡くなったメンバーの物だ、今の穴だらけよりはマシじゃないか?」
渡されたショルダーバッグは結構な容量があるようで、レディースの衣服や靴、小ぶりの武器や装備品が入っていて、少し大き過ぎるが、早速着替えて穴だらけのドレスも卒業出来た。泊まりはテントで雑魚寝だったが、見返りに何かを求められる事は無かった。
「俺等はそこのダンジョンでちょっと稼いでくる、イクシーは馬車で待っててくれ。」
路銀と食材の調達との事。
待っている間、食事の支度をしようと、荷台を漁ってみる。
「ん?これって?」
生島の乏しい知識でも解る、痺れ薬と、奴隷の首輪を見つけた。
「畜生、善人ヅラしやがって!俺を売るつもりだな。フン、返り討ちにしてやる!」
その頃、ダンジョンの中では、
「あのイクシーって娘、異なる世界から来たって言ってたけど、言葉は通じるし、ボロボロだけど、あの服、どう見たってお貴族様だよな?」
「ああ、俺もヘンだと思ってたんだ。何か曰く付きのお姫様だろう。親元に送り届けたら、ご褒美貰えるんじゃねぇか?」
「ま、そうじゃなくても、カヒサーの街までは送ってやろう。アイツが逝っちまって、男ばかりじゃむさ苦しいしな。」
手頃な獲物を狩って、地上を目指した。
馬車の隣にテントを張り、竈を作って待っていた生島は、スープに痺れ薬を仕込んでいた。
「地上に戻って、早々にメシにありつけるなんて、有難ぇな!」
もりもり喰いつく男達を横目に、解毒剤入りのスープで付き合った。
和やかに食事を終え、テントに向かおうと立ち上がる、いや、立ち上がろうとした3人は、足がガクガクして全くチカラが入らない。
「ンガンガン、ンン・・・」
声も出せなかった。
「こんな物でアタシを売り飛ばそうって、お見通しなんだよ!」
奴隷の首輪を投げ付けた。
否定しようと声を上げるが言葉にならない。呼吸もままならなくなってくると、
「ま、色々貰ったから、そろそろラクに逝かせてあげる!」
中型程度の魔物なら即死する毒を鏃に塗って3人の首筋を突いた。
食糧と金目の物、扱えそうな武器を選んで、残りは藪に捨てる。死体もそうしたかったが、腕力が足りず、路肩に寄せて、枝葉で覆っておいた。
テントで一泊して、馬車でカヒサーを目指す。以前行商人から奪った馬使役のスキルは無くなっていたが、その時の経験が役に立ったようで、何とか馬を走らせる事が出来た。
1回目で、奴隷商の馬車から逃げ出した辺りまで来て、宿屋に入った。目的地を告げると、受付けのお婆さんは、
「嬢ちゃん、止めときな。カヒサーは王国に逆らって独立したらしいんだ、今は混乱して居るから近寄らん方が良い。」
と、アドバイス。目的も無く、急ぎもしない旅だし、路銀に心配は無いので、しばらく留まる事にした。
部屋でのんびりしていると、
『王国軍が敗北しました、第二チュートリアル失敗です。』
と、脳内にアナウンスが流れ込んだ。




