17 ボルケと悪い魔法使い
「ボルケって言うと、あれよね。『ボルケと悪い魔法使い』」
ピットちゃんに遭遇したレオくんの話を一通り聞いたサーヤ先輩は、開口一番にそう言った。
放課後の部室で私たち4人は机を向かい合わせにして、昼間の出来事を話していた。
ピットちゃんが蹴り破った窓は、まだ割れたままで修繕されていない。破片は皆で片付けて、窓枠だけが残った状態だ。
私は首を傾げる。ボルケと魔法使いというフレーズは聞き覚えがない。
レオくんも知らないようで、同じように首を傾げている。
「私もそう思ってました!」キィちゃんが明るく返事をする。
「あれ、二人は知らないの? 昔からある子供向けの絵本よ。古いけど有名な話だと思うわ」と言って、サーヤ先輩は内容を説明してくれた。
むかし、むかし、あるところに魔法使いがいました。
魔法使いにはボルケという仲の良い火の精霊がいました。
魔法使いとボルケはいつも一緒に遊んだり、魔法を使ったりしていました。
ある日、魔法使いはちょっとした悪戯を思いつきます。
その日は村のお祭りの日でした。
村のみんなはお祭りの準備に大忙しです。
「お祭りのランプが一斉に灯ったら、みんなびっくりすると思わないかい?」
今日はお祭りなので、村にはたくさんのランプが吊り下げられていました。
木の下、屋台の下、舞台の上。
魔法使いはボルケに命じます。
「ボルケ、ランプに明かりを灯すんだ」
ボルケは言われたとおりにランプに火をつけます。
ぱっと町中が明るくなって、皆がわあっと喜びました。
しかし、まだ準備が終わってなかったランプがあったのです。
火をつけたランプの一つが燃え上がり、それが近くの屋台に燃え移りました。
その火が隣の屋台に燃え移り、あっと言う間に街は炎に包まれました。
「ごめんなさい、そんなつもりではなかったんだ」
魔法使いは謝りましたが、街はもう元には戻りません。
魔法使いは、悪い魔法使いとして処刑されてしまいましたとさ。
「こんな感じね。要は魔法を使うときはよく周りを見て気をつけて使いましょうという教えを説いた童話よ」
「おはなしの中に出てくるボルケってなんですか。そんな名前の火の精霊はいなかったと思うんですが」
私は先日のサーヤ先輩の講義内容を思い出して質問する。火の精霊は、トーラとサラマンダー、あとは火の精霊王でボルケという名前ではなかったはずだ。
「仲の良い火の精霊に愛称をつけていたんじゃないかしら」
「精霊に愛称をつける!?」
「要するにあだ名ね」
「絵本では、火の精霊の絵が描いてあって、その子をボルケって呼んで可愛がってる絵が描かれていましたよ」キィちゃんも話に加わる。
「そうね、精霊の個体にあだ名をつけるって現代ではなかなかない感覚だけど、昔はもっと精霊と人間との距離が近かった時代があったのかもしれないわね」




