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漆黒の剣

 スープが王都に向かっている頃、城の地下深くに厳重に護られた特殊倉庫には、職員になりすました絹子が手下を伴って入り込んでいた。

「面倒な奴等は暫くは戻って来ないからな、今のうちに頂いちゃいましょね。さ、アレだよ。」

真っ黒な大剣を指差した。

 お供の大男は、繋いであった鎖を引き千切り、剣を台座から外すと、バタリを倒れ、剣は床に転がった。絹子は大男を覗き込むと、

「やっぱり死んじゃうんだね、じゃ、あたし1人で帰るよ。」

 斜め掛けにしたポシェットから真っ黒な大剣を出すと、台座に納め、落ちている剣を拾ってポシェットにしまった。

「これでよしっと!」

 廊下に出て、結界で身を隠す。近衛兵達が、倉庫に入ったのを確認して出口に向かった。

 結界をすり抜け、城を出る。厳戒体制になった近衛兵達の目を盗んで転移魔法。難なく王都を脱出した。


「暗黒邪剣は無事です、結界の罠で侵入者は撃退済みです!」

特殊倉庫に駆け付けた近衛兵は大男の遺体を回収し、剣を護る結界と鎖を元通りに直し、王に報告した。


 邪剣を手に入れた絹子は、南部のティダコッパに向かった。王都を離れると、自らのアジトに張った結界を解いて、自警団や冒険者を誘い込んだ。適当に荷物を残しておき、意味有りげな文書も、見つかりそうな所に隠してある。

 長年見つけられなかったシルクのアジトは、徹底的に調べ上げられる事になるが、絹子としては想定通り。アジトに世間の目が釘付けになっている内に、ティダコッパに到着し、

「ここの手練れも空き家の内覧会かい?」

アジト調査に主力を派遣して手薄になっていた、南部の要の星砦城(せいさいじょう)をあっさり占拠した。


 ティダコッパの辺境伯を拉致、呪術で操って、海岸沿いに南を向いて設置してあったバリスタを内陸に移設、北に向きを変えた。


 王国南端に位置するティダコッパは、更に南に位置する、ウーノンテ帝国からの侵略に備えた軍事都市で星砦城は、王国最強の軍事力を誇る。

 帝国は、50程の小国を従え、王国もかつては従国たったが、300年程前に独立している。ただ帝国としては、独立を認めて居らず、数年から数十年のペースで奪還しようと攻め入って来ている。


 絹子は、辺境伯の軍を自らの手中に納めると、

「ティダコッパは、シッツーマ国として、王国から独立する。」

辺境伯を国王に祭り上げた。

 敵対していた帝国の従国となり、軍を招き入れる。荒れる海峡を越えるため、一度に大軍が渡る事は無いが、徐々に拡充していった。


 シルクのアジト調査に集中していた王国だったが、シッツーマの独立宣言でようやく、ティダコッパの陥落に気が付いた。

 シッツーマとは、コンサッド王国が独立する前、帝国の従国だった時代の国名、シルクはシッツーマの残党と言う説もあり、王国で『暗黒邪剣』と呼んで封印していた剣は元は、『漆黒の剣』という帝国が従国の王に与える物、支配の象徴でもあり、莫大な魔力を有する魔道具でもある。

 南部には、シッツーマ時代の支配階級の子孫も多く、帝国と交易している商人もいる。現在では王国南端の地方都市に過ぎないが、かつてはシッツーマの玄関として栄えていた。先祖の栄光に、憧れる者も少なく無い。

 ティダコッパ()辺境伯が、漆黒の剣を振り掲げ、

「これぞ、皇帝陛下から賜りし宝剣、漆黒の剣である!帝国の臣民として、逆賊コンサッドを討ち滅ぼし、先人のこの地を取り戻そうではないか!」

と演説、シルクのメンバーがサクラとなって歓声を挙げると、民衆もその気になり、絹子はティダコッパを手中に収めた。


 モノの数日で、街を陥とした絹子の手腕は、帝国時代からの古参貴族、最近チカラ付けてきた新興貴族達の目に止まった。彼らはシッツーマと共に帝国派を結成。王国に忠誠を誓う、現在既得権益を握っている貴族達の王国派と内戦が勃発した。

 

 全体的に、王国派が優勢だが、倒し切るには至らず、帝国派は戦力を削られながらも、南に逃げ星砦城に集結した。

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