18 精霊
私にとって精霊は自然現象のようなものであって、個別に認識しようという発想はなかった。
例えば、水や森の一部だけ着目しても、それが水や森であるのと同じようなものだ。
火の低級精霊はトーラで、どの子もトーラと呼ばれていて区別はない。
精霊を召喚するときに、前回召喚した精霊と同じかなんて考えたことがなかった。
「いつでも同じ精霊をいつでも呼び出せるってすごいですよね。私も絵本のように友達みたいな精霊がいつでも隣にいたらなって子供の頃に憧れていました」キィちゃんが目を輝かせる。
魔法使いにとって精霊の召喚は基礎だけど、その精霊の召喚が難しいのだ。
精霊は気まぐれで、気分によっては召喚に応じてくれないこともある。
まして、同じ精霊を召喚する呪文なんて聞いたことがない。
「私も思ってたわ。精霊と毎日一緒に遊べたら楽しいだろうなって。そして大人になるにつれて精霊はそんな生易しい存在じゃないと知ることになるのよね」サーヤ先輩がため息を吐く。
「思うようにコントロールするなんて到底無理ですもんね」私も同意する。
「絵本の魔法使いみたいに精霊を呼んで、一緒に遊ぶってすごく難しいですよね。相当優秀な魔法使い、それこそ精霊導師様に近い存在じゃないとそんなことできないって、大きくなってから知りました」
「じゃあ、この絵本の悪い魔法使いって、うっかり街を燃やしちゃってますけど、優秀な魔法使いってことですよね」
「まあ、所詮、絵本は絵本だからね」
精霊導師とは、全魔法使いの最高位に位置する魔法使いを指す。
一般的なキャリアアップとしては、精霊使いの中で最も優れた人物が精霊導師の称号を得ることが多い。
精霊使いとは、精霊を使って魔獣を討伐したり、他国の侵略を防衛したり、精霊を軍事利用する魔法使いを指す。
精霊使いのうち、全ての精霊を自由に召喚し、意のまま操ることができる者に精霊導師の称号が与えられるが、精霊導師の称号を得たものは歴史上、数人しかいない。
先代の精霊導師様はおよそ千年ほど前に存在していたらしいが、現在、それに匹敵する力を持つものはおらず、その称号は空位となっている。
「そもそもさ、精霊って意思があるんですかね」私はふと思いついた疑問を口にする。
「どういうこと?」
「精霊も一緒に遊びたいとか思ったりするのかなってことですよね」キィちゃんが私の疑問を補足する。
「そうそう。精霊側も前回と同じ人間だなとか記憶してたり、この人とは仲良くなりたいとか思ったりするのかなって」
「さあ、どうなのかしらね。聞いたことはないけど」サーヤ先輩も首を捻る。
街で見かける精霊は楽しそうな場所やきれいな場所に集まっていることが多い。
例えば水の綺麗な川岸で、水遊びする子供たちの横に精霊もふわふわ浮いていることがある。だからといって精霊が一緒に水遊びするわけではない。
あくまで楽しそうなエネルギーに惹かれているだけで、彼らが意思をもって集まってきているのかは疑問である。
「すみません。面白そうなお話の途中で失礼いたします」
廊下の方から声がかけられた。あんまりいないけれど、久しぶりに現れた入部希望の一年生かと思い、私たちは廊下の方を振り向く。
教室の扉は開いていなくて、おかしいなと思ったけど、すぐに声の主は分かった。
割れた窓枠から覗いていたのは、ピットちゃん人形だった。
7月から自宅のMacの調子が悪くてログインできず、あんまり作業が進んでないです。つながるサイトとつながらないサイトがあるんですよね。なんなんだろう。




