身請け
「お客様、私は麻衣と申します。よろしくお願いします、お客様の事はなんてお呼び致しましょう?」
「じゃあ、ミンシルで。」
「かしこまりました、ミンシル様。お湯の用意が出来ております、お手伝いしますね。」
ミンシルの服を脱がし始めた。
「いや、自分で脱ぐし!」
ミンシルが脱ぐとそれを受けとってカゴに丁寧に入れる。トランクスをカゴに入れると、着ているうちに入らない様な透け透けを脱ぐ、
「あっ!なんで?」
止めたつもりが、
「失礼致しました、ミンシル様が脱がせるのがお好みでしたか?」
脱ぎかけを戻しミンシルの胸に寄り添った。
「風呂は独りで大丈夫だから脱がなくて良いよ、じゃっ!」
と、浴室に飛び込んだが、直ぐに全裸の麻衣が後を追おう。
「お背中流しますね。」
麻衣はミンシルの後ろに立って、渾身の魔力を込めた。
「じゃあ、お願いしようかな?」
「えっ?」
麻衣は焦っていた。魔法で脳を操作し、朝まで爆睡させその間、欲求に任せるがままに楽しみ尽くした記憶を植え付けるつもりでいたが、全く効果が無かった。精神力が強くて効きづらい場合、動揺させるのが次の一手。背中に張り付いて、前に手を回す。固くなったモノを握って心拍数が爆上がりしたのを確かめ再度魔力を込めた。またも反応しないと、麻衣は計画を変更した。
「ミンシル様、私、実は・・・」
魔法で接待を誤魔化していた事を告白、ミンシルにもそうしようとした事を詫びた。風呂を済ませてベッドへ。ミンシルを寝かせ、布団を掛けると、
「リラックスして下さい、ハイ!今度は上手く出来ました。今はミンシル様の夢の中です、楽しんで下さいね!」
とベッドに滑り込むと、ミンシルに抱き付いた。
ミンシルは由貴の記憶もあり、売春には抵抗があったが、夢の中ならばと、麻衣に誘われるがままに重なって揺れ続けた。
翌朝、麻衣はまた、一つの嘘を告白。
「私の魔力では、ミンシル様に効き目が無いようです。昨夜、夢の中と申し上げましたが嘘でございます。」
「じ、じゃあ、現実で君を抱いたの?」
「はい、有難うございました。」
「でも、どうして?散々好き放題にさせて貰って言い辛いんだけどさ、そういうのが嫌で魔法で誤魔化してたんだよね?」
「勿論、カラダを売るなんてしたくありません。ただ、私の魔力が及ばない程の強い殿方に抱かれたいと常々思っておりました。騙してしまい申し訳ございません。それから・・・」
麻衣は虚空からアイテムバッグを出すと、大量の金貨と、洋服やアクセサリー等、如何にも高級な品々をベッドに並べた客から貰ったお小遣いや貢物だろう。
「これを売れば、身請け金に充分な額になる筈です、これで私を連れて行って頂けませんでしょうか?」
ミンシルは了承し、アイテムバッグを受け取って部屋を出た。ロビーには寝不足だがスッキリした表情の3人が待っていて、ギルドのある下町に戻った。
ミンシルは麻衣のお宝を換金、洋服は高級品でも二束三文なので手放さず、アクセサリー類を売却、元々の金貨も含め1800枚を超え、ミンシルの手持ちも合わせると二千枚を超えていた。遊女の身請けの相場の倍なので、充分に足りるだろう。
夕方、ミンシルは昨日の店に行って、黒服のオジサンに麻衣の身請けを申し入れた。
「申し訳ございません、あの娘は幾ら積まれても手放す気はございません。他の娘では如何でしょう?」
一応想定内の反応だった。
「麻衣さんの術ってご存知ですか?」
「はて?」
ミンシルは記憶の操作で誤魔化していることを告げたが信じられない、
「では、試してみては如何ですか?」
黒服が麻衣を呼び出すと、
「ミンシル様の仰る通りですよ、では。」
サッと黒服に魔法を掛けた。
爆睡する黒服を部屋に運び、直ぐに術を解いた。
「あ?え?ふ、服を着ていますね。本当だったんですね?」
「ええ、身請けさせて頂ければ他言致しませんし、お客様達の記憶も今のままにしておきますよ。」
「お客様達の記憶?まさか、騙されていた事を?」
「きっと相当な額の賠償になるでしょうね。」
麻衣は再度魔力を込めた。今度は借金取りに追い立てられる夢を見せている。15分程で解術、
「解った、相場の千枚で手を打とう。直ぐに連れて行ってくれ。」
「今夜の客はどうするんだ?」
「また罪を重ねる訳にはいかないからな、急病で治療に行ってる事にして、暫くしたら死んだ事にするさ。お客様に見つからないでくれよ。」
「それなら安心して下さい!」
麻衣は、もうひとつ掛けていた術を解いた。ミンシルには掛かって居なかったので、何も変化は無いが、黒服は視覚も聴覚も誤魔化されていたので、別人に見えていた。
「今が本当の私です、ずっと違う姿に見えていたので、誰も気付かないと思いますよ。」
ニコリと笑うと、
「解ったから、もう関わらないでくれるか?」
「ハイ、喜んで!」
ミンシルは黒服と身請けの手続きに事務室に行き、麻衣はアイテムバッグの中の貢物の中から、故人から贈られた物を選んで着替えた。




