エルフの復讐
森深いエルフの里、静かな夜に突然火の手が上がった。武装したヒューマンの襲撃だった。里長夫婦と、長女一菜は燃え上がる屋敷から逃げる事は出来ず、長男十良は剣を取って闘うが、敢え無く戦死。妹弟達は何とか逃げたが、末息子次男の億良だけが保護され3人の娘達は行方不明だった。
「4人で逃げて、億良はヒューマンの矢に倒れた筈だが?」
「いえ、あの矢は我々の協力者で、襲撃して来た『シルク』と言う闇ギルドにバレ無いよう、殺した様に見せ掛けて保護してくれたんです。」
「その協力者というのは今は?」
「億良様を運んでくれた方は王都に帰りました、他の方々は百菜様達を追って行ったそうですが、翌日遺体で発見されました。」
百菜は、生島と出会った時を思い出し、今聞いた事実との齟齬を頭の中で確認した。千菜と万菜は襲撃者の毒で殺された筈、同じ人達に襲われた億良は死亡を装っただけで今実際に生きている。2人は本当に毒で死んだのだろうか?悩んだ末確認する事にした。
「大婆様は如何されている?」
「お元気ですよ、毎日御祈りを捧げで頂いてます。」
「では、私の夫を認めて貰い、正式に夫婦と成りましょう。生島殿、よろしいですね?」
生島は妹達を殺した事がバレ無いか心配だったが、結婚するつもりなら、そんな心配は無さそうと、大婆に会いに行った。
百菜達は祭壇に祈る大婆の後ろに並んで、一緒に祈る。生島は取り敢えず並んで座っていた。
百菜は念話で、
『大婆様、百菜が戻りました。』
『まあ、おかえりなさい。良く生きて戻られましたなぁ。』
『早速ですが、お願いです。私と一緒に来た鬼人が、千菜と万菜を殺した犯人かも知れないのです、調べて頂けますか?』
『ああ、勿論だよ。』
祈りが終わって、大婆が振り向いた。
「大婆様、百菜が戻りました。」
「まあ、おかえりなさい。良く生きて戻られましたなぁ。」
「実はこの方に助けて頂きました。夫にしたいので祝福を与えて頂けないでしょうか?」
「それは、それは、おめでたい。そなた、名前は?」
「生島デス。」
「では、こちらに。」
大婆は生島を正面に座らせ、額に手を翳して呪文を唱えた。
『百菜様、この男、スキル強奪と言うスキルを持っています。他人のスキルを奪って自身で使える様になるのですが、奪われた者は命も奪われてしまいます。蔦操作は千菜様から、根操作は万菜様から奪ったスキルです。百菜様が思った通り、お二人を殺めたのはこの鬼人で間違いありません。』
『有難うございます、スキルを消して下さい。』
『それが、スキル強奪だけ消えないんです。』
『解りました、挙式の準備をして隙を見て仇を討ちます。』
「生島殿、花嫁は里長の家から祭壇に来るものなので、今夜は億良様の屋敷にお帰り頂きます。生島殿はお客様用の庵を用意させますので、今夜はそちらでお寛ぎ下され。エルフの結界の中ゆえ魔法等ではご不便を掛けるが、一晩だけご勘弁頂きたい。」
広くは無いが清潔なツリーハウスに案内され、食事も運ばれて来た。
生島は念のため毒を疑って鑑定して見たが、思う様に発動しない。エルフの結界のせいだろうと気にせずに居た。
ご馳走と酒でご機嫌で眠りについた生島を、
「起きて下さい、逃げますよ!」
百菜が真夜中に忍び込んだ。
「な、何があったんだ?」
百菜は大婆が書いたシナリオ通りにコッソリと話した。
「姉の一菜が、隣の集落の里長の跡取りに輿入れする事が決まっていたんです、先の襲撃で姉は命を落としました。他の姉妹は行方不明だったので、縁談はご破算になったのですが、私が生きていることが解ったので、姉の代わりに私が嫁ぐのが、里の掟なのです。」
妹の仇の為の、渾身の演技はしっかりと生島の心を掴んだ。
「料理に痺れ薬が入っていました、朝になったら動けなくなります、この解毒剤を飲んで下さい。」
すっかり信用した生島は臭くて不味い薬をイッキ飲み。因みに、毒も嘘、解毒剤はゴミ捨て場に溜まっていた水を瓶に詰めたモノだった。




