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16 レオくんと水色のピアス

 レオくんは歩きながら話を続けた。


 男子トイレに入ると、人形の小さい手がトイレの個室から手招きしていたらしい。

 近づいてみると三番目の個室にピットちゃんがいて、足を掴まれて引きずられるように個室に入った。


「ピットちゃんは女子トイレに出没するものだと思ってました」

「私が女性のお手洗いなんか覗くわけないでしょう」


 レオくんが素直な感想を述べると、ピットちゃんは怒りながらそう返事をしたらしい。


「あの、なにか御用でしょうか」

「お聞ききしたいことがあります」

「僕でわかる範囲なら構いませんけど」

「ボルケを知りませんか」


 ボルケ?と聞き返そうとすると、トイレのドアが開いて生徒が入ってきた。

 チッと舌打ちするとピットちゃんは機敏な動作でトイレの壁を蹴り上げ、あっという間に個室を駆け上って天井から消えてしまったらしい。


「ボルケってなんだろうね」

「僕も知らないな」


 二人で悩んでみたけど、考えたところで知らないものは解決するわけでもない。

 放課後に部室でサーヤ先輩とキィちゃんに聞いてみるという結論で、私たちは解散することにした。


「じゃあ、教室に帰るね」


 ばいばい、と手を振って背を向けると、レオくんにぐっと手首を掴まれた。


「?」

「あのさ、これ」


 そう言って、レオくんは手を差し出した。なにか小さいものが手の平にのっている。きらきらと光を集める水色の宝石のようだ。

 受け取ってみると、それは小粒の石がついたピアスだった。


「わー、綺麗! これどうしたの」

「この前のアイテムショップで買ったんだ。スーちゃんに似合うと思って」

「ありがとう! 付けてみてもいい?」


 レオくんが頷いたのを見て、私はもらったピアスを早速つけてみた。

 ピアスは軽くて、少しひんやりとした感じがした。


「どう?」

「似合ってるよ。ちょっと待ってね」


 レオくんは私に手を伸ばすと、私の銀色の髪を後ろに流して耳を出した。私の両方の耳を出してから、ピアスの石に触れて「水の精霊よ 我との契約に従い 祝福を賜らん」とそっと耳元でささやいた。


「水魔法の加護を付与しといたよ」

「ありがとう。レオくんは魔法が上手だね」

「それほどでもないよ。じゃあまた、部活でね」


 レオくんは手を振って、教室に戻って行った。

 私も手を振り返して、自分の教室に戻る。

 自分の席に戻ると、クラスの女子生徒が何人か近づいてきて私に話しかけた。


「ねえねえ、王子とどういう関係なの」

「ただの部活の友達だよ。部活のことで話があっただけだよ」

「王子って彼女とかいるの」

「聞いたことないけど、たぶんいないんじゃないかな」

「じゃあ私、告ってみよっかな」


 きゃはは、と明るく笑いながら、クラスの女の子たちが恋バナに花を咲かせている。

 レオくんと私は本当は幼馴染なんだけど、そういうのは喋らないほうがいいと経験則から知っている。

 恋の相談とか協力とかそういう青春っぽいことは面倒なので全力で回避して、私は真面目に勉強する学生生活を送りたいのだ。

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