怨禍の焔
部屋を結界で現場保全し、魔力の残滓を追う。宿場町の外れのキャンプスペースで消えてしまったが、そこは結界が張ってあった。
「こんな結界、術式を読み解くまでも無いね。」
結界を壁に感じるように手の平を当てると、一気に魔力を吸い取った。
結界は消え、結界の術者は魔力枯渇で倒れ、8人が恐怖に震えていた。そこには乗用の馬車が1台、鉄格子の馬車が3台、魔物を運んだ物だろう。
ゆいは意識のある者を結界で拘束、脳を鑑定しながら尋問を始めた。
「仲間はコレで全員?」
全員黙秘だが、鑑定で透けて見える、後2人居るようだ。
「後の2人はどうしたの?」
「あぁ、ソレなら俺達が拘束してある、連れて来るか?」
「うん、お願い。」
火災現場にトムとボルが向かうと、ブイヤに、
「念のため結界で隠して、ココ全体。」
トム達が戻るまでに調べた成果は、11人組の盗賊で御頭と呼ばれるボスには懸賞が掛かっていた。ミンシルを襲った3人とその中の実行犯の毒使いも特定した。
ミンシルの血を吸った糸を盗賊達に結ぶ。ボスと実行犯には肘、襲撃現場にいた2人には手首、残りには手の平に結んだ。
「コレ、怨禍の焔って拷問の術なの。ちょっと付き合ってね。」
淡々と作業を済ませて呪文を唱えた。
「グワッ!%%%#$&*#$!!!」
悲鳴、唸り、声にならない音が響いた。
「この火の燃料って貴方達の寿命だから、さっさと質問に答えないと、老衰で死んじゃいますから急いで答えて下さいね。」
余罪や盗品の処理ルート、関連する組織、今回狙った動機等を尋ねる。
盗賊達は糸が結ばれた所が焼き切れ、そこから導火線が短くなるように腕が燃え続ける。痛みと熱さで気を失いそうになるが、それすら赦されなく、苦痛から逃れられない。
犯罪組織の全容が浮き彫りになり、バッグにいる貴族や商人も明らかになった。盗賊達は自白した犯罪でボスと実行犯と後数人は極刑、軽い者でも暫くは塀の中だろう。
今回、スープがターゲットになったのは、乗り合い馬車のターミナルの切符売り場のオバちゃんが、鑑定のスキルが有り、低ランクパーティーに、売り物になる美少女が居るとの情報が流出していた為だった。
盗賊達を自警団に引き渡し、一旦王都に戻って、切符売りのオバちゃんに挨拶する事にした。
翌日、昼過ぎまで待って王都行きの馬車に乗る。王都に着いて切符売り場へ。
3列並んでいたが、勿論昨日のオバちゃんの列に並ぶ。
「カヒサーまで5枚。」
オバちゃんは、ゆいの顔を覚えていた様で震えながら切符を渡した。
「昨日は6枚だったのに、1人殺されたの、それでは。あ、私達、そこの宿に泊まってますから、何か有りましたらいらして下さいね。」
と、中指の先に血の染みた糸を結んで売り場を後にした。
夕食を済ませて、宿で待機していると、指先を燃やしながら、オバちゃんがやって来た。
「ソレ、消えないでしょ?」
「@#$**!」
「付いてきて。」
自警団の事務所に到着した頃には、手の平の半分位が燃えていた。
盗賊にターゲット情報を流していた事を自白させ、伝達や報酬の受け取るルートも吐かせた。盗賊が吐いた内容と合致するので有罪が確定した。小銭稼ぎだったが、結構な刑期になるだろう。
「質問が終わったから、術を解きますね。」
手首まで燃えていたが、ゆいがフッと息をかけるとロウソクの炎の様に簡単に消えてしまった。
「怨禍の焔って言う術で、術に使った血の人しか解呪出来ないの。その娘、貴女のせいで殺されちゃったから、永久にそのままですからね。」
と告げて、精神を保つ術を解くと、蓄積された苦痛で気を失った。
後日確認すると、そのまま精神に支障をきたし、正気に戻ることは無く死んでしまったの事。
翌日、再び乗り合い馬車でラビーカーへ。ミンシルの遺体を引き取り、盗賊討伐の報酬を受け取る。鉄格子の馬車は自警団に寄付し、受け取った乗用で旅を続けることにした。




