鬼人の商売
街道に辿り着いた生島は、弁当を一つ開けてランチタイム。『元気でね!』と幼い文字の手紙が入っていたが、文字は読めないのでただの紙くず。空になった弁当箱と一緒に藪に捨てた。
一息ついて自分を鑑定して見る。母娘から奪ったスキルは、鑑定C、捜索C、調剤A、生活魔法だった。生活魔法は既に持っていてFからBに上がった。レベルも40、人を殺しても経験値になるための上昇だろう。
カヒサーに向かって歩こうと立ち上がったが、何かの気配を感じた。鑑定に意識を集中すると、馬車が近付いているように感じた。
少し待ってヒッチハイク。あっさりとゲット出来た。
「治癒師様のお役に立てれば、俺も誰かを助けた気分になれますからね!」
森の家で適当に選んで着たのか治癒師の衣装の様で、そのまま勘違いさせておいた。治癒師なら乗せても安心と思ったのかもしれない。
馬車は行商人で内陸部の農産物を沿岸部で売り、海産物を内陸部で売っているそうだ、今はリュシバーで水揚げされたカニを王都迄運ぶ途中。鑑定するとレベル19で馬使役のスキルを所持。馬車の扱いは出来なかったがこのスキルがあればと、強奪して見る。倒れた商人に代わって手綱をとると、何の不具合も無く扱う事が出来た。
商人は身ぐるみ剥がして藪に捨て、その服で商人を装った。
カヒサーに到着、関所は商業ギルドのバッジでフリーパス。魚屋にカニを持ち込んだが、盗品と疑われ、何とか誤魔化して退散。先に剣を売り捌こうと、古物商に行った。
こちらでも盗品疑惑で買取拒否された。治安の悪そうな界隈の古物商を訪れた。如何にも胡散臭い店の思い切り胡散臭い老婆が
「金貨16枚なら買取るよ。」
ここに来る前の数店で2〜300枚で売っていた剣より数段立派な感じだったので、期待の価格には程遠いが、仕方が無い。
「アア、ソレデ良イ。アト、カニ買ッテクレルトコロ知ランカ?」
老婆はメモを書いて、
「ココ解るかい?ノワールって料理屋だ。」
生島が頷くと、
「4番通りの灰色の姉さんに聞いて来たって言うんだよ。」
と金貨15枚を生島に渡す、
「15シカ無イゾ」
「情報料さ、サッサとお行き!カニが腐って売れなくなるよ。」
読めない書類にサインさせられ、追い出される様に店を出た。
ノワールでも、思うような金額にならなかったが、相場も解らないし、原価はゼロなのでサッサと売り払った。因みに相場は1杯銀貨5〜8程度で1000杯あったが、鮮度が悪いと値切られ、総額で金貨5枚。百分の一で買い叩かれていた。
金貨20枚を手に入れた生島は、贅沢に飲み食いして、娼館で一夜を楽しんだ。
その頃、自称灰色の姉さんの古物店には自警団が呼ばれていた。
「身なりは行商人だが、商人らしさが一欠片も無い鬼人だったよ、盗品に間違い無いさ、コレが買取りの証文さ。」
宝物の様な剣と、金貨160枚で買い取った証文を渡した。
自警団はノワールでも、
「ありゃ、行商人を襲って馬車ごとブン盗ったんだろう、王都迄運べるピンピンした奴を活きが悪いって言ったら、相場の十分の一で置いてったぜ!」
背格好や馬車の特徴等を聞き込んで、自警団と冒険者ギルドに通達、剣が庶民の持ち物とは思えない為、騎士団にも報告した。
翌朝、呑気に朝寝坊して、娼館で出前を取って遅い朝食を摂っていた生島だったが、娼館を取り囲んだ騎士達の気配を察知して、自分がターゲットだとピンと来た。
裏口から出て4、5軒の軒下を通り、離れた表通りに出た。騎士団の人垣は突破出来たので、慌てる素振りは見せないようそのまま歩き続けた。財布にしている革袋以外は宿屋に置いて来てしまったので、ツノを隠す帽子と、チョット羽織る上着を買って街を出た。




